ここでは東大数理の修士課程の院試の2023A04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです
写像$f:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n$が等長変換であるとは、任意の$x,y\in\mathbb{R}^n$に対して
$$
|x-y|=|f(x)-f(y)|
$$
が成り立つことを指す。等長変換の族$\{f_k:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n\}_{k=0}^\infty$は、任意の$k$に対して
$$
|f_k(0)|\leq1
$$
を満たしているとする。以下の問いに解答しなさい。
$\mathbb{R}^n$から$\mathbb{R}^n$への等長変換は、直交行列$T$及びベクトル$v$を用いて
$$
f(x)=Tx+v
$$
と表せるものに限る。
等長変換性は平行移動の合成で安定なので、$f(0)=0$なる等長変換が直交行列$T$を用いて$f(x)=Tx$と表せるものに限ることを示せば充分である。
まずは$f$の等長性から
$$
\begin{split}
f(x)\cdot f(y)-x\cdot y&=\frac{1}{2}\left|f(x)-f(y)\right|^2-\frac{1}{2}|x-y|^2\\
&=\frac{1}{2}\left|x-y\right|^2-\frac{1}{2}|x-y|^2&=0\\
\end{split}
$$
である。これにより$f$は直交基底を直交基底に移すことが分かる。特に二つのベクトル$v,w$が等しいことを示すためには、標準基底を$e_1,\cdots,e_n$と置いたとき、任意の$i$に対して$v\cdot f(e_i)=w\cdot f(e_i)$であることを示せば良い。
次に上の議論を用いて線型性を示す。任意の$s,t\in\mathbb{R}$と$x,y\in\mathbb{R}^n$に対して
$$
\begin{split}
f(sx+ty)\cdot f(e_i)&=(sx+ty)\cdot e_i\\
&=sx\cdot e_i+ty \cdot e_i\\
&=sf(x)\cdot f(e_i)+tf(y)\cdot f(e_i)\\
&=\left(sf(x)+tf(y)\right)\cdot f(e_i)
\end{split}
$$
であるから$f$の線型性が従う。よって行列$T$を用いて$f(x)=Tx$と表せる。
最後に$T$が直交行列であることを示す。$T=(t_1,\cdots,t_n)$と置くと、任意の$i,j$に対して
$$
t_i\cdot t_j=Te_i \cdot Te_j=e_i\cdot e_j=\delta_{ij}
$$
であるから、$T$は直交行列である。
以上で所望の結果が得られた。