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大学数学基礎解説
文献あり

Jacobiの楕円関数入門1(実数の範囲)

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Jacobiの楕円関数入門

本記事は、Jacobiの楕円関数に関して簡単にまとめたものです。
本記事を書くにあたって参考にしたサイトの方はこちらになります。
https://www.youtube.com/watch?v=Qy5gOQrUKMw&t=0s
https://www.youtube.com/watch?v=87MKUeMt7KQ&t=0s


単振り子の振動とJacobiの楕円関数

1.単振り子から始める楕円関数

質量m,糸の長さl,鉛直軸からの振れの角度をθとする振り子の運動を考える。
すると、糸の運動方程式は簡単な考察から次式で与えられる。
mld2θdt2=mgsinθ
よって,ω0=glの様な微分方程式を得る。
d2θdt2+ω02sinθ=0
さらに両辺にdθdtをかけて積分すると次式を得る。
12(dθdt)2ω02cosθ=ω02cosθmax
またcosθ=12sin2θ2を用いて式を整えると次のように書きなおせる。
14(dθdt)2=ω02(sin2θmax2sin2θ2)
さらにk=sinθmax2とおきなおし整理する。
14ω0(dθdt)2=ksin2θ2
sinθ2=ksinψとおくと
(dθdψ)2=4k21sin2ψ1k2sin2ψ
であるから、整理して次式を得る。
1ω02(dψdt)2=1k2sin2ψ
この式を変形整理したのち積分することで次の積分を得る。
0ψdψ1k2sin2ψdψ=ω0t
なお、x=sinψと変数変換すると次のようにも書き直せる。
0sinxdx(1x2)(1k2x2)=ω0t
今得られた最後の積分から次のような関数を定義し、これをJacobiの楕円関数という。

Jacobiの楕円関数 sn(u)

x=sn(u)=sn(u;k)u=0xdx(1x2)(1k2x2) (0<k<1)

Jacobiの楕円関数の性質

k0とすると次式を得る。
0x11x2dx=arcsinx=u
つまり
x=limk0sn(u;k)=sin(u)
である事がわかる。この事から、Jacobiの楕円関数はsinxを一般化したものだと推測できる。
ちなみに,k1とすると、
0xdx1x2=12log1+x1x=u
より
x=limk1sn(u;k)=tanh(u)
を得る。

cn,dn関数の定義

cn(u)=cn(u;k)=1sn2(u)dn(u)=dn(u;k)=1k2sn2(u)

am関数の定義

ψ=am(u)=am(u;k)u=0ψdx1k2sin2xdx

Jacobiの楕円関数の定義域拡張

1.Ku0 (K=01dx(1x2)(1k2x2))まで定義域を拡張

x=sn(u)とすると,
u=0xdx(1x2)(1k2x2)=0xdx(1x2)(1k2x2)

snの加法定理

snの加法定理

sn(u+v)=sn(u)cn(v)dn(v)+sn(v)cn(u)dn(u)1k2sn2(u)sn2(v)

まずは例から始めよう。
k=0の場合は次のようになる。
sn(u)=sin(u)cn(u)=cos(u)dn(u)=1sn(u)cn(v)dn(v)=sin(u)cos(v)sn(v)cn(u)dn(u)=cos(u)sin(v)1k2sn2(u)sn(v)=1sn(u+v)=sin(u+v)=sin(u)cos(v)+cos(u)sin(v)
より正しい。
k=1の場合は次のようになる。
sn(u)=tanh(u)cn(u)=1cosh(u)dn(u)=1cosh(u)tanh(u+v)=tanh(u)+tanh(v)1+tanh(u)tanh(v)=tanh(u)sech2(u)+tanh(v)sech2(v)1tanh2(u)tanh2(v)
よって、k=0,1の場合は正しい事が分かった。では次に一般の0<k<1の場合を考える。
cを任意の定数,u,vはu+v=cを満たす様にする。また,x=sn(u),y=cn(u)とおく。するとsnの定義より次式が成り立つ。
dudx=1(1x2)(1k2x2), dvdy=1(1y2)(1k2y2)dxdu=(1x2)(1k2x2), dydu=dydv=(1y2)(1k2y2)
を得る。これより簡単な計算を行い下記の関係式を得る。
d2xdu2=2k2x3(1+k2)x, d2ydu2=2k2y3(1+k2)yyd2xdu2xd2ydu2=2k2xy(x2y2)y2(dxdu)2x2(dydu)2=(x2y2)(1k2x2y2)
上の関係式から直ちに次の関係式を得る。
yd2xdu2xd2ydu2y2(dxdu)2x2(dydv)2=2k2xy1k2x2y2yd2xdu2xd2ydu2ydxduxdydv=2k2xy(ydxdu+xdydv)1k2x2y2ddulog(ydxduxdydv)=ddulog(1k2x2y2)
ゆえに、次式を得る。
ydxduxdydu1k2x2y2=sn(u)cn(v)dn(v)+sn(v)cn(u)dn(u)1k2sn2(u)sn2(v)=const.
sn(0)=0なので、最終的にc=u, v=0とおいてconst=sn(c)=sn(u+v)を得る.

