この記事では、極限の性質について教科書などでは触れられないような事項を記述し、関係事項をまとめる。
以下、$\lbrace a_n \rbrace$,$\lbrace b_n \rbrace$は1以上の自然数$n$で定義された実数列とする。また特に記述がなければ$a_n≠0$とかけばある自然数$N$が存在して$n \geq N$ならば$a_n≠0$を意味するものとする。$a_n \gt 0 $や$a_n \lt 0$も同様とする。自然数$n$に関する命題$p(n)$について、十分大きい$n\in \mathbb{N}$について$p(n)$と書いた場合も同様とする。
ここから先の議論にて、数列は自然数全体の集合によって添え字づけられているものとするが、下に有界であり上に有界でない整数の部分集合と取り換えても同様であろう。また、ところどころ全順序集合によって添え字づけられていれば成り立つ命題が存在することに注意せよ。その場合ε-δ論法の定義もそれに準じたものとなることも留意すべし。
$\lbrace a_n \rbrace$に対し、$\lbrace a_n \rbrace$が収束するとは
$\exists\alpha\in \mathbb{R}, \forall \varepsilon \gt0, \exists N \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} ,[n \gt N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt \varepsilon ] $
が成り立つことであり、$\lbrace a_n \rbrace$が収束しないとき発散するという。また、$\lbrace a_n \rbrace$が正(負)の無限大に発散するとは
$\forall K \in \mathbb{R} , \exists N \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} ,[n \gt N \Longrightarrow a_n \gt(\lt) K ] $
が成り立つことである。また、$\lbrace a_n \rbrace$が$\alpha$に収束することを$\lim_{n \to \infty}a_n= \alpha $または$a_n→\alpha$,正(負)の無限大に発散することを$\lim_{n \to \infty}a_n=∞(-∞) $または$a_n→∞(-∞)$と表す。
$\lbrace a_n \rbrace$が正または負の無限大に発散するとき、$\lbrace a_n \rbrace$は発散する。
$\lbrace a_n \rbrace$が収束すると仮定する。このとき定義からある実数$\alpha$と自然数$N_1$が存在して、$n \gt N_1$ならば$\alpha-1 \lt a_n \lt \alpha +1$となる。しかし{$a_n$}が正の無限大に発散するとき、定義からある自然数$N_2$が存在し$n \gt N_2$ならば$ a_n \gt \alpha +1$となり$n_0≔max(N_1,N_2)+1$とおけば$ a_{n_0} \gt \alpha +1$かつ$ a_{n_0} \lt \alpha +1$となり矛盾する。負の無限大の時も同様。よって題意は従う。$\Box$
この命題により$\lbrace a_n \rbrace$が発散するのは、$\lbrace a_n \rbrace$が正または負の無限大に発散するときと、そのどちらでもないが$\lbrace a_n \rbrace$は発散するときであると言える。よって次のように定義する。
$\lbrace a_n \rbrace$が発散するが、正または負の無限大に発散しないとき、$\lbrace a_n \rbrace$は振動するという。
また次も成り立つ。
収束、正の無限大への発散、負の無限大への発散、振動はどの二つも同時には起こり得ない。
収束と他の3つについては定義より明らか。正(負)の無限大への発散と振動についても同様。$\lbrace a_n \rbrace$が正の無限大、負の無限大両方に発散したと仮定すると、定義よりある自然数$N_1,N_2$が存在して$n \gt N_1$ならば$a_n \gt 0$かつ$n \gt N_2$ならば$a_n \lt 0$となり、$n_0≔max(N_1,N_2)+1$とおけば$a_{n_0} \gt 0$かつ$a_{n_0} \lt 0$となり矛盾する。ゆえに題意は成り立つ。$\Box$
以上より次が成り立つ。
任意の実数列$\lbrace a_n \rbrace$について、$\lbrace a_n \rbrace$は収束するか、または正か負の無限大に発散するか、もしくは振動するかのいずれか一つのみが成り立つ。
次の命題はよく知られている。
$\lbrace a_n \rbrace$,$\lbrace b_n \rbrace$がそれぞれ$\alpha$,$\beta$$\in$$\mathbb{R}$に収束するとき、
(1)$\lim_{n \to \infty} \lbrace a_n+b_n \rbrace =$$\alpha+ \beta $
