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大学数学基礎解説
文献あり

虚数や複素数の存在を実感する説明を考える

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ときどき話題になる虚数の存在性・実在性

Twitter(現X)で定期的に話題になるものとして、虚数や複素数の存在性・実在性がある。
個人的には、


と思ってるので、「存在」の各人の定義の問題なのかもしれない。

何か一連の条件を満たして、条件に矛盾しないものが考えられるなら「存在する」と言っていい。そして構成できるなら構成する前から存在していてそれに名前を付けただけだと思う。その意味で、発明ではなくやはり発見だと思う。
数直線上に存在していないが、その上下にも数の世界が広がっていて数平面をなしていたことをガウスたちは発見したのだと思う。

そもそも虚数どころか実数、有理数、自然数さえも物理的にはこの宇宙のどこかに実在しているわけではない。
以前話題になった時も、


のようにつぶやいた。

このつぶやきで言及してる「 数の本 数の本はこの件に限らず「数」に関する話題のおすすめの数学の読み物である。内容は大学でも習わないことも書いてあるのに、中学校で習う数学の知識でも十分読める。第8章「虚数を想像する」にこの話題に関係するお話が載っている。

それとは別に、数学を勉強している人たちには既に当たり前、常識と言われそうだが、実数から複素数を構成法の一つを以下に記載する。

実在感ある虚数(複素数)?

実数R係数の一変数Xの多項式の集合を
R[X]={j=0najXj|ajR,n0}
考えて、その要素(多項式)p(X)X2+1で多項式の割り算をしたものを考える。
p(X)=(X2+1)q(X)+bX+a
a,bR
余りの1次式 bX+aが同じになる多項式すべてからなる集合[a+bX]を考える。a,bR

例えば、
1[1+0X],
X2+2[1+0X],
X2+1[0+0X],
X2=X2+11[1+0X]

より、一般に[a+bX]の要素は
a+bX+(X2+1)K(X)
となっている。

要素の演算が集合の演算になる

足し算

[a+bX]の要素a+bX+(X2+1)K(X)
[c+dX]の要素c+dX+(X2+1)L(X)
足すと、(a+c)+(b+d)X+(X2+1)(K(X)+L(X))
(a+c)+(b+d)X+(X2+1)(K(X)+L(X))[(a+c)+(b+d)X]
K(X),L(X)によらずにこの同じ集合[(a+c)+(b+d)X]に属する。
なので、結果の式を含む余りが同じになる集合は、[a+bX][c+dX]の対応する係数を足したものになっている。
それぞれの任意の要素同士の足し算の結果を含む集合
[(a+c)+(b+d)X]
[a+bX],[c+dX]の演算結果とすることでこれらの集合に「足し算」が定義できる。
[a+bX]+[c+dX]=[(a+c)+(b+d)X]

引き算

[a+bX],[c+dX]のそれぞれの要素の引き算
a+bX+(X2+1)K(X)(c+dX+(X2+1)L(X))も同様に
(ac)+(bd)X+(X2+1)(K(X)L(X))[(ac)+(bd)X]となるので、「引き算」も定義できる。
[a+bX][c+dX]=[(ac)+(bd)X]

かけ算

[a+bX],[c+dX]のそれぞれの要素のかけ算
(以下ではX2+1の項は適宜まとめて新しい記号で置き換えてる)
(a+bX+(X2+1)K(X))(c+dX+(X2+1)L(X))
=ac+adX+bcX+bdX2+(X2+1)M(X)
=ac+bd(X2+11)+(ad+bc)X+(X2+1)M(X)
=acbd+(ad+bc)X+(X2+1)N(X)[(acbd)+(ad+bc)X]
元のK(X),L(X)に依存せずに同じ集合[(acbd)+(ad+bc)X]に属している。
「かけ算」も定義できる。
[a+bX]×[c+dX]=[(acbd)+(ad+bc)X]

わり算

a0,b0とする。
a2+b2
=a2(bX)2+(bX)2+b2
=a2(bX)2+b2(X2+1)
=(a+bX)(abX)+b2(X2+1)
両辺をa2+b2で割って
1=(a+bX)(abXa2+b2)+b2(X2+1)a2+b2
(X2+1)が各因子にあった場合も、
1=(a+bX+(X2+1)K(X))(abXa2+b2+(X2+1)L(X))+(X2+1)M(X)
となるのがわかるので、
1a+bX+(X2+1)K(X)=abXa2+b2+(X2+1)N(X)
変数a,bc,dに置き換えて、
1c+dX+(X2+1)K(X)=cdXc2+d2+(X2+1)N(X)
両辺にa+bX+(X2+1)P(X)を掛けて
a+bX+(X2+1)P(X)c+dX+(X2+1)K(X)=ac+bdc2+d2+bcadc2+d2X+(X2+1)S(X)
[ac+bdc2+d2+bcadc2+d2X]
「わり算」を以下のように定義できることが分かる
[a+bX]÷[c+dX]=[ac+bdc2+d2+bcadc2+d2X]

要素の一次式が複素数に対応している

この集合[a+bX]の四則演算は複素数a+biの四則演算と全く同じ対応になっていることが確かめられる。
実数係数多項式を(X2+1)で割った余りが一次式a+bXとなるものをすべて集めた集合[a+bX]が一つの数a+biに四則演算を込めて対応していることが分かった。
特に、X2=X2+11[1]なので、Xは虚数単位iに対応している。

まとめ

実係数多項式のような具体的なものを部分集合に分割して、その部分集合を1つ1つに対して、四則演算を定めたものとしてとらえることで、多項式の集合なので存在感がある複素数が構成できた。

参考文献

[1]
J.H. コンウェイ (著), R.K. ガイ (著), 根上 生也 (翻訳), 数の本, 丸善出版
投稿日:2024725
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