計算が大変なことで有名な3次元極座標のラプラシアンを計算します.
, , を直接計算すると膨大な計算量になるので, 工夫して計算したいと思います.
復習: 2次元極座標のラプラシアン
まずは, 2次元極座標変換を2回繰り返す方法を説明します. そのために, 2次元極座標のラプラシアンを復習します. もうこの時点でしんどいです.
偏微分の連鎖律を用いて, , を計算します. 連鎖律より,
なので, まず, , , を計算します.
より, . 同様に, .
続いて, なので, , .
よって,
展開して整理すると,
2次元極座標変換を2回適用する方法
極座標変換
を, 変数 (, ) を導入して, 2つの座標変換
および
に分解することにより, 2次元の極座標変換に帰着させることができます.
と変数変換することで,
続いて,
と変数変換すると,
よって,
外微分とホッジ作用素を組み合わせる方法
を向き付けられた次元リーマン多様体, を体積要素とします. 馴染みがなければ, と考えても大丈夫です. に対して, の次微分形式の空間をと書きます. はの余接ベクトル束, は大域切断を取る操作を表します. このとき, 2つの写像
が定義でき, それぞれ外微分, ホッジ*(スター)作用素といいます. この節では, これらの厳密な定義には立ち入らず, 局所座標をとってこれらを具体的に計算していきます.
をの点における座標系とします. の次微分形式は, と, の級関数により, の形の元の和に書けます. 添字が煩雑なので, を多重指数として, と書きます. よって, 次微分形式は, の形に書けます.
ウェッジ積は, 2つの項の入れ替えで倍になります. つまり, , に対して, となります. たとえば, なら, です. 一般に置換
に対して, となります. とくに, の中に同じ添字が2つ以上あれば, です.
外微分は, に対してを対応させる写像を, 線形に拡張して得られます. ここで, はの全微分です. たとえば, で, とすると, となります.
上記の外微分や, 全微分の表示は座標系の取り方に依存していますが, 別の座標系を取っても, , となります.
ホッジ作用素は次のように得られます. の各点の余接空間の正規直交基底で, においてとなっているものを取ります. 線形写像を以下のように定めます. 置換
に対して,
このから, が定まります.
たとえば, とし, 直交座標系を取ると, 1次微分形式は各点の余接空間において正規直交基底になります. とすると,
となります.
ベクトル解析の演算, , は, とを用いて表せます. ベクトル場 ()を次微分形式と同一視します. すると, およびに対して,
となります. よって, ラプラシアンは,
と表せます.
3次元極座標
に関して, 次微分形式
, ,
はの各点の余接空間において正規直交基底になっており, です. したがって,
.
以上を用いて, ラプラシアンを計算します.
計量テンソルを用いる方法
をリーマン多様体とします. を接ベクトル束のフレームとします. つまり, の各点において, は接空間の基底になっています. におけるラプラシアンは
と書けます. ここでは, を計量テンソルの基底に関する表現行列とすると, の成分です.
とします. 3次元極座標系
において, に対するの表現行列は,
よって,
です. ここから直ちにラプラシアンを計算できます.