(2)$\lim_{n \to \infty}$$ ca_n $=$\alpha $ ($c \in \mathbb{R} $)
(3)$\lim_{n \to \infty}$$ a_nb_n $=$\alpha \beta $
$\beta≠0$のとき
(4)$\lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n}= \frac{\alpha}{\beta} $
が成り立つ。
(4)について、$\beta≠0$から$b_n≠0$は従うことに留意せよ。
$\alpha, \beta $$\in$$\mathbb{R}$に対し
$\lim_{n \to \infty}a_n= \alpha $,$\lim_{n \to \infty}a_n= \beta $ならば$\alpha=\beta $
(1)収束実数列は有界である。
(2)$a_n→∞(-∞)⇒$$\lbrace a_n \rbrace$は上に(下に)有界でない。
(3)$\lbrace a_n \rbrace$が単調増加列のとき、(2)は逆も成り立つ。
(4)単調増加数列が上に有界な部分列を持てば元の数列も上に有界。
(1)$\lbrace a_n \rbrace$が$\alpha\in\mathbb{R}$に向かうとする。このときある$N\in\mathbb{N}$が存在して$n\geq N$ならば
(4)$\lbrace a_n \rbrace$を単調増加数列、$\lbrace a_{n_k} \rbrace$を上に有界な部分列とする。すなわちある$M\in\mathbb{R}$が存在して、任意の$k\in\mathbb{N}$について$a_{n_k}\leq M$
任意に$l\in\mathbb{N}$をとる。$l\leq n_l$が帰納法よりわかるから、単調増加性と先に示したことから$a_l\leq a_{n_l}\leq M$となり$\lbrace a_n \rbrace$は有界となる。$\Box$
また、無限大への発散については次が成り立つ。
$\lim_{n \to \infty}a_n=∞$,$\lim_{n \to \infty}b_n=∞$のとき
(1)$\lim_{n \to \infty}ca_n= \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
∞(c \gt 0) \\
-∞(c \lt 0)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray} $
(2)$\lim_{n \to \infty} \lbrace a_n+c \rbrace =∞$($c \in \mathbb{R} $)
(3)$\lim_{n \to \infty} \lbrace a_n+b_n \rbrace =∞$
(4)$\lim_{n \to \infty}$$ a_nb_n $=∞
$\lbrace p_n \rbrace$が$p \in \mathbb{R} $に収束するとき
(5)$\lim_{n \to \infty}p_na_n= \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
∞(p \gt 0) \\
-∞(p \lt 0)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray} $
(6)$\lim_{n \to \infty} \lbrace a_n+p_n \rbrace =∞$
(1),(2)はそれぞれ(5),(6)の系ゆえ(3)~(6)を示す。
(3)任意に$K \gt 0$をとる。定義よりある自然数$N_1,N_2$が存在して$n \gt N_1$ならば$a_n \gt \frac{K}{2} $かつ$n \gt N_2$ならば$b_n \gt\frac{K}{2} $,ゆえに$n_0≔max(N_1,N_2)$とおけば$n \gt n_0$ならば$a_n+b_n \gt \frac{K}{2}+\frac{K}{2} =K $となり従う。
(4)任意に$K \gt 0 $をとる。定義よりある自然数$N_1,N_2$が存在して$n \gt N_1$ならば$a_n \gt \sqrt{K} $かつ$n \gt N_2$ならば$a_n \gt \sqrt{K} $となり、$n_0≔max(N_1,N_2)$とおけば$n \gt n_0$ならば$a_n b_n \gt \sqrt{K} \sqrt{K} =K$ となり従う。
(5)任意に$K \gt 0$をとる。$p \gt 0$のとき定義よりある自然数$N_1,N_2$が存在して$n \gt N_1$ならば$\frac{p}{2} \lt p_n$かつ$n \gt N_2$ならば$a_n \lt \frac{2}{p}K $となる。よって$n_0≔max(N_1,N_2)$とおけば$p_n a_n \gt \frac{p}{2} \cdot \frac{2}{p}K=K $となり従う。$p \lt 0$も同様。
