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東大数理院試過去問解答例(2015B05)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2015B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2015B05

$X=\mathbb{R}^3\backslash\{0\}$とおく。$X$上の$C^\infty$級関数$f$はある$1$変数関数$h$を用いて$f(x,y,z)=h(r)$と表されるとする。但し$r=\sqrt{x^2+y^2+z^2}$である。$X$上の$1$次形式$\omega$
$$ \omega=f(x,y,z)(xdx+ydy+zdz) $$
と定義する。

  1. $\omega$$X$上閉形式であることを示しなさい。
  2. $\omega$$X$上完全形式であることを示しなさい。
  3. ある調和関数$\varphi$を用いて$\omega=d\varphi$と書けるとき、$f$としてあり得るものを全て挙げなさい。但し調和関数とは
    $$ \Delta \varphi:=\frac{\partial^2 \varphi}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 \varphi}{\partial y^2}+\frac{\partial^2 \varphi}{\partial z^2}=0 $$
    を満たす$X$上の$C^2$級関数を指す。
  1. 関数$H:\mathbb{R}_{>0}\to\mathbb{R}$を積分
    $$ H(r)=\frac{1}{2}\int_0^{r^2}h(s)ds $$
    とおく。このとき
    $$ d(H(r))=h(r)xdx+h(r)ydy+h(r)zdz=f(xdx+ydy+zdz) $$
    であるから完全形式であり、特に閉形式である。
  2. (1)で既に示した
  3. まず$F(x,y,z)=H(r^2)$とおく。このとき$d(F-\varphi)=0$になっているから、$F(x,y,z)=\varphi(x,y,z)$が従う。ここで
    $$ \frac{\partial F}{\partial x}=2xh(r) $$
    $$ \frac{\partial^2 F}{\partial x^2}=2h(r)+h'(r)\frac{2x^2}{r} $$
    であることから
    $$ \Delta F=2(3h(r)+h'(r)) $$
    が従う。これが$0$になるには$h(r)=C\exp(-{3}r)$であることが必要充分なので、これによって$f$は定数$C$を用いて
    $$ {\color{red}f=C\exp(-3\sqrt{x^2+y^2+z^2})} $$
    と表される関数であることがわかる。
投稿日:811

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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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