単因子論を用いたジョルダン標準形の存在証明について,メモしておきます.基本的に『代数の基礎』1を参考にしています.
設定と準備
は代数閉体,は正の整数とする.のジョルダン標準形の存在を示す.が定める線形写像をで表す.
代数の準同型を用いてを加群とみなす.(.右辺は行列と列ベクトルの積.)
次の命題は線形代数において基本的:
上有限次元線形空間と,線形写像と線形同型写像があり,次の可換図式を満たすとする:
また,はの基底とする.
このとき,とおくと,はの基底であり,この基底に関するの表現行列と,に関するの表現行列は等しい.
特に,の表現行列がジョルダン標準形になるようなの基底が存在するとき,の表現行列がジョルダン標準形になるようなの基底も存在する.
加群準同型を考える
ここからしばらくは加群に関する議論を行う.出てくる準同型も加群の準同型であることに注意する.
およびの元で,番目の成分がで残りの成分がであるものをそれぞれと書く.をに移す加群の準同型を考える.
に対してとおく.このとき,はの加群としての基底である.(1命題3.2.20.)
さて,をに移す加群の準同型を考える.すると次の加群の系列が完全系列になる:
ここで,の基底に関する表現行列はとなる.上の完全系列により,加群としての同型がある.
単因子論を用いる
加群としての同型があることがわかったので,単因子論を用いてを調べていく.は加群の準同型である.はなので,成分の行列の表現行列)に対して単因子論を用いることができる.
単因子論により,が存在して,
となる.
行列が表す加群の準同型もそのままで表すとすると,加群としてとなる.
各に対して中国式剰余定理を用いることで,およびが存在して,
となる.(でもとは限らない.)
こうして,加群の同型が存在することがわかった.
線形写像に移る
ここで加群の話から線形空間の話に移る.このパートが重要.
は加群の準同型なので,とに対して,
が成立する.これは,写像
をと書き,写像
をと書くことにすると,次の可換図式が成立するということである:
ここでの場合を考える.
今,に対して,であるから,.よって,次の可換図式を得る:
ここで,は線形写像であり,は加群の同型でもあったが線形同型でもあることに注意する.(これが重要!)よって命題1により,の表現行列がジョルダン標準形になるようなの(上の)基底を見つければいいことがわかる.
を調べる
は,各に対する
を集めたものであるから,の表現行列がジョルダン細胞になることを見れば十分である.の基底に対するの表現行列は次の通りサイズのジョルダン細胞になる:
こうしてたちの基底を集めての基底とすれば,のその基底に関する表現行列はを斜めに並べたものになり,ジョルダン標準形である.
よって命題1によりの基底をうまく取れば,の表現行列をジョルダン標準形にできることがわかった.これは,正則行列が存在してがジョルダン標準形になることを意味する.