(6)収束実数列は有界よりある実数$M \gt 0$が存在して任意のn$\in$$\mathbb{N}$について$-M \lt p_n$となる。任意に$K \gt 0$をとる。定義よりある自然数$N_1$が存在して$n \gt N_1$ならば $a_n \gt K+M $となる。よって$n \gt N_1$のとき$a_n+p_n \gt K$となり従う。$\Box$
$\lbrace a_n \rbrace$は振動し、$\lbrace p_n \rbrace$は$p\in \mathbb{R}$へ収束するものとする。このとき
(1)$\lbrace a_n+p_n \rbrace$は振動する。
(2)$p_n≠0,p≠0$のとき$\lbrace p_na_n \rbrace$は振動する。
が成り立つ。
(1)$\lbrace a_n+p_n \rbrace$が収束すると仮定すると$a_n=(a_n+p_n)-p_n$より$a_n$が収束し矛盾する。$\lbrace a_n+p_n \rbrace$が正または負の無限大へ発散するときも同様である。よって$\lbrace a_n+p_n \rbrace$は振動する。
(2)(1)と同様。$\Box$
振動する数列同士の和や積がまた振動するとは限らないことに注意せよ。$(-1)^n$を考えてみるとよい。
数列の収束の定義より次が成り立つ。
値域が正の実数全体である全射実関数全体の集合を$\varGamma^{+} $,正の実数$m$について値域が$(0,m)$である全射実関数全体を$\varGamma^{+} _ {\lt m} $,$(0,m]$である全射実関数全体を$\varGamma^{+} _ {\leq m} $とする。このとき
$(1)\lbrace a_n \rbrace$が収束する
$\Longleftrightarrow$ $(2) \exists f \in \varGamma^{+}, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \exists k,l \in \mathbb{N} , \forall a \in D(f) , \exists N \in \mathbb{N}_ \geq k , \forall n \in \mathbb{N}_ \geq l ,[n \gt N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt f(a) ] $
$\Longleftrightarrow$ $(3) \exists f \in \varGamma^{+}, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \exists k,l \in \mathbb{N} , \forall a \in D(f) , \exists N \in \mathbb{N}_ \geq k , \forall n \in \mathbb{N}_ \geq l ,[n \geq N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt f(a) ] $
$\Longleftrightarrow$ $(4)\exists m \gt0,\exists f \in \varGamma^{+}_{\lt m}, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \exists k,l \in \mathbb{N} , \forall a \in D(f) , \exists N \in \mathbb{N}_ \geq k , \forall n \in \mathbb{N}_ \geq l ,[n \gt N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt f(a) ] $
$\Longleftrightarrow$
$(5)\exists m \gt0,\exists f \in \varGamma^{+}_{\lt m}, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \exists k,l \in \mathbb{N} , \forall a \in D(f) , \exists N \in \mathbb{N}_ \geq k , \forall n \in \mathbb{N}_ \geq l ,[n \geq N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt f(a) ] $
$\Longleftrightarrow$
$(6)\exists m \gt0,\exists f \in \varGamma^{+}_{\leq m}, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \exists k,l \in \mathbb{N} , \forall a \in D(f) , \exists N \in \mathbb{N}_ \geq k , \forall n \in \mathbb{N}_ \geq l ,[n \gt N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt f(a) ] $
