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科学大数学院試過去問解答例(2024午後04)

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ここでは科学大数学系の修士課程の院試の2024午後04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2024午後04

$3$次元球面$S^3=\{(x_1,x_2,x_3,x_4)\in\mathbb{R}^4|x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2=1\}$上の点$p_N=(0,0,0,1),p_S=(0,0,0,-1),q_1=(0,0,1,0),q_2=\left(0,\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},0\right)$を考える。ここで$S^3$の部分集合
$$ X=\{(x_1,x_2,x_3,x_4)\in S^3|x_1x_2x_3=0\} $$
とおき、$\mathbb{R}^4$の位相から定まる部分位相をいれる。

  1. $X\backslash\{p_N,p_S\}$及び$X$の整係数ホモロジー群を求めなさい。
  2. $X\backslash\{q_1\}$及び$X\backslash\{q_2\}$$2$次ホモロジー群は$0$でないことを示しなさい。
  3. $X$から$X$への同相による$p_N$の像は$p_N$$p_S$に限られることを示しなさい。
  1. $X$の部分集合$Y_{ij}=\{(x_1,x_2,x_3,x_4)\in X|x_i=x_j=0\}$をとり、$Y=\bigcup_{i,j\in\{1,2,3\}}Y_{i,j}$とおき、$Z=X\backslash Y$とおく。このとき$Y$に少し厚みを持たせた図形と$Z\backslash\{p_N,p_S\}$は内部が$X\backslash\{p_N,p_S\}$の被覆になっているからMayer-Vietoris完全列
    $$ \begin{array}{cccccc} &&\cdots&\to&0&\to\\ 0&\to&0&\to&H^1(X\backslash\{p_N,p_S\},\mathbb{Z})&\to\\ \mathbb{Z}^{24}&\to&\mathbb{Z}^{18}&\to&\mathbb{Z}&\to&0 \end{array} $$
    が得られる。以上から
    $$ \color{red}H_i(X\backslash\{p_N,p_S\})=\begin{cases} \mathbb{Z}&(i=0)\\ \mathbb{Z}^{7}&(i=1)\\ 0&(\textsf{if else}) \end{cases} $$
    である。次に$X\backslash\{p_N\}$及び$X\backslash\{p_S\}$は可縮であるからMayer-Vietoris完全列
    $$ \begin{array}{cccccc} \cdots&\to&0&\to&H^2(X,\mathbb{Z})&\to\\ \mathbb{Z}^7&\to&0&\to&H^1(X,\mathbb{Z})&\to\\ \mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}^2&\to&\mathbb{Z}&\to&0 \end{array} $$
    が得られる。以上から$$ \color{red}H_i(X)=\begin{cases} \mathbb{Z}&(i=0)\\ \mathbb{Z}^{7}&(i=2)\\ 0&(\textsf{if else}) \end{cases} $$
    である。
  2. より一般に任意の$q\in X\backslash\{p_N,p_S\}$について$H_2(X\backslash\{q\})\neq0$であることを示す。まず$q\notin Y$の場合を考える。このとき$q$の近傍$U_q$$D^2$と同相になるようなものをとる。このときMayer-Vietoris完全列
    $$ \begin{array}{cccccc} &&\cdots&\to&0&\to\\ 0&\to&H_2(X\backslash\{q\},\mathbb{Z})&\to&\mathbb{Z}^7&\to\\ \mathbb{Z}&\to&H_1(X\backslash\{q\},\mathbb{Z})&\to&0&\to\\ \mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}^2&\to&\mathbb{Z}&\to&0 \end{array} $$
    が得られる。ここから$H_2(X\backslash\{q\},\mathbb{Z})\neq0$が従う。次に$q\in Y$の場合を考える。このとき$q$の近傍$U_q$$D^2$とホモトピー同値になり、$U_q\backslash\{q\}$が二つの単位円の和集合$A=\{(x,y,z)=1|x^2+y^2-1=z=0\}\cup\{(x,y,z)|x=y^2+z^2-1=0\}$とホモトピー同値であるようなものをとる。この整係数ホモロジー群は$H_1(A,\mathbb{Z})=\mathbb{Z}^3$を満たすから、前半の議論と同様にMayer-Vietoris完全列
    $$ \begin{array}{cccccc} &&\cdots&\to&0&\to\\ 0&\to&H_2(X\backslash\{q\},\mathbb{Z})&\to&\mathbb{Z}^7&\to\\ \mathbb{Z}^3&\to&H_1(X\backslash\{q\},\mathbb{Z})&\to&0&\to\\ \mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}^2&\to&\mathbb{Z}&\to&0 \end{array} $$
    が得られる。ここから$H_2(X\backslash\{q\},\mathbb{Z})\neq0$が従う。
  3. 同相$f:X\to X$が存在するとき$H_2(X\backslash\{p\},\mathbb{Z})\simeq H_2(X\backslash\{f(p)\},\mathbb{Z})$でなければならない。よって$X\backslash\{p_N\}$$X\backslash\{p_S\}$の可縮性及び(2)より$f(p_N)$としてあり得るのは$p_N,p_S$のみである。
投稿日:411
更新日:104

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