ここでは東大数理の修士課程の院試の2023B09の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2023B09
閉区間上の実数値関数全体の為すBanach空間をとる(ただし上の測度としてLebesgue測度を考えている)。
(1) 定義式
は上の連続関数を定めていることを示せ。
(2) 線型作用素の作用素ノルムを求めなさい。
(3) が等式
を満たすとき、は定数関数であることを示せ。
- まずは上で可積分であり、は関数であるから、はwell-definedな関数である。次にの本質的上界をとする。
である。上記の右辺はで右辺に収束するから、 及びを任意に取ったとき、を適切に選ぶことで、任意のについて
を満たすようにできる。以上からは連続写像である。 - まずの本質的上界をとする。を任意に取ったとき、
である。そしてこれは実際のときに等号が成り立つ。以上からである。 - のときを考える。まず不等式
が成り立っている。この不等式の等号はがほとんど至る所をとるとき成り立つから、は定数関数である。更につめの不等号の等号はがほとんど至る所またはほとんど至る所の場合のみ成り立つ。以上からは定数関数である。