$\Longleftrightarrow$
$(7)\exists m \gt0,\exists f \in \varGamma^{+}_{\leq m}, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \exists k,l \in \mathbb{N} , \forall a \in D(f) , \exists N \in \mathbb{N}_ \geq k , \forall n \in \mathbb{N}_ \geq l ,[n \geq N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt f(a) ] $
(1)→(2),(2)⇔(3),(4)⇔(5),(6)⇔(7)は明らか、
(2)→(1)
任意に$\varepsilon \gt 0$をとる。条件より$\varepsilon=f(a)$となる$a \in \mathbb{R} $が存在する。また、ある自然数$k,l,N_1 \geq k $が存在して$l$以上の任意の自然数$n$について$n \gt N_1$ならば$\left| a_n - \alpha \right| \lt f(a)=\varepsilon$となる。よって、$N_0≔max(N_1,l)$とおけば$n \gt N_0$ならば$\left| a_n - \alpha \right| \lt f(a)=\varepsilon$となり従う。
(2)⇔(4)
$\exists m \gt0, \exists\alpha\in \mathbb{R}, \forall \varepsilon \gt 0 , \exists N \in \mathbb{N}, \forall n \in \mathbb{N},[n \gt N \Longrightarrow \left| a_n - \alpha \right| \lt \varepsilon ] (☆) $
$\Longleftrightarrow$(4)
が(2)→(1)と同様の議論でわかるので(1)⇔(☆)を示せばよい。
(☆)→(1)は明らか。
(1)→(☆)
任意に$\varepsilon \gt 0$をとる。$\varepsilon \lt m$のときはよい。そうでないとき、☆の条件の$\varepsilon$のところを$\frac{m}{2}(\gt 0)$にしたものを考えれば$\frac{m}{2} \lt m \leq \varepsilon$より分かる。
最後に(4)⇔(6)を示す。
(4)→(6)
値域を$(0,\frac{m}{2})$,定義域を$(0,\frac{m}{2})$の$f$による逆像、対応を$f$により与える関数を考えれば、これは全射であり(6)を満たすことが分かるのでよい。
(6)→(4)
値域を$(0,m)$,定義域を$(0,m)$の$f$による逆像、対応を$f$により与える関数を考えれば、これは全射であり(4)を満たすことが分かるので良い。$\Box$
$\left| a_n - \alpha \right| \lt f(a)$を$\left| a_n - \alpha \right| \leq f(a)$に代えたものを考えても同様に同値である。したがって$=$をつけるか否かは問題にならないことがわかる。
数列の極限は全自然数で定義された数列に対してのみ考えているが、この命題とのちの命題14から、例えばn=1でのみ定義されていない数列でも、適当に値を与えた数列を考えれば、その極限は命題14から与えた値によらず、極限の議論では命題10からn=1を回避することができ整合的である。ゆえに、今後有限個の項で定義されていない数列の極限はこのように適当に項を追加したものの極限と定義する(もしくはその数列が定義されている添え字の小さい順に自然数を1から対応させ、部分列として考えた時の極限と考えてもよい。これなら一般に添え字が整数値から始まるような数列でも問題なく極限を定義できる)。
また、正(負)の無限大への発散についてもほぼ同様な表現が存在する(省略する)。
以上の命題から次を示すことができる。
(1)(はさみうちの原理)
実数列$\lbrace a_n \rbrace$,$\lbrace b_n
\rbrace$,$\lbrace c_n \rbrace$について、$\lbrace a_n \rbrace$,$\lbrace b_n \rbrace$がともに$\alpha\in \mathbb{R}$に収束し、十分大きい自然数$n$について$a_n \leq c_n \leq b_n$がなりたつとする。このとき$\lbrace c_n \rbrace$は$\alpha$に収束する。
(2)(追い出しの定理)
十分大きい自然数$n$について$a_n \leq b_n$かつ$a_n→∞$ならば$b_n→∞$が成り立つ。
(3)(比較定理)
