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東大数理院試過去問解答例(2005B02)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2005B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2005B02

$L=\mathbb{C}(X_1,X_2,X_3)$とし、$\omega$$1$の原始$3$乗根とする。$L$の自己同型$\sigma,\tau$
$$ \sigma(X_1)=X_{2},\sigma(X_2)=X_3,\sigma_{X_3}=X_1 $$
$$ \tau(X_i)=\omega^iX_i $$
で定義する。

  1. $i=1,2,3$に対して$\rho(X_i)=\sigma\tau\sigma^{-1}\tau^{-1}(X_i)$を計算しなさい。
  2. $L$の部分体$K=\{f\in L|\sigma(f)=\tau(f)=f\}$に対して、拡大次数$[L:K]$を計算しなさい。
  3. 拡大次数$[K(X_1):K]$及び$X_1$$K$上の最小多項式を計算しなさい。また$K(X_1)/K$がガロアかどうかを判定しなさい。
  4. $K$$9$次であるような$L/K$の中間体の個数を計算し、このような中間体のうち$K$上ガロアであるものを全て挙げなさい。
  1. 実際に計算して
    $$ \begin{split} \rho(X_i)&=\sigma\tau\sigma^{-1}\tau^{-1}(X_i)\\ &=\sigma\tau\sigma^{-1}(\omega^{-i} X_i)\\ &=\sigma\tau(\omega^{-i}X_{i+2})\\ &=\sigma(\omega^2X_{i+2})&={\color{red}\omega^2X_i} \end{split} $$
    である。
  2. $\tau$$\sigma$で生成される群を$G$とする。このとき
    $$ \left|G/[G:G]\right|=9 $$
    $$ \left|[G:G]\right|=3 $$
    であることから、
    $$ [L:K]=|G|=9\cdot3={\color{red}27} $$
    である。
  3. 最小多項式は
    $$ {\color{red}\prod_{i,j\in{0,1,2}}(T-\omega^iX_j)} $$
    であり、これによって$[K(X_1):K]={\color{red}9}$である。これがガロア拡大とすると、$X_2,X_3\in K(X_1)$になり、$L=K(X_1)$であるから(2)に矛盾する。よって$K(X_1)$ガロアではない
  4. $H$$\tau$$\rho$で生成される部分群とする。このとき
    $$ \tau\rho=\rho\tau $$
    $$ \sigma^{-1}\tau\sigma=\rho^2\tau $$
    $$ \sigma^{-1}\rho\sigma=\rho $$
    $$ \langle\sigma\rangle\cap H=\{1\} $$
    であるから、
    $$ H\simeq(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^2 $$
    $$ G=(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^2\rtimes\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} $$
    である。但し半直積は非自明な半直積である。この元の位数は全て$3$であるから、所望の中間体の個数は
    $$ \frac{27-1}{2}={\color{red}13} $$
    である。また$G$の位数$3$の正規部分群は$H$に含まれているから、ガロア拡大に対応する部分群は
    $$ \langle\rho\rangle,\langle\tau\rangle,\langle\tau\rho\rangle,\langle\tau\rho^2\rangle $$
    であり、それぞれに対応する部分体は
    $$ {\color{red}\mathbb{C}(X_1^3,X_2^3,X_3^3,X_1X_2^2,X_2X_3^2,X_3X_1^2)} $$
    $$ {\color{red}\mathbb{C}(X_1^3,X_2^3,X_3,X_1X_2)} $$
    $$ {\color{red}\mathbb{C}(X_1^3,X_2,X_3^3,X_1X_3)} $$
    $$ {\color{red}\mathbb{C}(X_1,X_2^3,X_3^3,X_2X_3)} $$
    である。
投稿日:922
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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