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東大数理院試過去問解答例(2017B04)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2017B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2017B04

整数$m\geq2$を取り、体$L=\mathbb{C}(X,Y)$とその部分体$K=\mathbb{C}(X^mY^m,X^m+Y^m)$を考える。

  1. 拡大$L/K$はGalois拡大であることを示し、その拡大次数$[L:K]$を求めなさい。
  2. ある$a\in\mathbb{C}$を用いて$K(X+aY)$と表せるような$L/K$の中間体の個数を求め、このような体に対応する$G=\mathrm{Gal}(L/K)$の部分群を全て求めなさい
  3. $m$次斉次対称式$f$について$K':=K(f(X,Y))$とおく。拡大$K'/K$がガロア拡大になるような$f$を全て挙げなさい。
  1. 多項式$F(T)=(T^m-X^m)(T^m-Y^m)$を考えると、$L$$K$$F$の最小分解体なので、特にGaloisである。また$S=\mathbb{C}(X^m,Y^m)$$K$$2$次拡大であり、$L$$S$$m^2$次拡大であるから、$\color{red}[L:K]=2m^2$である。
  2. ここで$\sqrt[m]{1}$の生成元$\zeta$を一つ固定し$G$の元$\tau_{i,j}$
    $$ \tau_{i,j}(X)=\zeta^iX,\tau(Y)=\zeta^jY $$
    によって、$\sigma_{i,j}$
    $$ \sigma_{i,j}(X)=\zeta^iY,\sigma_{i,j}(Y)=\zeta^jX $$
    によって定義する。ここで$X+aY$$\tau_{i,j}$によって固定されるとすると、$(i,j)=(0,j)$かつ$a=0$の場合と$(i,j)=(0,0)$の場合しかない。一方$\sigma_{i,j}$によって固定されているとすると、$(i,j)=(i,-i)$かつ$a=\zeta^i$の場合しかない。以上から$K(X+aY)$が非自明な中間体になっているのは$a=0,1,\zeta,\zeta^2,\cdots,\zeta^{m-1}$の場合であり、これらはいずれも相異なる体を定めているから、所望の体は$\color{red}m+1$個である。またそれぞれに対応する$G$の部分群は$a=0$の場合は
    $$ \color{red}\{\tau_{0,j}|j=0,\cdots m-1\} $$
    であり、$a=\zeta^i$の場合は
    $$ \color{red}\{\sigma_{i,-i},\mathrm{id}\} $$
    である。
  3. 初めに$K(f)$の元は対称式であることから、これが$K$上ガロアであるために$\tau_{0,1}$による作用でも対称性を保つ必要がある。いま$m$次斉次多項式
    $$ f=c_0(X^m+Y^m)+c_1(X^{m-1}Y+XY^{m-1})+\cdots $$
    $\tau_{0,1}$による作用は
    $$ sf=c_0(X^m+Y^m)+c_1(\zeta X^{m-1}Y+\zeta^{-1} XY^{m-1})+c_2(\zeta^2 X^{m-2}Y^2+\zeta^{-2}X^2Y^{m-2})\cdots $$
    であるから、これが対称式になるためには任意の$i=1,\cdots,[\frac{m}{2}]$に対して
    $$ c_i=0 $$
    $$ \zeta^{2i}=1(\Leftrightarrow 2i=m) $$
    のいずれかが満たされる必要がある。よって$f$としてあり得るものは
    $$ f=a(X^m+Y^m) $$
    $$ f=b(X^m+Y^m)+c(XY)^{\frac{m}{2}} $$
    の場合のいずれかである。但し$c=0$は前者の場合に含まれるから$c\neq0$とする。前者の場合$K(f)=K$であるから$K$上ガロアであり、後者の場合$K(f)=K(X^\frac{m}{2}Y^{\frac{m}{2}})$$K$$T^2-X^mY^m$の最小分解体なので$K$上ガロアである。以上から$m$が奇数のときは複素数$c\in\mathbb{C}^\times$を用いて${\color{red}c(X^m+Y^m)}$と表せるもので尽くされ、$m$が偶数のときは少なくとも一方が$0$でない複素数$c,d\in\mathbb{C}$を用いて${\color{red}c(X^m+Y^m)+d(XY)^\frac{m}{2}}$と表せるもので尽くされる。
投稿日:224
更新日:84
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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