十分大きい自然数$n$について$a_n\leq b_n$かつ$a_n→\alpha\in\mathbb{R},b_n→\beta\in\mathbb{R}$のとき$\alpha\leq \beta$
(4)((3)の系)
$a_n→\alpha$かつ$a_n→\beta$ならば$\alpha=\beta$
次は極限の定義から容易に導ける。
(1)$a_n>0$とする。このとき
$a_n→0⇔\frac{1}{a_n}→∞$
$a_n→∞⇔\frac{1}{a_n}→0$
各$k\in\mathbb{N}$に対して$n_k\in\mathbb{N}$が対応し、添え字について狭義単調増加であるとき数列$\lbrace a_{n_k} \rbrace$を$\lbrace a_n \rbrace$の部分列といい、$n_k$を添え字関数と呼ぶことにする。また、部分列の定義から狭義単調増加性を除いたとき、広義部分列を呼ぶことにする。
広義部分列、添え字関数という名称はこの記事とその派生でのみ用いる名称であって全く一般的でないことに留意せよ。また明らかに部分列は広義部分列である。
(1)$a_n→\alpha\in\mathbb{R}\cup\lbrace ∞ \rbrace$のとき$\lbrace a_n \rbrace$の任意の広義部分列は添え字関数が∞へ発散するならば$\alpha$に収束する。
(2)$\lbrace a_n \rbrace$の有限個の広義部分列$f_1,f_2,...,f_m$がすべて同じ$\alpha\in\mathbb{R}$に収束し$\lbrace a_n \rbrace$=$\bigcup_{i = 1}^m f_i$を満たすとき元の数列$\lbrace a_n \rbrace$も$\alpha$に収束する。
(3)単調列は、添え字関数が∞へ発散するような収束広義部分列を含むならば収束しその広義部分列と同じ極限値を持つ。
(4)$a_n>0$かつ収束する部分列を持たないとする。このとき$a_n→∞$
(1)より添え字関数が発散する発散部分列を持つ数列は発散する。
数列の有限個の項を削除・追加あるいは値を変えて新たな数列をえたとする。これらの収束性は常に等しくなる。つまり、一方が収束すればもう一方も収束し、極限値は等しい。正または負の無限大、振動についても同様である。
実数には次のような性質がある。
以下の命題はすべて同値であり、成り立つ。
(1)(アルキメデスの原理)
$\forall a,b\in \mathbb{R}^+,\exists n\in\mathbb{N},s.t;an>b$
(2)
$ \lim_{n \to \infty}n=∞ $
(3)
$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{n}=0$
(4)
$\lim_{n \to \infty}2^n=∞$
(5)
$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2^n}=0$
(1)$\Longrightarrow$ (2)
任意に$\varepsilon\gt0$をとる。(1)の条件より$n_0\gt\varepsilon$となる自然数$n_0$が存在し、$n>n_0$ならば$n>\varepsilon$となり従う。
(2)$\Longrightarrow$(3)
任意に$\varepsilon\gt0$をとる。条件よりある自然数$n_0$が存在して$n>n_0$ならば$n>\frac{1}{\varepsilon}$すなわち$\left|\frac{1}{n}-0\right|<\varepsilon$となり従う。
(3)$\Longrightarrow$(4)
任意に$\varepsilon\gt0$をとる。(3)の条件よりある自然数$n_0$が存在して$n>n_0$ならば$\frac{1}{n}<\frac{1}{\varepsilon}$となり、任意の自然数$n$について$2^n>n$が帰納法で示せる(省略)ため$2^n>\varepsilon$となり従う。
(4)$\Longrightarrow$(5)
(2)$\Longrightarrow$(3)とほぼ同様。
(5)$\Longrightarrow$(1)
任意に正なる実数$a,b$をとる。
$\lbrace a_n \rbrace$がコーシー列であるとは、
$\forall \varepsilon \gt0, \exists N \in \mathbb{N} , \forall n,m \in \mathbb{N} ,[n,m \gt N \Longrightarrow \left| a_n - a_m \right| \lt \varepsilon ] $
が成り立つことをいう。
この定義から、収束する数列がコーシー列であることは容易に示される。これは例えば$\mathbb{Q}$でも成り立つことだが次の命題は$\mathbb{R}$でしか成り立たない。
論理式の対称性からわかるように$n>m$と制約をつけても同値である。また、命題10のようなものも成り立つ。
コーシー列は収束する。
$I_n≔[a_n,b_n](n\in\mathbb{N})$かつ$I_{n+1}\subset I_n$とする。このとき
