体$K$と$K$-線型空間$V$が与えられたとき、$V$の$K$-自己準同型($K$-線型写像$V\to V$のこと)全体を$\mathrm{End}_K(V)$と表すと、これは各点の和と合成に関して(非可換な)環をなします. この環が与えられたときに、元の$V$が復元できる条件について考えます.
次の定理を示します.
$K, L$を体とする.
(有限次元とは限らない)$K$-線型空間$V$と$L$-線型空間$W$に対し、次の(1), (2)のいずれかが成り立つことは$\mathrm{End}_K(V)$と$\mathrm{End}_L(W)$が環同型であるための必要十分条件.
$\mathrm{End}_K(V)$には、$fg=f\circ g$で積構造が入っています.
$K$を体、$V$を次元が$1$以上の$K$-線型空間、$f$を$\mathrm{End}_K(V)$の元とする.
このとき任意の$x\in V$に対し$f(x)\in\mathrm{Span}_K(\{x\})$なのであれば、$f\in K$である.
$a\in K$に対し、$a$の$V$への作用として得られる写像を$a$と同一視し、$K\subseteq \mathrm{End}_K(V)$とみなしていることに注意します.
$V$の基底$B$がとれる. $x\in B$に対し、$f(x)=a_xx$となる$a_x \in K$がとれる. $a_x\neq a_{x'}$なる$x, x'\in K$がとれたとすると、$f(x+x')=f(x)+f(x')=a_xx+a_{x'}x'\notin \mathrm{Span}_K(\{x+x'\})$で矛盾. よって$f$はスカラーであり、$f\in K.$
体$K$と$K$-線型空間$V\neq \{0\}$に対し、
$\mathrm{Z}(\mathrm{End}_K(V))=K.$
ただし、$\mathrm{Z}(\mathrm{End}_K(V))$で環$\mathrm{End}_K(V)$の中心環を表している.
$\mathrm{Z}(\mathrm{End}_K(V))$を$Z$で表すことにする.
$\mathrm{End}_K(V)$の定義より$K\subseteq Z$であるので、$f\in Z$を任意にとり$f\in K$を示す.
$x, f(x)$が線型独立となるような$x\in V$がとれたとする. このとき$x, f(x)$はともに$0$でないことに注意する. $x, f(x)$を$V$の基底に延長することで$g(x)=x, g(f(x))=0$となる$g\in \mathrm{End}_K(V)$をとることができるが、$f\circ g(x)=f(x)\neq 0=g\circ f(x)$なので$fg\neq gf$. これは$f\in Z$に反する.
よって任意の$x\in V$に対し$f(x)\in\mathrm{Span}_K(\{x\})$であり、補題2より$f\in K.$
$K$を体、$V$を$K$-線型空間とする. $\mathrm{End}_K(V)$の単項生成右イデアル全体を$\mathcal{I}$で表し、$\mathcal{I}$を包含関係に関して順序集合とみなす. また、$V$の部分空間全体が包含関係に関してなす順序集合を$\mathcal{S}$で表す.
このとき、$\mathcal{I}$と$\mathcal{S}$は順序同型である.
$F:\mathcal{I}\to\mathcal{S}$を$F(I)=\sum_{f\in I}\Im(f)$で定める. このとき、$f\in\mathrm{End}_K(V)$に対し$F(f\cdot\mathrm{End}_K(V))=\Im(f)$であることに注意すると、$f, g\in\mathrm{End}_K(V)$に対し$g\in f\cdot\mathrm{End}_K(V)\iff \Im(g)\subseteq \Im(f)$であることを示せばよい. $\Rightarrow$は明らかなので逆向きの含意を示す.
$f, g\in\mathrm{End}_K(V)$と$\Im(g)\subseteq \Im(f)$を仮定する. $\mathrm{Ker}(g)\subseteq V$の補空間$W\subseteq V$と、$\mathrm{Ker}(f)\subseteq V$の補空間$U\subseteq V$がとれる. このとき$g|_W:W\to\Im(g), f|_U:U\to\Im(f)$は同型である. $h\in\mathrm{End}_K(V)$を$h|_W=(f|_U)^{-1}\circ g|_W, h[\mathrm{Ker}(g)]\subseteq \{0\}$で定めると$g=fh$である. したがって、$g\in f\cdot\mathrm{End}_K(V)$である.
補題4の設定において、
ただし、基数$\kappa$に対し$\kappa^+$で$\kappa$より大きい基数のうち最小のものを表しています.
$\dim_K(V)$を$\kappa$とおくと、$V$の基底$x_\alpha\in V:\alpha<\kappa$がとれる. $f:\kappa+1\to\mathcal{S}$を$f(\alpha)=\mathrm{Span}_K(\{x_\xi:\xi<\alpha\})$で定めると、これは順序埋め込み.
順序埋め込み$g:\kappa^++1\to \mathcal{S}$があったとする. 各$\alpha<\kappa^+$に対し$y_\alpha\in g(\alpha+1)\setminus g(\alpha)$がとれる. $y_\alpha\in V:\alpha<\kappa$が線型従属なのであれば、ある$\alpha<\kappa^+$に対し$y_\alpha$は$y_\beta\in g(\alpha):\beta<\alpha$の線型和でかけることになるが、これは$y_\alpha\notin g(\alpha)$に反する. したがって$y_\alpha:\alpha<\kappa^+$は線型独立だが、これは$\dim_K(V)=\kappa$に反する.
(1)が成り立っているとき、$\mathrm{End}_K(V), \mathrm{End}_L(W)$はともに零環なので同型である.
以降(2)の成立を仮定する. $\dim_K(V)=\dim_L(W)=\kappa$とする. また、体同型$\varphi:K\to L$がとれるので固定する. $a\in K, x\in W$に対し$a\cdot x=\varphi(a)x$とすると、この作用と元々のAbel群構造に関して$W$は$K$-線型空間になる(確かめよ). $W$の$L$-基底は$K$-基底でもあるため、$K$-線型空間として$V$と$W$は同型で、$\mathrm{End}_K(V)\cong\mathrm{End}_K(W).$ さらに$\mathrm{End}_K(W)$は写像の集合として$ \mathrm{End}_L(W)$と一致するため、$\mathrm{End}_K(V)\cong\mathrm{End}_L(W).$
$\mathrm{End}_K(V)\cong\mathrm{End}_L(W)$と仮定する. $\dim_K(V)$と$\dim_L(W)$のどちらかが$0$であるときは(1)が成立するので、以降ともに$0$でないとして考える.
このとき、補題3より$K\cong\mathrm{Z}(\mathrm{End}_K(V))\cong\mathrm{Z}(\mathrm{End}_L(W))\cong L$である.
$\mathrm{End}_K(V), \mathrm{End}_L(W)$の単項生成右イデアル全体のなす集合をそれぞれ$\mathcal{I}_V, \mathcal{I}_W$で表すことにする. $\mathrm{End}_K(V)\cong\mathrm{End}_L(W)$より$\mathcal{I}_V, \mathcal{I}_W$は順序同型である. 補題4、補題5より
であることと合わせると$\dim_K(V)=\dim_L(W)>0.$
体$K, L$と自然数$n, m$に対し、次の(1), (2)のいずれかが成り立つことは行列環$M_n(K)$と$M_m(L)$が環同型であるための必要十分条件.
$M_n(K)\cong \mathrm{End}_K(K^n), M_m(L)\cong\mathrm{End}_L(L^m)$なので、定理1からしたがう.
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