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3次元極座標のラプラシアンの計算

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計算が大変なことで有名な3次元極座標のラプラシアンを計算します.

3次元極座標のラプラシアン

x=r sinθ cosφy=r sinθ sinφz=r cosφ

とするとき,

2x2+2y2+2z2=1r2r(r2r)+1r2 sinθθ(sinθθ)+1(r sinθ)22φ2.

念のため

r(r2r)などは, ライプニッツ則より, r2rr+r22r2=2rr+r22r2を意味します.

2x2, 2y2, 2z2を直接計算すると膨大な計算量になるので, 工夫して計算したいと思います.

復習: 2次元極座標のラプラシアン

まずは, 2次元極座標変換を2回繰り返す方法を説明します. そのために, 2次元極座標のラプラシアンを復習します. もうこの時点でしんどいです.

2次元極座標のラプラシアン

x=r cosθy=r sinθ

とすると,

2x2+2y2=1rr(rr)+1r22θ2=2r2+1rr+1r22θ2.

偏微分の連鎖律を用いて, 2x2, 2y2を計算します. 連鎖律より,

x=rxr+θxθy=ryr+θyθ

なので, まずrx, θx, ry, θyを計算します.

r=x2+y2より, rx=122xx2+y2=r cosθr=cosθ. 同様に, ry=sinθ.

続いて, θ=arctanyxなので, θx=y/x21+(y/x)2=yr2=sinθr, θy=1/x1+(y/x)2=xr2=cosθr.

よって,

2x2=(cosθrsinθrθ)(cosθrsinθrθ)=cos2θ 2r2cosθ sinθ r(1rθ)sinθrθ(cosθ r)+sinθr2θ(sinθ θ).

2y2=(sinθr+cosθrθ)(sinθr+cosθrθ)=sin2θ 2r2+cosθ sinθr(1rθ)+cosθrθ(sinθ r)+cosθr2θ(cosθ θ).

展開して整理すると,

2x2+2y2=2r2+1rr+1r22θ2=1rr(rr)+1r22θ2. 

2次元極座標変換を2回適用する方法

極座標変換

x=r sinθ cosφy=r sinθ sinφz=r cosθ

を, 変数ρ=x2+y2 (, r=ρ2+z2) を導入して, 2つの座標変換

x=ρ cosφy=ρ sinφz=z

および

ρ=r sinθz=r cosθ

に分解することにより, 2次元の極座標変換に帰着させることができます.

x=ρ cosφy=ρ sinφz=z

と変数変換することで,

2x2+2y2=2ρ2+1ρρ+1ρ22φ2.

続いて,

ρ=r sinθz=r cosθ

と変数変換すると,

ρ=sinθ r+cosθrθ,
2ρ2+2z2=2r2+1rr+1r22θ2.

よって,

2x2+2y2+2z2=1ρρ+1ρ22φ2+2ρ2+2z2=1ρρ+1ρ22φ2+2r2+1rr+1r22θ2=1r sinθ(sinθ r+cosθrθ)+1(r sinθ)22φ2+2r2+1rr+1r22θ2=(2rr+2r2)+1r2 sinθ(cosθθ+sinθ2θ2)+1(r2 sinθ)22φ2=1r2r(r2 r)+1r2 sinθθ(sinθ θ)+2φ2. 

外微分とホッジ作用素を組み合わせる方法

Mを向き付けられたn次元リーマン多様体, ωを体積要素とします. 馴染みがなければ, M=Rnと考えても大丈夫です. 0pnに対して, Mp次微分形式の空間をΩp(M):=Γ(pTM)と書きます. TMMの余接ベクトル束, Γは大域切断を取る操作を表します. このとき, 2つの写像

d:Ωp(M)Ωp+1(M)

:Ωp(M)Ωnp(M)

が定義でき, それぞれ外微分, ホッジ*(スター)作用素といいます. この節では, これらの厳密な定義には立ち入らず, 局所座標をとってこれらを具体的に計算していきます.

(x1,,xn)Mの点xにおける座標系とします. Mp次微分形式は, dxi1dxipと, MC級関数fi1,,ipにより, fi1,,ip dxi1dxipの形の元の和に書けます. 添字が煩雑なので, I=(i1,,ip)を多重指数として, fi1,,ip dxi1dxip=:fI dxIと書きます. よって, p次微分形式は, |I|=pfI dxIの形に書けます.