$ \lim_{n \to \infty} (b_n-a_n)=0 \Longrightarrow \exists \alpha\in\mathbb{R},[ \lim_{n \to \infty} a_n= \lim_{n \to \infty} b_n=\alpha \land \bigcap_{n = 1}^∞ [a_n,b_n]=\lbrace \alpha \rbrace]$
次は$ZFC$における公理であり、以降無条件に用いることとする(主に(1),(2)を使う)。
次の命題はすべて同値である。
(1)(選択公理)
$I$を添え字集合(空でない集合のこと)とする集合族$\lbrace X_i \rbrace_{i\in I}$に対し直積を
$ \prod_{i\in I} X_i≔\lbrace f:I→ \bigcup_{i\in I} |\forall i\in I,f(i)\in X_i \rbrace$
と定義する。このとき次が成り立つ。
$ \forall i\in I,X_i≠ \varnothing\Longrightarrow \prod_{i\in I} X_i≠\varnothing$
(2)(ツォルンの補題)
帰納的全順序集合は極大元を持つ。
(3)(整列可能定理)
任意の集合はその上にある順序を定義して整列集合にすることができる。
以下の命題はすべて同値であり、成り立つ。
(1)(ワイエルシュトラスの公理)
空でない、上に有界な$\mathbb{R}$の部分集合は上限を持つ。
(1)'
空でない、下に有界な$\mathbb{R}$の部分集合は下限を持つ。
(2)(連続の公理)
上に有界な単調増加数列は収束する。
(2)'
下に有界な単調減少数列は収束する。
(3)(ボルツァーノワイエルシュトラスの定理)
有界実数列は収束部分列をもつ。
(4)
アルキメデスの原理かつ区間縮小法
(5)
アルキメデスの原理かつコーシーの収束条件
(6)(デデキントの公理)
$A,B\in\mathbb{R},A \cup B=\mathbb{R},A \cap B= \varnothing , \forall a\in A,\forall b\in B,a< b$とする(このような組$(A,B)$を$\mathbb{R}$の切断という)。このとき次のどちらか一方が成り立つ。
(a)$A$の最大元は存在するが$B$の最小元は存在しない
(b)$A$の最大元は存在しないが$B$の最小元は存在する
(2)において極限値はその数列全体の集合の上限であることが言える。(2)'も同様である。
次に上限、下限、最大値、最小値、上極限、下極限について述べる。
空でない$E\subset\mathbb{R}$と$a\in\mathbb{R}$について以下の命題はすべて同値である。
(1)$a$は$E$の最小上界である。
(2)次の二つが成り立つ。
(a)$\forall x\in E,x\leq a$
(b)$\forall c\in\mathbb{R}[c< a \Longrightarrow \exists x\in E , c< x]$
(3)$a$が$E$の上界であり、$x_n\in E$かつ$x_n→a$
これを満たす$a$は、最小値の一意性と(1)から、存在すれば一意であり、$a=\sup E$と書く。また、一般に$E\subset\mathbb{R}$に対し$\sup E=∞$⇔Eは空でなく、上に有界でない,$\sup E=-∞⇔$Eは空集合とし、任意の$E\in\mathbb{E}$に対し$\sup$を定義する。下限の場合も同様に$\inf E$とする。
$ \varnothing ≠S_1,S_2\subset\mathbb{R}$,$k\in\mathbb{R}$に対し
$S_1+S_2≔\lbrace x_1+x_2|x_i\in S_i \rbrace$,
$S_1S_2≔\lbrace x_1x_2|x_i\in S_i \rbrace$,
$kS_1≔\lbrace kx_1|x_1\in S_1 \rbrace$
と定義する。このとき実数の空でない部分集合全体は、上で定義された和と積で、加法単位元を$\lbrace 0 \rbrace$、乗法単位元を$\lbrace 1 \rbrace$とする可換環(ただし分配法則については片方の包含関係しか成り立たない)、スカラー場を実数体とし、$\lbrace 0 \rbrace$を零ベクトルとするベクトル空間(分配法則について同様である)となるように"思える"。
実際は実数の空でない部分集合全体は集合としては"大きすぎる"。ゆえに上の表現はあくまで可換環やベクトル空間の公理の各条件に対応する命題の成立を主張するものであることに注意されたい。実際に加法と乗法が定義されている訳でなく、また可換環でもベクトル空間でもない(考えることもできない)。
この定義のもとで次が成り立つ。
(1)$S_1\subset S_2$で$S_2$が上に有界のとき$S_1$も上に有界で
$\sup S_1\leq \sup S_2$
(2)$S_1,S_2$が上に有界のとき$S_1+S_2$も上に有界で
