この記事では、極限の性質について教科書などでは触れられないような事項を記述し、関係事項をまとめる。
以下、
ここから先の議論にて、数列は自然数全体の集合によって添え字づけられているものとするが、下に有界であり上に有界でない整数の部分集合と取り換えても同様であろう。また、ところどころ全順序集合によって添え字づけられていれば成り立つ命題が存在することに注意せよ。その場合ε-δ論法の定義もそれに準じたものとなることも留意すべし。
が成り立つことであり、
が成り立つことである。また、
この命題により
また次も成り立つ。
収束、正の無限大への発散、負の無限大への発散、振動はどの二つも同時には起こり得ない。
収束と他の3つについては定義より明らか。正(負)の無限大への発散と振動についても同様。
以上より次が成り立つ。
任意の実数列
次の命題はよく知られている。
(1)
(2)
(3)
(4)
が成り立つ。
(4)について、
(1)収束実数列は有界である。
(2)
(3)
(4)単調増加数列が上に有界な部分列を持てば元の数列も上に有界。
(1)
(4)
任意に
また、無限大への発散については次が成り立つ。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(1),(2)はそれぞれ(5),(6)の系ゆえ(3)~(6)を示す。
(3)任意に
(4)任意に
(5)任意に
(6)収束実数列は有界よりある実数
(1)
(2)
が成り立つ。
(1)
(2)(1)と同様。
振動する数列同士の和や積がまた振動するとは限らないことに注意せよ。
数列の収束の定義より次が成り立つ。
値域が正の実数全体である全射実関数全体の集合を
(1)→(2),(2)⇔(3),(4)⇔(5),(6)⇔(7)は明らか、
(2)→(1)
任意に
(2)⇔(4)
が(2)→(1)と同様の議論でわかるので(1)⇔(☆)を示せばよい。
(☆)→(1)は明らか。
(1)→(☆)
任意に
最後に(4)⇔(6)を示す。
(4)→(6)
値域を
(6)→(4)
値域を
数列の極限は全自然数で定義された数列に対してのみ考えているが、この命題とのちの命題14から、例えばn=1でのみ定義されていない数列でも、適当に値を与えた数列を考えれば、その極限は命題14から与えた値によらず、極限の議論では命題10からn=1を回避することができ整合的である。ゆえに、今後有限個の項で定義されていない数列の極限はこのように適当に項を追加したものの極限と定義する(もしくはその数列が定義されている添え字の小さい順に自然数を1から対応させ、部分列として考えた時の極限と考えてもよい。これなら一般に添え字が整数値から始まるような数列でも問題なく極限を定義できる)。
また、正(負)の無限大への発散についてもほぼ同様な表現が存在する(省略する)。
以上の命題から次を示すことができる。
(1)(はさみうちの原理)
実数列
(2)(追い出しの定理)
十分大きい自然数
(3)(比較定理)
十分大きい自然数
(4)((3)の系)
次は極限の定義から容易に導ける。
(1)
各
広義部分列、添え字関数という名称はこの記事とその派生でのみ用いる名称であって全く一般的でないことに留意せよ。また明らかに部分列は広義部分列である。
(1)
(2)
(3)単調列は、添え字関数が∞へ発散するような収束広義部分列を含むならば収束しその広義部分列と同じ極限値を持つ。
(4)
(1)より添え字関数が発散する発散部分列を持つ数列は発散する。
数列の有限個の項を削除・追加あるいは値を変えて新たな数列をえたとする。これらの収束性は常に等しくなる。つまり、一方が収束すればもう一方も収束し、極限値は等しい。正または負の無限大、振動についても同様である。
実数には次のような性質がある。
以下の命題はすべて同値であり、成り立つ。
(1)(アルキメデスの原理)
(2)
(3)
(4)
(5)
(1)
任意に
(2)
任意に
(3)
任意に
(4)
(2)
(5)
任意に正なる実数
が成り立つことをいう。
この定義から、収束する数列がコーシー列であることは容易に示される。これは例えば
論理式の対称性からわかるように
コーシー列は収束する。
次は
次の命題はすべて同値である。
(1)(選択公理)
と定義する。このとき次が成り立つ。
(2)(ツォルンの補題)
帰納的全順序集合は極大元を持つ。
(3)(整列可能定理)
任意の集合はその上にある順序を定義して整列集合にすることができる。
以下の命題はすべて同値であり、成り立つ。
(1)(ワイエルシュトラスの公理)
空でない、上に有界な
(1)'
空でない、下に有界な
(2)(連続の公理)
上に有界な単調増加数列は収束する。
(2)'
下に有界な単調減少数列は収束する。
(3)(ボルツァーノワイエルシュトラスの定理)
有界実数列は収束部分列をもつ。
(4)
アルキメデスの原理かつ区間縮小法
(5)
アルキメデスの原理かつコーシーの収束条件
(6)(デデキントの公理)
(a)
(b)
(2)において極限値はその数列全体の集合の上限であることが言える。(2)'も同様である。
次に上限、下限、最大値、最小値、上極限、下極限について述べる。
空でない
(1)
(2)次の二つが成り立つ。
(a)
(b)
(3)
これを満たす
と定義する。このとき実数の空でない部分集合全体は、上で定義された和と積で、加法単位元を
実際は実数の空でない部分集合全体は集合としては"大きすぎる"。ゆえに上の表現はあくまで可換環やベクトル空間の公理の各条件に対応する命題の成立を主張するものであることに注意されたい。実際に加法と乗法が定義されている訳でなく、また可換環でもベクトル空間でもない(考えることもできない)。
この定義のもとで次が成り立つ。
(1)
(2)
(3)
(a)
(b)
上限があれば上限と最大値は一致するため、この命題は最大値の場合も含んでいることに注意。
上に有界な数列
で定義すると
(1)
とおき、これを
(2)
(3)
同様に下極限も
(1)
(2)次が成り立つ。
(a)
(b)
(3)次が成り立つ。
(c)
(d)
(e)
下極限も同様である。
(1)
つまり
となり従う。
(1)
以下はすべて同値である。
(1)
(2)
(3)∞に発散する
下極限も同様である。
次の(1),(2)は同値である。
(1)
(2)
このとき
(1),(2)の条件は