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東大数理院試過去問解答例(2019B03)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2019B03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

わたしはGalois理論は好きなのですが、実際に取り扱うのは非常に苦手で、例えばGalois拡大でないものをGalois拡大として取り扱ったり、Galois拡大のGalois拡大はGalois拡大だと平気で口走ったり、そもそも群論ができていなかったりとだいたいどこかで致命的な間違いを犯します。なのでこの解答も答えが正しくなかったり、そもそも途中の議論に致命的な間違いがあったりする可能性が高いので、ご覧になる際は注意深く議論を追ってください。もし誤り等があればコメントで指摘していただけるとうれしいです。

2019B03

$3$変数関数体$E=\mathbb{C}(x,y,z)$及びその部分体$F=\mathbb{C}(x^2y,y^2z,z^2x)$をとる。次に対称式全体の為す$E$の部分体を$L$とし、$K=L\cap F$とおく。

  1. $E/F$はGalois拡大であることを示し、そのGalois群を求めなさい。
  2. 拡大次数$[E:K]$を求めなさい。
  3. 拡大$L/K$の中間体の個数を求めなさい。
  1. まず$E=F(x)$である。ここで$x^9\in F$であり、$E$$F$上の多項式$f=T^9-x^9$の最小分解体であるから特にGalois拡大である。$\mathrm{Gal}(E/F)$の元
    $$ \begin{split} x&\mapsto \zeta x\\ y&\mapsto \zeta^7 y\\ z&\mapsto \zeta^4 z\\ \end{split} $$
    は任意の$x^i$($i=1,2,\cdots,8$)を$\zeta^ix^i$に移すから、$f$は既約である。よって$[E:F]=9$がわかり、上で定めた$\mathrm{Gal}(E/F)$の元は位数が$9$であるから$\mathrm{Gal}(E/F)={\color{red}\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}}$
  2. まず体$K'$$x^9,y^9,z^9$に関する対称式全体の為す体とする。このとき$E/K'$はガロア拡大であり、$x,y,z$をそれぞれ$x_1,x_2,x_3$とおくと$\mathrm{Gal}(E/K')$
    $$ g_{(i,j,k),\sigma}(x_1)=\zeta^i x_{\sigma(1)} $$
    $$ g_{(i,j,k),\sigma}(x_2)=\zeta^j x_{\sigma(2)} $$
    $$ s_{(i,j,k),\sigma}(x_3)=\zeta^k x_{\sigma(3)} $$
    なる$s_{(i,j,k),\sigma}$全体(ここで$\zeta$$1$の原始$9$乗根であり、$i,j,k$$\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}$の元を、$\sigma$は対称群$S_3$の元を走る)の為す位数$9^3\cdot 6$の群である。このとき$L\cap F$の元は$x^2y,y^2z,z^2x$から生成されていることと対称式であることから、ガロア理論によって体$L\cap F$$2i+j=2j+k=2k+i=0$なる
    $$ g_{(i,j,k),1} $$
    全体と
    $$ g_{0,0,0,\sigma} $$
    全体によって生成される群$G$に対応している。この$G$
    $$ 2i+j=2j+k=2k+i=0 $$
    ないし
    $$ 5i+j=5j+k=5k+i=0 $$
    ないし
    $$ i=j=k $$
    ないし
    $$ (i,j,k)=(0,3,6),(0,6,3),(3,6,0),(3,0,6),(6,3,0),(6,0,3) $$
    のいずれかを満たすような$\sigma_{(i,j,k),1}$全体の為す位数$27$の群$H$$S_3$の半直積である。以上から$[E:K]={\color{red}162}$である。
  3. まず$H$$g_{(1,7,4),1}$及び$g_{(0,3,6),1}$から生成される正規部分群で、同型
    $$ H\simeq\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} $$
    を満たしている。よって
    $$ G\simeq (\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})\rtimes S_3 $$
    が成り立っている。ここで求める中間体の個数$G$$S^3$を含む部分群に対応しているが、その個数は$S_3$の共役で安定な$\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$の部分群の個数に等しい。まず位数$9$の巡回的でない部分群は$1$つしかないので$S_3$の作用で安定である。次に巡回部分群を考える。この生成元$g_{(i,j,k),1}$$i\neq j$を満たしていたとき、$3\nmid i$の場合この群は$g_{(i,k,j),1}$を含まず、$3\mid i$の場合この群は$g_{(k,j,i),1}$を含まない。よって巡回群が$S_3$の作用で安定であるには$g_{(i,i,i),1}$で生成されることが必要充分である。このような群は$g_{(3,3,3),1}$で生成されるものと$g_{(1,1,1),1}$で生成されるものと$g_{(0,0,0),1}$で生成されるものの$3$つのみである。最後に$H$自身と合わせて、$S_3$の作用で安定な$H$の部分群は$5$つあるから、$L/K$の部分拡大も${\color{red}5}$つである。
投稿日:20231019
更新日:85
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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