$\sup (S_1+S_2)=\sup S_1+\sup S_2$
(3)
(a)$k>0$のとき$S_1$が上に有界なら$kS_1$も上に有界で
$\sup kS_1=k\sup S_1$
(b)$k<0$のとき$S_1$が下に有界なら$kS_1$は上に有界で
$\sup kS_1=k\inf S_1$
上限があれば上限と最大値は一致するため、この命題は最大値の場合も含んでいることに注意。
上に有界な数列$\lbrace a_n \rbrace$に対し$\mathbb{R}$の空でない集合$A_n$を
$A_n=\lbrace a_n|\forall m\in \mathbb{N},m\geq n \rbrace$
で定義すると$A_n$は上に有界であるからワイエルシュトラスの公理より上限を持つ。また$A_n$の列の包含関係を考えれば数列$\lbrace A_n \rbrace$が単調減少数列であることは命題19(1)からわかる。これが下に有界のとき命題18(2)'より収束するため、次のように定義する。
(1)$\lbrace a_n \rbrace$が上に有界であり、$\lbrace \sup A_n\rbrace$が下に有界のとき
$ \limsup_{n\to\infty} a_n= \varlimsup_{n\to\infty} a_n= \lim_{n \to \infty} \sup A_n $
とおき、これを$\lbrace a_n \rbrace$の上極限という。
(2)$\lbrace a_n \rbrace$が上に有界であり、$\lbrace \sup A_n \rbrace$が下に有界でないとき、
$\limsup_{n\to\infty}a_n=-∞$と定める。
(3)$\lbrace a_n \rbrace$が上に有界でないとき、$\limsup_{n\to\infty}a_n=∞$と定める。
同様に下極限も$\liminf,\varliminf$を用いて定める。
$\alpha\in\mathbb{R}$に対し、以下はすべて同値である。
(1)$\limsup_{n\to\infty}a_n=\alpha$
(2)次が成り立つ。
(a)$\forall \varepsilon>0,\exists N\in\mathbb{N},\forall n\in\mathbb{N},[n\geq N \Longrightarrow a_n <\alpha + \varepsilon ]$
(b)$\forall\varepsilon>0,\forall n\in\mathbb{N},\exists N\in\mathbb{N},s,t;[N\geq n \land \alpha - \varepsilon< a_N]$
(3)次が成り立つ。
(c)$\lbrace a_n \rbrace$は上に有界である。
(d)$\lbrace a_{n_k}\rbrace$を$\lbrace a_n \rbrace$の収束する任意の部分列とすると、
$ \lim_{k \to \infty}a_{n_k}\leq \alpha$である。
(e)$\alpha$に収束する$\lbrace a_n \rbrace$のある部分列が存在する。
下極限も同様である。
(1)$\Longrightarrow$(a) 任意に$\varepsilon>0$をとると極限の定義よりある自然数$N$が存在して$n\geq N$ならば
$ \left| \sup A_n - \alpha \right|<\varepsilon $
$A_n$の定義から$\forall n\in\mathbb{N},a_n\leq\sup A_n$であるため、$n\geq N$のとき
$a_n\leq\sup A_n<\alpha +\varepsilon$
つまり
$ a_n<\alpha + \varepsilon$
となり従う。
(1)$\Longrightarrow$(c)
以下はすべて同値である。
(1)$\limsup_{n\to\infty}a_n=∞$
(2)$\forall M\in\mathbb{R},\forall n\in\mathbb{N},\exists N\in\mathbb{N},[N\geq n\land M< a_N]$
(3)∞に発散する$\lbrace a_n \rbrace$のある部分列が存在する。
下極限も同様である。
次の(1),(2)は同値である。
(1)$\lim_{n \to \infty}a_n$が存在する。
(2)$\limsup_{n\to\infty}a_n=\liminf_{n\to\infty}a_n$
このとき
$\lim_{n\to\infty}a_n=\limsup_{n\to\infty}a_n=\liminf_{n\to\infty}a_n$
(1),(2)の条件は$\pm$∞に発散する場合も含んでいる。以降、極限が存在すると言えば収束するか正または負の無限大へ発散することを言い、極限値が存在すると言えば収束することを言うことにする。また、(2)のような等式は、両辺ともに収束し、極限値が等しいか、両辺ともに正の無限大へ発散するか,両辺ともに負の無限大へ発散することを指すこととする。