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Furstenberg 位相と素数の無限性

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Furstenbergはその学士論文において素数の無限性を位相空間を用いて証明した。その証明方法と導入した位相の性質を見ていく。

$a\in\mathbb{Z},\,b\in\mathbb{N}$について、
\begin{equation} a+b\mathbb{Z}:=\{a+bx|x\in\mathbb{Z}\} \end{equation}
とする。このとき、
\begin{equation} \mathcal{I}=\{a+b\mathbb{Z}|a\in\mathbb{Z},\ b\in\mathbb{N}\} \end{equation}
とすると、$\mathcal{I}$
\begin{align} {}&\bigcup\mathcal{I}=\mathcal{Z}\\ {}&\forall I,\, J\in\mathcal{I},\ \forall x\in I\cap J,\ \exists K\in\mathcal{I},\ x\in K\subset I\cap J \end{align}
を満たすため、ある$\mathbb{Z}$上の位相空間の開基となっている。$\mathcal{I}$を開基とする位相をFurstenberg位相という。具体的には、
\begin{equation} U\text{がFurstenberg位相における開集合}\Leftrightarrow \forall x \in U,\ \exists I \in \mathcal{I},\ x\in I \subset U \end{equation}
である。

このFurstenbergを用いると、素数が無限にあることが容易に示せる。

素数は無限に存在する。

$\mathbb{Z}$にFurstenberg位相を入れて考える。素数全体の集合を$\mathbb{P}$とすると、
\begin{equation} \mathbb{Z}\setminus\{1,-1\}=\bigcup_{p\in\mathbb{P}}p\mathbb{Z} \end{equation}
である。ここで、$p\mathbb{Z}=\mathbb{Z}\setminus\bigcup_{i=1}^{p-1}(i+p\mathbb{Z})$より$p\mathbb{Z}$は閉集合である。よって、素数が有限個であると仮定すると$\bigcup_{p\in\mathbb{P}}p\mathbb{Z}$は閉集合であり、$\{1,-1\}$は開集合である。しかし、$1$を含み$\{1,-1\}$に含まれる$\mathcal{I}$の元$a+b\mathbb{Z}$は存在せず、$\{1,-1\}$は開集合ではなく、矛盾。よって、素数は無限個存在する。

以降はFurstenberg位相の性質を見る。

$\mathcal{I}$の元は開かつ閉である。

$\mathcal{I}$の元は定義より開であり、$p\mathbb{Z}$が閉集合であることと同様に閉であることが示せる。

$\mathbb{Z}$にFurstenberg位相を入れると、以下のことが成立する。

  1. $\mathbb{Z}$は完全不連結である。
  2. $\mathbb{Z}$は第二可算である。
  3. $\mathbb{Z}$は正則である。
  4. $\mathbb{Z}$は距離化可能である。
    \item $\mathbb{Z}$は正規である。
  1. $a,\,b$を異なる整数とし、$k$$|a-b|$より大きい整数とする。このとき、$a+k\mathbb{Z}\in\mathcal{I}$は開かつ閉であり、$a\in a+k\mathbb{Z},\ b\notin a+k\mathbb{Z}$より、$a,\,b$は同じ連結成分に属さない。よって、$\mathbb{Z}$は完全不連結である
  2. $\mathcal{I}$$\mathbb{Z}$の可算な開基であり、$\mathbb{Z}$は第二可算である。
  3. $C\subset\mathbb{Z}$を閉集合とし、$x$$C$に属さない整数とする。このとき、$\mathbb{Z}\setminus C$は開集合なのである$I\in\mathcal{I}$が存在して$x\in I\subset \mathbb{Z}\setminus C$となる。また、$I$は閉集合でもあるので$\mathbb{Z}\setminus I$は開集合で、$C$$x$は互いに素な開集合$\mathbb{Z}\setminus I$$I$によって分離される。よって、$\mathbb{Z}$は正則である。
  4. Urysohnの距離化定理より、$\mathbb{Z}$は第二可算かつ正則なので距離化可能である。
  5. $\mathbb{Z}$は距離化可能なので正規である。

実際にFurstenberg位相を導くような距離関数がどのような距離関数なのか気になるだろう。このような距離関数の構成は[1]に記されている。以下、その構成を見る。

$d:\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$を次のように定義する。$1,\,2,\,\dots,\,k$が全て$x-y$を割り切るような自然数$k$の集合を$S_{x-y}$とする。このもと
\begin{equation} d(x,y)=\inf_{k\in S_{x-y}}\frac{1}{k} \end{equation}
とする。このとき、$d$は距離関数であり、$d$を距離関数とする距離空間の位相$\mathcal{T}(d)$とFurstenberg位相$\mathcal{T}$は一致する。

まず、$\mathcal{T}(d)$における開集合は$\mathcal{T}$における開集合であることを示す。$U\in\mathcal{T}(d)$$x\in U$を任意に取る。このとき、ある$\varepsilon>0$が存在して、$d(x,y)<\varepsilon\Rightarrow y\in U$である。ここで、$\frac{1}{r}<\varepsilon$なる$r\in\mathbb{N}$をとると、任意の$k\in\mathbb{Z}$について$d(x,x+kr!)<\frac{1}{r}<\varepsilon$より$x+kr!\in U$で、$x+r!\mathbb{Z}\subset U$$U$$\mathcal{T}$における開集合。
次に、$\mathcal{T}$における開集合は$\mathcal{T}(d)$における開集合であることを示す。$V\subset\mathcal{T}$$x\in V$を任意に取る。このとき、ある$b\in\mathbb{N}$が存在し、$x+b\mathbb{Z}\subset V$である。よって、$d(x,y)<\frac{1}{b}\Rightarrow y\in V$で、$V$$\mathcal{T}(d)$における開集合である。

参考文献

Rezsö L. Lovas, István Mezö, On an exotic topology of the integers, arXiv:1008.0713

投稿日:829
更新日:829
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