ウェッジ積は, 2つの項の入れ替えで(1)倍になります. つまり, I=(i1,,ik,,il,,ip), I=(i1,,il,,ik,,ip)に対して, dxI=dxIとなります. たとえば, M=R2なら, dxdy=dydxです. 一般に置換
σ=(1pσ(1)σ(p))
に対して, dxiσ(1)dxiσ(p)=sgn(σ) dxi1dxipとなります. とくに, i1,ipの中に同じ添字が2つ以上あれば, dxI=0 (I={i1,,ip})です.

外微分d:Ωp(M)Ωp+1(M)は, fI dxIに対してdfIdxIを対応させる写像を, 線形に拡張して得られます. ここで, dffの全微分df=fx1dx1++fxndxnです. たとえば, M=R2で, ω=fx dx+fy dyとすると, dω=(fyxfxy)dxdyとなります.

上記の外微分dや, 全微分dfの表示は座標系(x1,,xn)の取り方に依存していますが, 別の座標系(y1,,yn)を取っても, d(fI dyI)=dfIdyI, dfI=fIy1dy1++fIyndynとなります.

ホッジ作用素:Ωp(M)Ωnp(M)は次のように得られます. Mの各点xの余接空間TxMの正規直交基底(e1,,en)で, xにおいてe1en=ωとなっているものを取ります. 線形写像:pTxMnpTxMを以下のように定めます. 置換

σ=(1nσ(1)σ(n))

に対して,

(eσ(1)eσ(p))=sgn(σ) eσ(p+1)eσ(n).

この:pTxMnpTxMから, :Ωp(M)Ωnp(M)が定まります.

たとえば, M=R3とし, 直交座標系(x,y,z)を取ると, 1次微分形式dx,dy,dzΩ1(M)は各点の余接空間において正規直交基底になります. ω=dxdydzとすると,

1=dxdydz
ex=dydz
ey=dzdx
ez=dxdy
(dxdy)=dz
(dydz)=dx
(dzdx)=dy
(dxdydz)=1

となります.

ベクトル解析の演算grad, rot, divは, dを用いて表せます. ベクトル場F:MR3 (F=(Fx,Fy,Fz))を1次微分形式Fx dx+Fy dy+Fz dzと同一視します. すると, fC(M)およびF=(Fx,Fy,Fz)C(M,R3)に対して,

gradf=df=fxdx+fydy+fzdzrotF=dF=(FzyFyz)dx+(FxzFzx)dy+(FyxFxy)dzdivF=d=Fxx+Fyy+Fzz

となります. よって, ラプラシアンは,

=div grad=dd

と表せます.

3次元極座標

x=r sinθ cosφy=r sinθ sinφz=r cosφ

に関して, 1次微分形式

dr, r dθ, rsinθ dφ

R3の各点の余接空間において正規直交基底になっており, ω=dr(r dθ)(r sinθ dφ)です. したがって,

1=ω
dr=r2sinθ dθdφ
dθ=sinθ dφdr
dφ=1sinθdrdθ
(drdθ)=sinθ dφ
(dθdφ)=1r2sinθdr
(dφdr)=1sinθdθ
(drdθdφ)=1r2sinθ.

以上を用いて, ラプラシアンを計算します.

=dd=d(rdr+θdθ+φdφ)=d(r2sinθrdθdφ+sinθθdφdr+1sinθφdrdθ)={sinθr(r2r)+θ(sinθθ)+1sinθ2φ2}drdθdφ=1r2r(r2r)+1r2 sinθθ(sinθθ)+1(r sinθ)22φ2. 

計量テンソルを用いる方法

(M,g)をリーマン多様体とします. (0,,n)を接ベクトル束のフレームとします. つまり, Mの各点において, (0,,n)は接空間の基底になっています. Mにおけるラプラシアン

=i,j1detgi(detg gijj)

と書けます. ここでgijは, Gを計量テンソルgの基底(0,,n)に関する表現行列とすると, G1(i,j)成分です.

M=R3とします. 3次元極座標系

x=r sinθ cosφy=r sinθ sinφz=r cosφ

において, (1,2,3)=(r,θ,φ)に対するgの表現行列は,

G=(1000r2000r2sin2θ).

よって,

G1=(10001r20001r2sin2θ)

です. ここから直ちにラプラシアンを計算できます.

=i,j1detgi(detg gijj)=1r2sinθ{r(r2sinθr)+θ(sinθθ)+φ(1sinθφ)}=1r2r(r2r)+1r2 sinθθ(sinθθ)+1(r sinθ)22φ2. 

投稿日:20日前
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投稿者

名古屋の大学院生です。整数論を研究したいです。

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  1. 復習: 2次元極座標のラプラシアン
  2. 2次元極座標変換を2回適用する方法
  3. 外微分とホッジ作用素を組み合わせる方法
  4. 計量テンソルを用いる方法