cn,dnの加法定理

cn(u+v)=cn(u)cn(v)sn(u)dn(u)sn(v)dn(v)1k2sn2(u)sn2(v)dn(u+v)=dn(u)dn(v)k2sn(u)cn(u)sn(v)cn(v)1k2sn2(u)cn2(v)

D=1k2sn2(u)sn2(v)とおく。すると簡単な計算から次の関係式を得る。
D=cn2(u)+sn2(u)dn2(v)=cn2(v)+sn2(v)dn2(u)
この関係式を用いると、次式を得る。
D2(sn(u)cn(v)dn(v)sn(v)cn(u)dn(v))2=(cn(u)cn(v)sn(u)sn(v)dn(u)dn(v))
ゆえに,cnの加法定理は示せた。
同様に,次の関係式を求める。
D2=dn2(u)+k2sn2(u)cn2(v)=dn2(v)+k2sn2(v)cn2(u)
そして、次の計算を行う。
D2k2(sn(u)cn(v)dn(v)+sn(v)cn(v)dn(v))2=(dn(u)dn(v)k2sn(u)sn(v)cn(u)cn(v))2
よりdnについても証明が完了した。

2.<u<+まで拡張

ここまででやっと、定義域を<u<広げる準備ができた。
いったん、先の加法定理の結果をまとめよう。それは次のようだ。

sn,cn,dnの加法定理

sn(u+v)=sn(u)cn(v)dn(v)+sn(v)cn(u)dn(u)1k2sn2(u)sn2(v)cn(u+v)=cn(u)cn(v)sn(u)sn(v)dn(u)dn(v)1k2sn2(u)sn2(v)dn(u+v)=dn(u)dn(v)k2sn(u)sn(v)cn(u)cn(v)1k2sn2(u)sn2(v)
この加法定理により定義域を|u|<Kの外に拡張する。そのために、形式的にv=±Kを上式に代入する。
sn(±K)=±1cn(±K)=0dn(±K)=1k2
であることから次式を得る。
sn(u±K)=±cn(u)dn(u)cn(u±K)=sn(u)dn(u)dn(u±K)=1k2dn(u)
これらの式により、定義域をu|2K|まで広げる.
一応念のため符号についてのみチェックをしておく。

2KuKKの場合

sn(uK)=cn(u)dn(u)<0cn(uK)=sn(u)dn(u)<0dn(uK)=1k2dn(u)>0

Ku+K2Kの場合

sn(u+K)=cn(u)dn(u)>0cn(u+K)=sn(u)dn(u)<0dn(u+K)=1k2dn(u)>0

を得る.
この部分の議論は少し僕の知識不足で曖昧なところがあります。いずれ修正します。
sn(2K)=0, cn(2K)=1, dn(2K)=1を用いると
sn(2Ku)=sn(u)cn(2Ku)=dn(u)dn(2Ku)=dn(u)
snは奇関数,cnは偶関数なのでこの事を用いて形式的にuuとして,定義域を2Ku4Kまで広げる。
sn(u+2K)=sn(u)cn(u+2K)=cn(u)dn(u+2K)=dn(u)
を得る。実際は,sn,cn,dnの偶奇性から|u|4Kまで定義域を拡大する事が出来てることに注意。
sn(4K)=sn(2K)=0cn(4K)=cn(2K)=1dn(4K)=dn(2K)=1
次に|u|Kと制限して次の計算を行う。
sn(u+4K)=sn(u)cn(u+4K)=cn(u)dn(u+4K)=dn(u)
すると、dnが周期2K,sn,cnが周期4K,の周期関数として定義できる事が分かる。

まとめ

0uKの場合

sn(u)=x0xdx(1x2)(1k2x2)cn(u)=1sn2(u)dn(u)=1k2sn2(u)

Ku2Kの場合

sn(u)=sn(2Ku)cn(u)=cn(2Ku)dn(u)=dn(2Ku)

2Ku0の場合

sn(u)=sn(u)cn(u)=cn(u)dn(u)=dn(u)
他は周期4Kである事を使って定義する。

参考文献

投稿日:20231119
更新日:20231119
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ただ趣味で数学をやっている普通の人です。 特殊な知識もなくただ数学を楽しみたいenjoy勢です。正直間違った事も平気で書くかもしれません。 僕の書いている記事で間違いを発見した時は遠慮なくご指摘してくださると助かります。

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