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正弦関数はいつも周期的なのか?

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$$\newcommand{bm}[0]{\boldsymbol} \newcommand{o}[2]{\ordi{#1}{#2}{}} \newcommand{ok}[2]{\ordi{}{#1}{#2}} \newcommand{ordi}[3]{\frac{d #1^{#3}}{d #2^{#3}}} \newcommand{p}[2]{\part{#1}{#2}{}} \newcommand{part}[3]{\frac{\partial #1^{#3}}{\partial #2^{#3}}} \newcommand{pk}[2]{\part{}{#1}{#2}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{Res}[0]{\operatorname{Res}} $$

はじめに

どうもこんにちは、🐟🍊みかん🍊🐟です。今回は、正弦関数はいつでも周期的なのか?ということについて語っていきたいと思います。ここでは三角関数を冪級数

$$ \sin x:=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}x^{2n+1} $$

で定義される級数関数とします。これは実数の範囲において周期的であることがよく知られていますが、この冪級数は実数の範囲外においても、例えば複素数の範囲においても定義することができます。また実数の拡大体以外においてもこの冪級数が収束する範囲においてもは定義することができ、今回はその一つの例として$p$進解析におけるこの冪級数の挙動を調べていこうと思います。なおこの記事では、試験的に数学的な部分を普段の数学をする口調で書いていこうと思います。

僕は$p$進解析に関しては全くの初心者です。

複素解析

複素解析における三角関数の周期性は周知であろうが,念のため示しておくのである.まずは次の積分を考察する.

$$ \operatorname{log}z=\int_1^z\frac1tdt $$

ここに,$z$は任意の複素数値としてみる.被積分関数は$t=0$以外において正則であり,$t=0$において留数$1$の一位の極を持つのはほとんど明らかである.従って積分路が原点を何周するかに応じて

$$ \operatorname{log}z=\int_1^u\frac1tdt+2ni\pi\qquad \lvert\arg u\rvert<\frac\pi2, u=z $$

記法に多少の問題はあろうが,意味するところは明白であろう.要するに「対数の切断線」を負の実軸にとったのである.Cauchyの積分定理より被積分関数が正則なる領域において任意に積分路を変更してもよいから,

\begin{aligned} \log z=\int_1^{|u|}\frac1tdt+\int_{|u|}^u\frac1tdt+2ni\pi \end{aligned}

のようになる.第一項は通常の実数の範囲における自然対数に一致し,第二項についても$t=e^s$のように変数置換することによって

$$ \int_{|u|}^u\frac1tdt=i\operatorname{Arg}u $$

となるから,偏角の多価性を表示に織り込めば

$$ \log z=\ln|z|+i\arg z $$

のようになる.(積分の表示から明らかであるように)対数関数と指数関数が逆関数にあることに注意すれば,次の表記を得る.

$$ e^{z+i\arg z}=e^z\quad\therefore e^{i\arg z}=1 $$

$z$は任意の複素数値を動くから,結局指数関数$e^{iz}$$z$に関して$2\pi$の周期をもつ.逆に他に周期をもたない.また級数変形によって容易に得られるEulerの公式

$$ e^{ix}=\cos x+i\sin x $$

を変形することによって

$$ \sin x=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i} $$

を得るから,即ち正弦関数は$2\pi$を周期にもつ.この論理を逆にたどることによって正弦関数は他の基本周期は持たないこともわかる.

$p$進解析において

複素数値に関する収束に関しては収束半径が無限大であることがよく知られていたために収束半径の計算を省略したが,$p$進解析における結果を既知とするのは無理があろう.さして収束半径を求めていく必要がある.

収束域を求める

様々な方法があるが,ここではCauchy-Hadamardの収束判定法を用いる.収束半径を$R$とすれば,$p$進ノルムの定義により

\begin{aligned} \frac1R&=\limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{\left\lvert\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}\right\rvert_p}\\ &=\limsup_{n\to\infty}\frac1{\sqrt[n]{\lvert{(2n+1)!}\rvert_p}}\\ &=\limsup_{n\to\infty}p^\frac{\operatorname{ord}_p((2n+1)!)}{n} \end{aligned}

となる.ここに$s_p$$p$進法展開した時の各桁の和とすれば, 有名な結果(リンク先の補題) を用いることで

$$ \operatorname{ord}_p((2n+1)!)\le\frac{2n+1}{p-1} $$

となる.また$n=a_0+a_1p+\dots+a_rp^r$とすれば

$$ \operatorname{ord}_p((2n+1)!)\ge\frac{n-(r+1)(p-1)}{p-1}=\frac n{p-1}-(r+1) $$

となり,また$r$のとり方から$r\le\log_p n\le r+1$であるから

$$ \frac n{p-1}-(\log_p n+1)\le\operatorname{ord}_p((2n+1)!)\le\frac{2n+1}{p-1} $$

ここで両辺$n$で割って$n\to\infty$とすることにより,挟み撃ちの原理によって初めの極限を求めることができて,

$$ R=p^{-\frac1{p-1}} $$

と求められる.以後は二つの場合に帰する.

