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東大数理院試過去問解答例(2023A04)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2023A04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです

2023A04

写像$f:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n$が等長変換であるとは、任意の$x,y\in\mathbb{R}^n$に対して
$$ |x-y|=|f(x)-f(y)| $$
が成り立つことを指す。等長変換の族$\{f_k:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n\}_{k=0}^\infty$は、任意の$k$に対して
$$ |f_k(0)|\leq1 $$
を満たしているとする。以下の問いに解答しなさい。

  1. $x\in\mathbb{R}^n$を一つ固定する。$\{f_k(x)\}_{k=0}^\infty$は収束部分列を持つことを示しなさい。
  2. $\{f_k\}$の適切な部分列をとれば、ある等長変換$f$に広義一様収束することを示しなさい。
  1. $\{f_k\}$の部分列$\{f_{n(k)}\}$及び等長変換$f$を(2)で取ったようにとる。このとき$\{f_k\}$$f$に広義一様収束するから、特に各点収束する。よって(1)が従う。
  2. 定理から、直行行列の列$\{A_k\in O_n(\mathbb{R})\}$とノルム$\leq1$のベクトル列$\{v_k\in\mathbb{R}^n\}$が存在して、任意の$x\in\mathbb{R}^n$に対して
    $$ f_k(x)=T_kx+v_k $$
    を満たしている。まず$|f_k(0)|\leq1$の仮定から$\{v_k\}_{k=0}^\infty$の収束部分列$\{v_{m(k)}\}_{k=0}^\infty$を取ることができる。そして$\{T_{m(k)}\}_{k=0}^\infty$の収束部分列$\{T_{n(k)}\}_{k=0}^\infty$を取る。
    $$ T:=\lim_{k\to\infty}T_{n(k)} $$
    $$ v:=\lim_{k\to\infty}v_{n(k)} $$
    $$ f(x):=Tx+v $$
    とおく。直行性は極限をとる操作で安定なので、$f$は等長変換である。ここで$x$をノルム$N$以下の任意のベクトルとすると、
    $$ \begin{split} |f(x)-f_k(x)|&=\left|(T-T_{n(k)})x+(v-v_{n(k)})\right|\\ &\leq \left|x\det(T-T_{n(k)})\right|+\left|v-v_{n(k)}\right|\\ &\leq N\left|\det(T-T_{n(k)})\right|+\left|v-v_{n(k)}\right|\\ \end{split} $$
    であるから、任意の正の実数$\varepsilon$に対して$k$の充分大きく取れば、ノルム$\leq N$の任意の$x$に対して$|f_k(x)-f(x)|<\varepsilon$を満たすことがわかる。以上から$\{f_{n(k)}\}$は等長変換$f$に広義一様収束することが分かった。

$\mathbb{R}^n$から$\mathbb{R}^n$への等長変換は、直交行列$T$及びベクトル$v$を用いて
$$ f(x)=Tx+v $$
と表せるものに限る。

 等長変換性は平行移動の合成で安定なので、$f(0)=0$なる等長変換が直交行列$T$を用いて$f(x)=Tx$と表せるものに限ることを示せば充分である。
 まずは$f$の等長性から
$$ \begin{split} f(x)\cdot f(y)-x\cdot y&=\frac{1}{2}\left|f(x)-f(y)\right|^2-\frac{1}{2}|x-y|^2\\ &=\frac{1}{2}\left|x-y\right|^2-\frac{1}{2}|x-y|^2&=0\\ \end{split} $$
である。これにより$f$は直交基底を直交基底に移すことが分かる。特に二つのベクトル$v,w$が等しいことを示すためには、標準基底を$e_1,\cdots,e_n$と置いたとき、任意の$i$に対して$v\cdot f(e_i)=w\cdot f(e_i)$であることを示せば良い。
 次に上の議論を用いて線型性を示す。任意の$s,t\in\mathbb{R}$$x,y\in\mathbb{R}^n$に対して
$$ \begin{split} f(sx+ty)\cdot f(e_i)&=(sx+ty)\cdot e_i\\ &=sx\cdot e_i+ty \cdot e_i\\ &=sf(x)\cdot f(e_i)+tf(y)\cdot f(e_i)\\ &=\left(sf(x)+tf(y)\right)\cdot f(e_i) \end{split} $$
であるから$f$の線型性が従う。よって行列$T$を用いて$f(x)=Tx$と表せる。
 最後に$T$が直交行列であることを示す。$T=(t_1,\cdots,t_n)$と置くと、任意の$i,j$に対して
$$ t_i\cdot t_j=Te_i \cdot Te_j=e_i\cdot e_j=\delta_{ij} $$
であるから、$T$は直交行列である。
 以上で所望の結果が得られた。

投稿日:2日前
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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