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東大院試04-A6

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問題

$V$$n$次元複素ベクトル空間,$f$$V$の可逆な線形変換とする.
(1) $\bigwedge^2 V$の線形変換$g$で,すべての$v,w\in V$にたいして$g(v\wedge w)=f(v)\wedge f(w)$を満たすものが,ただ一つ存在することを示せ.
(2) $n\ge 3$のとき,$f$が対角化可能であることと$g$が対角化可能であることが同値であることを示せ.
(3) $f$のジョルダン標準形が
$$\begin{pmatrix}1&1&0&\cdots & 0 & 0\\0&1&1&\cdots&0&0\\&&\ddots&\ddots&&\\&&&\ddots&\ddots&\\0&0&0&\cdots&1&1\\0&0&0&\cdots&0&1\end{pmatrix}$$
であるとき,$(g-I)^m=0$となる最小の自然数$m$を求めよ.ただし$I$$\bigwedge^2 V$の恒等変換を表す.

復習

外積の普遍性

$\varphi:V^2\rightarrow \bigwedge^2V$$\varphi(v,w)=v\wedge w$で定義する.任意の双線形交代写像$\Psi:V^2\rightarrow W$に対して,次の可換図式を可換にする線形写像$f$がただ一つ存在する.
$$\xymatrix{ V^2\ar[r]^-{\varphi}\ar[rd]_-{\Psi}\ar@{}@<2.0ex>[rd]&\bigwedge^2V\ar@{..>}[d]^-{f}\\&W }$$

外積と直和

$V,W$をベクトル空間とする.このとき,
$$\bigwedge^2(V\oplus W)\cong(\bigwedge^2 V)\oplus(V\otimes W)\oplus(\bigwedge^2 W)$$
が成り立つ. 

線形写像$$\Psi:\bigwedge^2(V\oplus W)\rightarrow(\bigwedge^2 V)\oplus(V\otimes W)\oplus(\bigwedge^2 W)$$
を,
$$\Psi((v_1+w_q)\wedge(v_2+w_2))=(v_1\wedge v_2,v_1\otimes w_2-v_2\otimes w_1,w_1\wedge w_2)$$で定義する.
また,線形写像
$$\Phi:(\bigwedge^2 V)\oplus(V\otimes W)\oplus(\bigwedge^2 W)\rightarrow \bigwedge^2(V\oplus W)$$

$$\Phi(v_1\wedge v_2,v\otimes w,w_1\wedge w_2)=v_1\wedge v_2+v\wedge w+w_1\wedge w_2$$
で定義する.
そうすれば,$\Psi\circ\Phi=id,\Phi\circ\Psi=id$が計算により分かり,これにより同型が従う.
ちなみに,線形写像であることは外積や直和の普遍性を用いて示すことができる.

一般に,
$$\bigwedge^n(V\oplus W)\cong\bigoplus_{l+m=n}(\bigwedge^lV)\otimes(\bigwedge^mW)$$
が成り立ちます.

解答

  1. $h:V^2\rightarrow\bigwedge^2V$$h(v,w)=f(v)\wedge f(w)$で定めると,これは双線形交代写像なので外積の普遍性により,$g(v\wedge w)=h(v,w)=f(v)\wedge f(w)$を満たす線形写像$g$が一意的に存在する.
  2. $f$が対角化可能であるとき,$V$の基底$\{v_1,v_2,\cdots,v_n\}$と複素数$\lambda_i$が存在して,$f(v_i)=\lambda_iv_i$が成り立つ.このとき,$\bigwedge^2V$の基底として$\{v_1\wedge v_2,v_1\wedge v_3,\cdots, v_{n-1}\wedge v_n\}$をとれば,$g(v_i\wedge v_j)=\lambda_i\lambda_j (v_i\wedge v_j)$となり,対角化可能であることが分かる.
     逆に$f$が対角化不可能だとすると,ジョルダン標準形の理論より,$V$の基底$\{v_1,v_2,\cdots,v_n\}$と固有値$\lambda$$2\leq r\leq n$が存在して$$f(v_1)=\lambda v_1,\,\,f(v_2)=v_1+\lambda v_2,\,\,\cdots,\,\,f(v_r)=v_{r-1}+\lambda v_r$$
    が成り立つ.$f$は可逆なので$\lambda\neq0$$V_1=\langle v_1,\cdots,v_r\rangle,V_2=\langle v_{r+1},\cdots,v_n\rangle$とおくと,上の命題により,$$\bigwedge^2 V\cong\bigwedge^2(V_1\oplus V_2)\cong(\bigwedge^2 V_1)\oplus(V_1\otimes V_2)\oplus(\bigwedge^2 V_2)$$
    が成り立つ.この同型の下,$g$$\bigwedge^2 V_1 $への制限を考える.
     $\bigwedge^2 V_1 $の基底$\{v_1\wedge v_2,v_1\wedge v_3,\cdots,v_{r-1}\wedge v_r\}$についての$g$の表現行列を考えると,これは対角成分がすべて$\lambda^2$である三角行列なので固有値が$\lambda^2$であることが分かる.
     $r\ge 3$の時,$\text{Ker}(g-\lambda^2I)$の次元が${}_r C_2$であり得ないことは,$g$の表現行列の下から二行目が$\begin{pmatrix}0&\cdots&0& \lambda^2&\lambda\end{pmatrix}$となっていることから従う.よって対角化不可能.
     $r= 2$のとき,$n\ge 3$より,固有値$\lambda^\prime$とそれに付随する固有ベクトル$v$があってそれは$v_1,v_2$と一次独立である.ここでも,$f$が可逆であることから$\lambda^\prime\neq 0$$g$$\langle v_1\wedge v,v_2\wedge v\rangle$への制限を考える.表現行列は
    $$\begin{pmatrix}\lambda\lambda'&\lambda'\\0&\lambda\lambda'\end{pmatrix}$$
    である.固有値は$\lambda\lambda'$で,退化していることが分かる.よって対角化不可能.
     よって$g$は対角化不可能な線形変換を直和成分として持つことが分かるので,$g$は対角化不可能.

(3)このジョルダン標準形になる$V$の基底を$v_1,\cdots, v_n$とすると,$g$の表現行列は,先ほど考えたようになる.これは対角成分が1で,対角成分の一つ上のところに$0$でない成分が存在する行列である.よって$g-I$${}_r C_2 $乗して初めて0となる.

投稿日:1日前
更新日:1日前

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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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