$p=2$の場合

このとき,$R=\frac12$であって,境界上の点$x\in2\mathbb Z_2$においては

$$ \left\lvert\frac{x^{2n+1}}{(2n+1)!}\right\rvert_2=2^{s_2(2n+1)} $$

なるが,これは$2^k=2n+1$とせばこれは$\frac12$に等しくなるから,これは収束しない.よって収束域は$4\mathbb Z_2$となる.

$p>2$のとき

このときは$p^{-1}< R<1$となるから,$p\mathbb Z_p$で収束する.

以上によって収束域$C_p$

$$ C_p=\begin{cases}4\mathbb Z_2&p=2\\p\mathbb Z_p&p>2\end{cases} $$

となる.

周期性

結論から述べると,正弦関数は$p$進関数として解釈すると周期性を持たない.実は$p$新解析においては次の主張が成立することが知られている.

冪級数がもつ零点は高々有限個である.

この主張を承認すれば,我々は簡単な議論によって正弦関数が周期をもたないことが言える.実際にある周期$\lambda$を持つとせば,$\sin 0=0$であるから$\sin x$$x\in\lambda\mathbb Z_p$を零点に持つはずであるが,これは先の命題に反する.従って三角関数は周期関数ではありえないのである.では先の命題を証明することとする.

収束域が$\mathbb Z_p$であるとして一般性を失わないから,$\mathbb Z_p$を収束域とする冪級数

$$ f(x)=\sum_{n=0}^\infty a_nx^n $$

を考察すればよい.$p\in\mathbb Z_p$であるから

$$ a_np^n\to0\qquad(n\to\infty) $$

であって,即ちある自然数$N$があって

$$ \begin{cases} \lvert a_Np^N\rvert_p=\sup_n\lvert a_np^n\rvert_p\\\forall n>N \ \mathrm{s.\!t.}\ \lvert a_np^n\rvert_p<\sup_n\lvert a_Np^N\rvert_p \end{cases} $$

とすることができる.ここで$f(x)$$n+1$個の零点が存在するものとし,その一つを$\alpha$とすれば,級数変形によって

\begin{aligned} f(x)&=f(x)-f(\alpha)\\ &=(u-\alpha)\sum_{n=1}^\infty\sum_{m=0}^{n-1}a_np^nx^m\alpha^{n-1-m}\\ &=(u-\alpha)\sum_{m=0}^\infty\left(\sum_{k=0}^\infty a_{m+1+k}p^{m+1+k}\alpha^k\right)x^m \end{aligned}

となるので,最右辺の級数部分を$f_1(x)$とすればこれは仮定より$N$個の零点を持つ.また$N$のとり方から$m\ge0$に対して

\begin{aligned} \left\lvert\sum_{k=0}^\infty a_{m+1+k}p^{m+1+k}\alpha^k\right\rvert_p&\le\sup_{k\ge0}\left\lvert a_{m+1+k}p^{m+1+k}\right\rvert_p\\ &\le \left\lvert a_Np^N\right\rvert_p \end{aligned}

となるので,等号成立条件$m=N-1$に注意すれば$f_1$のTaylor展開の級数は$f$と同様の性質をもつ.よって同様の操作を$N$回繰り返すことにより,次の性質をもつ関数$f_N$を作ることができる.

\begin{cases} f_N(x)=\sum_{k=0}^\infty k_nx^n \text{は零点を一つは持つ.}\\ \forall n>0\ \mathrm{s.\!t.}\ \lvert k_n\rvert_p<\lvert k_0\rvert_p \end{cases}

ここで$f_N$の零点の一つを$\beta$とすれば
\begin{aligned} \lvert k_0\rvert_p=\left\lvert \sum_{k=1}^\infty k_n\beta^n\right\rvert_p\le\sup_{n\ge1}\left\lvert k_n\beta^n\right\rvert_p<\lvert k_0\rvert_p \end{aligned}

となって,矛盾.以上により初望の命題を得るのである.

おわりに

いかがだったでしょうか。僕は$p$進解析に関しては全くの素人なので証明に関してつまらないミスをしている可能性もあるので、そのようなものがあれば教えていただけると助かります。

本稿で紹介した命題自体はとある方と数学について語っているときに知ったもので、その事実をうまく使ってこの記事を書こうと思った次第です。証明の方法の大まかな部分も彼の人の手法に依っていて、個人的には「正しそう」だと感じたので、この事実を使って記事を書いてみました。少しでも楽しめたのであれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

投稿日:202382

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