0

東大院試04-A6

26
0

問題

Vn次元複素ベクトル空間,fVの可逆な線形変換とする.
(1) 2Vの線形変換gで,すべてのv,wVにたいしてg(vw)=f(v)f(w)を満たすものが,ただ一つ存在することを示せ.
(2) n3のとき,fが対角化可能であることとgが対角化可能であることが同値であることを示せ.
(3) fのジョルダン標準形が
(11000011000001100001)
であるとき,(gI)m=0となる最小の自然数mを求めよ.ただしI2Vの恒等変換を表す.

復習

外積の普遍性

φ:V22Vφ(v,w)=vwで定義する.任意の双線形交代写像Ψ:V2Wに対して,次の可換図式を可換にする線形写像fがただ一つ存在する.
V2φΨ2VfW

外積と直和

V,Wをベクトル空間とする.このとき,
2(VW)(2V)(VW)(2W)
が成り立つ. 

線形写像Ψ:2(VW)(2V)(VW)(2W)
を,
Ψ((v1+wq)(v2+w2))=(v1v2,v1w2v2w1,w1w2)で定義する.
また,線形写像
Φ:(2V)(VW)(2W)2(VW)

Φ(v1v2,vw,w1w2)=v1v2+vw+w1w2
で定義する.
そうすれば,ΨΦ=id,ΦΨ=idが計算により分かり,これにより同型が従う.
ちなみに,線形写像であることは外積や直和の普遍性を用いて示すことができる.

一般に,
n(VW)l+m=n(lV)(mW)
が成り立ちます.

解答

  1. h:V22Vh(v,w)=f(v)f(w)で定めると,これは双線形交代写像なので外積の普遍性により,g(vw)=h(v,w)=f(v)f(w)を満たす線形写像gが一意的に存在する.
  2. fが対角化可能であるとき,Vの基底{v1,v2,,vn}と複素数λiが存在して,f(vi)=λiviが成り立つ.このとき,2Vの基底として{v1v2,v1v3,,vn1vn}をとれば,g(vivj)=λiλj(vivj)となり,対角化可能であることが分かる.
     逆にfが対角化不可能だとすると,ジョルダン標準形の理論より,Vの基底{v1,v2,,vn}と固有値λ2rnが存在してf(v1)=λv1,f(v2)=v1+λv2,,f(vr)=vr1+λvr
    が成り立つ.fは可逆なのでλ0V1=v1,,vr,V2=vr+1,,vnとおくと,上の命題により,2V2(V1V2)(2V1)(V1V2)(2V2)
    が成り立つ.この同型の下,g2V1への制限を考える.
     2V1の基底{v1v2,v1v3,,vr1vr}についてのgの表現行列を考えると,これは対角成分がすべてλ2である三角行列なので固有値がλ2であることが分かる.
     r3の時,Ker(gλ2I)の次元がrC2であり得ないことは,gの表現行列の下から二行目が(00λ2λ)となっていることから従う.よって対角化不可能.
     r=2のとき,n3より,固有値λとそれに付随する固有ベクトルvがあってそれはv1,v2と一次独立である.ここでも,fが可逆であることからλ0gv1v,v2vへの制限を考える.表現行列は
    (λλλ0λλ)
    である.固有値はλλで,退化していることが分かる.よって対角化不可能.
     よってgは対角化不可能な線形変換を直和成分として持つことが分かるので,gは対角化不可能.

(3)このジョルダン標準形になるVの基底をv1,,vnとすると,gの表現行列は,先ほど考えたようになる.これは対角成分が1で,対角成分の一つ上のところに0でない成分が存在する行列である.よってgIrC2乗して初めて0となる.

投稿日:20241117
更新日:20241117
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中