この記事では二階微分方程式
$$\frac{d^2u}{dx^2}+p(x)\frac{du}{dx}+q(x)u=0\qquad\cdots(\bigstar)$$
のべき級数による解き方(フロベニウス法)について解説していきます。
以下ではこの微分方程式の$x=0$周りでの解について考察していきます。
いま$p(x),q(x)$はそれぞれ$x=0$を高々$1,2$位の極に持つ、つまり
$$p(x)=\sum^\infty_{n=0}p_nx^{n-1},\quad
q(x)=\sum^\infty_{n=0}q_nx^{n-2}$$
とローラン展開できるものとする。このとき実際$p$または$q$が$x=0$を極に持っていれば$(\bigstar)$は$x=0$を確定特異点に持つと言い、単に$p,q$が$x=0$において正則であれば$(\bigstar)$は$x=0$を通常点に持つと言う。
いま
$$u=\sum^\infty_{n=0}a_nx^{n+\a}\quad(a_0=1)$$
とおくと
$$\frac{u''}{x^{\a-2}}+xp(x)\frac{u'}{x^{\a-1}}+x^2q(x)\frac{u}{x^\a}=0 $$
より係数比較から
$$a_n((\a+n)(\a+n-1)+p_0(\a+n)+q_0)+\sum^{n-1}_{k=0}a_k(p_{n-k}(\a+k)+q_{n-k})=0$$
という関係式が得られる。特に$n=0$ときの式
$$\a(\a-1)+p_0\a+q_0=0$$
を$(\bigstar)$の$x=0$における決定方程式と言い、その解のことを特性指数と言う。
いま$\a,\a'\;(\Re\a\geq\Re\a')$を特性指数とし$F(t)=t(t-1)+p_0t+q_0$とおくと、漸化式
$$a_0=1,\quad a_nF(\a+n)+\sum^{n-1}_{k=0}a_k(p_{n-k}(\a+k)+q_{n-k})=0$$
によって$\a$に対応する級数解$u_\a$が得られることとなる。
また$\a-\a'\not\in\Z_{\geq0}$つまり$F(\a'+n)\neq0$であれば$\a'$に対応する級数解$u_{\a'}$も得られ、$u_\a,u_{\a'}$は$x=0$周りにおける基本解をなすこととなる。
しかし$\a-\a'\in\Z_{\geq0}$のときは$\a'$に対応する級数解は得られないため、別の方法を考える必要がある。
いま$u=u_\a v$とおいて$v$の満たす微分方程式について考えてみよう。すると
\begin{align*}
0&=u''+p(x)u'+q(x)u\\
&=(u_\a v''+2u'_\a v'+u''_\a v)+p(x)(u_\a v'+u'_\a v)+q(x)u_\a v\\
&=u_\a(v''+\l(2\frac{u'_\a}{u_\a}+p(x)\r)v')
\end{align*}
つまり
$$\frac{d^2v}{dx^2}+\l(2\frac{u'_\a}{u_\a}+p(x)\r)\frac{dv}{dx}=0$$
と$v^{(0)}$の項を消去することができる。
これによってこの微分方程式は
\begin{align*}
\log\frac{dv}{dx}
&=-\int\l(2\frac{u'_\a}{u_\a}+p(x)\r)dx\\
&=-2\log u_\a-p_0\log x-\sum^\infty_{n=1}\frac{p_n}{n}x^n+C
\end{align*}
つまり
$$v=A+B\int\frac{x^{-p_0}}{u^2_\a}\exp\l(-\sum^\infty_{n=1}\frac{p_n}{n}x^n\r)dx$$
と解けることになる。
さらに
$$g(x)=\l(\frac{x^\a}{u_\a(x)}\r)^2\exp\l(-\sum^\infty_{n=1}\frac{p_n}{n}x^n\r)=\sum^\infty_{n=0}g_nx^n\quad(g_0=1)$$
とおいたとき、$m=\a-\a'$を非負整数としていたこと、および解と係数の関係から$1-p_0=\a+\a'$が成り立つことに注意すると
\begin{align*}
v&=A+B\int x^{-p_0-2\a}g(x)dx\\
&=A+B\int x^{-m-1}\sum^\infty_{n=0}g_nx^ndx\\
&=A+B\bigg(g_m\log x+\sum^\infty_{\substack{n=1\\n\neq m}}\frac{g_n}{n-m}x^{n-m}\bigg)
\end{align*}
と表せる。
したがって$u=u_\a v$としていたことに注意すると$u_\a$と線形独立な解
\begin{align*}
u_{\a'}(x)
&=u_\a(x)\bigg(g_m\log x+\sum^\infty_{\substack{n=0\\n\neq m}}\frac{g_n}{n-m}x^{n-m}\bigg)\\
&=g_mu_\a(x)\log x+\sum^\infty_{n=0}h_nx^{n+\a-m}\\
&=g_mu_\a(x)\log x+\sum^\infty_{n=0}h_nx^{n+\a'}
\end{align*}
が得られることとなる(特に$m\neq0$であれば$h_0=-1/m$となることに注意する)。
$x=0$のまわりで
$$p(x)=\sum^\infty_{n=0}p_nx^{n-1},\quad
q(x)=\sum^\infty_{n=0}q_nx^{n-2}$$
というローラン展開を持つ係数を持つ微分方程式
$$\frac{d^2u}{dx^2}+p(x)\frac{du}{dx}+q(x)u=0$$
について以下が成り立つ。
決定方程式
$$t(t-1)+p_0t+q_0=0$$
の解を$t=\a,\a'\;(\Re\a\geq\Re\a')$とおくと、$\a$に対して定まる漸化式
$$a_0=1,\quad a_nF(\a+n)+\sum^{n-1}_{k=0}a_k(p_{n-k}(\a+k)+q_{n-k})=0$$
によって
$$u_\a(x)=\sum^\infty_{n=0}a_nx^{n+\a}\quad(a_0=1)$$
という形の解が得られる。特に$\a-\a'$が整数でなければ同様にして
$$u_{\a'}(x)=\sum^\infty_{n=0}a'_nx^{n+\a'}\quad(a'_0=1)$$
という形の解が得られる。
また$m=\a-\a'$が正の整数であればある定数$G$が存在し
$$u_{\a'}(x)=Gu_\a(x)\log x+\sum^\infty_{n=0}h_nx^{n+\a'}\quad(h_0=1)$$
という形の解が得られ、$m=0$であれば
\begin{align*}
u_{\a'}(x)&=u_\a(x)\log x+\sum^\infty_{n=1}h_nx^{n+\a'}\\
&=u_\a(x)\l(\log x+\sum^\infty_{n=1}\frac{g_n}{n}x^n\r)
\end{align*}
という形の解が得られる。
いま微分演算子$\vt=x\frac d{dx}$に関する二階微分方程式
$$\vt^2 u+P(x)\vt u+Q(x)u=0$$
を考えると、$P,Q$は$x=0$周りで正則であるものとし
$$u=\sum^\infty_{n=0}a_nx^{n+\a}$$
とおいたとき
$$\vt^ku=\sum^\infty_{n=0}a_n(n+\a)^kx^{n+\a}$$
が成り立つので$x=0$における決定方程式は
$$\a^2+P(0)\a+Q(0)=0$$
となる。
実際のところこの微分方程式は
$$\frac{d^2u}{dx^2}+\frac{P(x)+1}x\frac{du}{dx}+\frac{Q(x)}{x^2}u=0$$
と書き直せる。なるほど。