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京大数学院試顔問解答例(2026専門02)

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ここでは京大RIMS数学教室の修士課程の院試の2026専門02の解答例を解説していきます(但し今回は解説の都合で問題を改変しています)。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2026専門02(改)

$K$
$$ K:=\mathbb{Q}\left(\sqrt[3]{1+\sqrt{-3}}\right) $$
とし、$K$を含み$\mathbb{Q}$上ガロアであるような最小の体を$F$とおく。以下の問いに解答しなさい。但し(3)及び(4)に於いて体を挙げる際は、$F$の適切な元$a$を取り、$\mathbb{Q}(a)$の形で挙げること。

  1. 拡大次数$[K:\mathbb{Q}]$及び$[F:\mathbb{Q}]$を計算しなさい。
  2. $F/\mathbb{Q}$の部分拡大のうち、$\mathbb{Q}$$6$次拡大であるようなものの個数を求めなさい。
  3. $F/\mathbb{Q}$の部分拡大のうち、$\mathbb{Q}$$2$次拡大であるようなものを全て挙げなさい。
  4. $F/\mathbb{Q}$の部分拡大のうち、ガロア拡大であるものを全て挙げなさい。
  1. 初めに
    $$ F':=\mathbb{Q}\left(\sqrt[3]{2},\exp(i\frac{\pi}{9})\right) $$
    とおく。このとき$F'\supseteq F$である。また$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$$\mathbb{Q}$上ガロアでない$3$次拡大である一方で、$\mathbb{Q}(\exp(i\frac{\pi}{9}))$は円分拡大なので、ガロアの推進定理から$F'$$\mathbb{Q}$$18$次ガロア拡大である。
     ここで$G:=\mathrm{Gal}(F'/\mathbb{Q})$
    $$ \begin{array}{cccc} &F'&\to&F'\\ &\sqrt[3]{2}&\mapsto&\sqrt[3]{2}\exp(i\frac{2a\pi}{3})\\ &\exp(i\frac{\pi}{9})&\mapsto&\exp(i\frac{b\pi}{9}) \end{array} $$
    であるような体同型$\sigma_{a,b}$全体として定義される。但し$a$$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$全体を、$b$$\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}$の可逆元全体を走る。ここで$x:=\sqrt[3]{1+\sqrt{-3}}=\sqrt[3]{2}\exp(i\frac{\pi}{9})$$\sigma_{a,b}$によって$\sqrt[3]{2}\exp(i\frac{(6a+b)\pi}{9})$に移されるから
    $$ \exp(i\frac{\pi}{9})=\frac{\sigma_{0,5}(x)}{\sigma_{0,4}(x)}\in F $$
    $$ \sqrt[3]{2}=\frac{x\sigma_{0,4}(x)}{\sigma_{0,5}(x)}\in F $$
    であり、これにより$F'=F$であることが従う。
     以上の議論から$[F:\mathbb{Q}]={\color{red}18}$であることがわかる。また$x$を固定する$\sigma_{a,b}$の個数は$3$個であるから、$[K:\mathbb{Q}]=\frac{18}{3}={\color{red}6}$である。
  2. 初めに
    $$ \sigma_{a,b}^3=\sigma_{a(1+b+b^2),b^3} $$
    であるから、$G$の位数$3$の元の個数は$9$個である。よって$F/\mathbb{Q}$$\mathbb{Q}$$6$次な中間体の個数は$\frac{9-1}{2}={\color{red}4}$である。ここで$G$の位数$3$の部分群は
    $$ H:=\{1,\sigma_{1,1},\sigma_{2,1}\} $$
    $$ H':=\{1,\sigma_{0,4},\sigma_{0,7}\} $$
    $$ \{1,\sigma_{1,4},\sigma_{2,7}\} $$
    $$ \{1,\sigma_{2,4},\sigma_{1,7}\} $$
    であり、このうち正規部分群は$H,H'$のみである。
  3. $M$$F/\mathbb{Q}$の最大アーベル拡大とする。$M$$\mathbb{Q}$$6$次の円分拡大$\mathbb{Q}(\exp(i\frac{\pi}{9}))$を含み、かつ$[M:\mathbb{Q}]|18$であるから$M={\mathbb{Q}(\exp(i\frac{\pi}{9}))}$が従い、
    $$ \mathrm{Gal}(M/\mathbb{Q})\simeq{\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}} $$
    である。$\mathbb{Q}$$2$次拡大はアーベル拡大であることを考慮すると、$\mathbb{Q}$$2$次な$F/\mathbb{Q}$の部分拡大は${\color{red}\mathbb{Q}\left(\sqrt{-3}\right)}$で尽くされている。
  4. まず$F/\mathbb{Q}$の中間体の$\mathbb{Q}$上の次数としてあり得るものは$1,2,3,6,9=3^2,18$であり、特に$\mathbb{Q}$上アーベル拡大であるか$6$次拡大であるか$F$自身であるかのいずれかである。
     アーベル拡大の場合は巡回拡大$M/\mathbb{Q}$の中間体であり、これらは
    $$ {\color{red}\mathbb{Q}\left(\exp(i\frac{\pi}{9})\right)} $$
    $$ {\color{red}\mathbb{Q}\left(\cos\frac{\pi}{9}\right)} $$
    $$ {\color{red}\mathbb{Q}\left(\sqrt{-3}\right)} $$
    $$ {\color{red}\mathbb{Q}} $$
    である。
     一方$\mathbb{Q}$$6$次のガロア拡大であるような体は(2)で行った議論により、$H$に対応する$\mathbb{Q}\left(\exp(i\frac{\pi}{9})\right)$$H'$に対応する$N:=\mathbb{Q}\left(\sqrt[3]{2},\sqrt{-3}\right)$である。ここで$\sqrt[3]{2}\sqrt{-3}$$N$の元であり、これを固定するような$G$の元は$\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$及び$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{4})$の両方を含む体なので、$\mathbb{Q}$$6$次である。よって$\mathbb{Q}$のガロア部分拡大は、$\mathbb{Q}$上のアーベル拡大と$F$自身以外だと、
    $$ N={\color{red}\mathbb{Q}\left(\sqrt[3]{2}\sqrt{-3}\right)} $$
    のみである。
     一方$s=\sqrt[3]{2}+\exp(i\frac{\pi}{9})$と置く。$\sigma_{a,b}(s)=\sqrt[3]{2}\exp(i\frac{2a\pi}{3})+\exp(i\frac{b\pi}{9})$$s$の等しいと仮定する。まず$\sigma_{a',b'}(s)$の実部を最大にするような組$(a',b')$$(0,1)(0,-1)$である。また$\sigma_{0,1}(s)$$\sigma_{0,-1}(s)$は虚部が異なる。このことから$(a,b)=(0,1)$が従う。よって$F$
    $$ F={\color{red}\mathbb{Q}\left(\sqrt[3]{2}+\exp(i\frac{\pi}{9})\right)} $$
    と表される。
     以上の議論から$F/\mathbb{Q}$$\mathbb{Q}$上ガロアな中間体は上で求めたもので尽くされていることがわかった。

