0

科学大数学系院試過去問解答例(2021午前01)

31
0
$$$$

ここでは科学大数学系の修士課程の院試の2021午前01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2021午前01

$x$についての関数からなる実線型空間
$$ V=\{ae^x+bxe^x+ce^{2x}|a,b,c\in\mathbb{R}\} $$
を考える。ここで$L(V)$を自己準同型$V\to V$全体の為す実線型空間とし、$D_n\in L(V)$
$$ D_n(f)(x)=\frac{\partial^nf}{\partial x^n}(x) $$
で定義する(但し$D_0=\mathrm{id}_{V}$とする)。以下の問いに解答しなさい。

  1. $D_0,D_1,D_2$$L(V)$に於いて一次独立であることを示しなさい。
  2. 集合$\{D_n|n\in\mathbb{N}\}$によって生成される$L(V)$の部分空間の次元を求めなさい。
  3. 方程式
    $$ f+D_nf=e^x+xe^x+e^{2x} $$
    を満たす$f\in V$を求めなさい。
  1. 初めに$D_1$の基底$e^x,xe^x,e^{2x}$に関する表現行列は
    $$ \begin{pmatrix} 1&1&0\\ 0&1&0\\ 0&0&2\\ \end{pmatrix} $$
    である。よって$D_n$の表現行列は
    $$ \begin{pmatrix} 1&n&0\\ 0&1&0\\ 0&0&2^n\\ \end{pmatrix} $$
    である。ここで$aD_0+bD_1+cD_2$と置いたとき、その表現行列は
    $$ \begin{pmatrix} a+b+c&a+2b+3c&0\\ 0&a+b+c&0\\ 0&0&a+2b+4c\\ \end{pmatrix} $$
    であり、これが$0$になるには$a=b=c=0$になるしかない。よって$D_0,D_1,D_2$は線型独立である。
  2. $D_n$で生成される空間は、ある基底の下
    $$ \begin{pmatrix} a&b&0\\ 0&a&0\\ 0&0&c \end{pmatrix} $$
    の形の行列全体からなる空間の部分空間であるから、その次元は$3$以下である一方、(1)から次元$3$以上であることがわかっていた。よって次元はちょうど${\color{red}3}$である。
  3. $ae^x+bxe^x+ce^{2x}$を列ベクトル
    $$ \begin{pmatrix} a\\ b\\ c \end{pmatrix} $$
    に対応させると、問題の方程式は
    $$ \begin{pmatrix} 2&n&0\\ 0&2&0\\ 0&0&2^n+1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a\\ b\\ c \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 1\\ 1\\ 1 \end{pmatrix} $$
    を解くことに等しい。この解は
    $$ (a,b,c)=\qty(\frac{1}{2}\left(1-\frac{n}{2}\right),\frac{1}{2},\frac{1}{2^n+1}) $$
    であるから、問題の方程式の解は
    $$ f={\color{red}\frac{1}{2}\left(1-\frac{n}{2}\right)e^x+\frac{xe^x}{2}+\frac{e^{2x}}{2^n+1}} $$
    であることがわかる。
投稿日:1011

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中