 元の問題は「ガロア群$\mathrm{Gal}(F/\mathbb{Q})$を求めなさい」という問題でしたが、問うてることが抽象的だと思ったので、問題を大幅に変更しました。例えば解答を「上で挙げた$\sigma_{a,b}$たちの為す群」としても一応求めていることにはなります。尤もここで求められているのは$\mathrm{Gal}(F/\mathbb{Q})$の群構造だと思いますので、以下これについて解説していきます。
 まず$G_1$$\sigma_{a,0}$全体の為す群($\simeq \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$)とし、$G_2$$\sigma_{0,b}$全体の為す群($\simeq(\mathbb{Z}/9\mathbb{Z})^\times\simeq \mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$)としたとき、
$$ G=G_1G_2 $$
$$ G_1\cap G_2=\{1\} $$
$$ G_1\triangleleft G $$
なので、$G=G_1\rtimes G_2$なことが分かります。また半直積の群構造を求めるには群準同型$G_2\to\mathrm{Aut}(G_1)$を求める必要がありますが、今回の場合このような群準同型は自明な群準同型か$G_2$の生成元を$-1$倍写像に持っていくものしかありません。前者の場合は半直積はただの直積なので、今回は後者になります。
 元の問題に対してはこの旨を書いておけば、正解になると思います。

投稿日:8日前
更新日:7日前
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藍色日和
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