Twitter(現X)で定期的に話題になるものとして、虚数や複素数の存在性・実在性がある。
個人的には、
数学の概念の存在するかどうかって、何らかの条件を満たす対象があれば「その対象は存在する」っていうし、満たすものがないとわかるとき「存在しない」っていうだけかと。
— IIJIMAS (@IIJIMAS) July 23, 2024
何か一連の条件を満たして、条件に矛盾しないものが考えられるなら「存在する」と言っていい。そして構成できるなら構成する前から存在していてそれに名前を付けただけだと思う。その意味で、発明ではなくやはり発見だと思う。
数直線上に存在していないが、その上下にも数の世界が広がっていて数平面をなしていたことをガウスたちは発見したのだと思う。
そもそも虚数どころか実数、有理数、自然数さえも物理的にはこの宇宙のどこかに実在しているわけではない。
以前話題になった時も、
虚数の実在感とかの話で「数の本」改めて読んだりして虚数に限らず数自体、物理的には実在はしてないと思う。
— IIJIMAS (@IIJIMAS) May 17, 2023
別の話題でTLで盛り上がってるファインマンの本にある「速度」の話も思い出した。実際に一時間同じ速度で移動するわけでもないのに時速何kmとかっていうし。https://t.co/507Nd0ryyG
このつぶやきで言及してる「 数の本 」数の本はこの件に限らず「数」に関する話題のおすすめの数学の読み物である。内容は大学でも習わないことも書いてあるのに、中学校で習う数学の知識でも十分読める。第8章「虚数を想像する」にこの話題に関係するお話が載っている。
それとは別に、数学を勉強している人たちには既に当たり前、常識と言われそうだが、実数から複素数を構成法の一つを以下に記載する。
実数$\mathbb{R}$係数の一変数Xの多項式の集合を
$$ \mathbb{R}[X]= \lbrace \sum_{j=0}^{n} a_j X^j | a_j \in \mathbb{R} ,n \geq 0 \rbrace $$
考えて、その要素(多項式)$p(X)$を$X^2+1 $で多項式の割り算をしたものを考える。
$p(X)=(X^2+1)q(X)+bX+a$
$a, b \in \mathbb{R}$
余りの1次式 $bX+a $が同じになる多項式すべてからなる集合$[a+bX] $を考える。$a,b \in \mathbb{R} $
例えば、
$ 1 \in [1+0X],$
$ X^2+2 \in [1+0X],$
$ X^2+1 \in [0+0X],$
$ X^2=X^2+1-1 \in [-1+0X]$…
より、一般に$[a+bX]$の要素は
$a+bX+(X^2+1)K(X)$
となっている。
$[a+bX]$の要素$a+bX+(X^2+1)K(X)$と
$[c+dX]$の要素$c+dX+(X^2+1)L(X)$を
足すと、$(a+c)+(b+d)X+(X^2+1)(K(X)+L(X))$
$(a+c)+(b+d)X+(X^2+1)(K(X)+L(X)) \in [(a+c)+(b+d)X]$
$K(X),L(X)$によらずにこの同じ集合$[(a+c)+(b+d)X]$に属する。
なので、結果の式を含む余りが同じになる集合は、$[a+bX]と[c+dX] $の対応する係数を足したものになっている。
それぞれの任意の要素同士の足し算の結果を含む集合
$[(a+c)+(b+d)X]$を
$[a+bX],[c+dX] $の演算結果とすることでこれらの集合に「足し算」が定義できる。
$[a+bX]+[c+dX]=[(a+c)+(b+d)X] $
$[a+bX],[c+dX]$のそれぞれの要素の引き算
$a+bX+(X^2+1)K(X)-(c+dX+(X^2+1)L(X))$も同様に
$(a-c)+(b-d)X+(X^2+1)(K(X)-L(X)) \in [(a-c)+(b-d)X]$となるので、「引き算」も定義できる。
$[a+bX]-[c+dX]=[(a-c)+(b-d)X] $
$[a+bX],[c+dX]$のそれぞれの要素のかけ算
(以下では$X^2+1$の項は適宜まとめて新しい記号で置き換えてる)
$(a+bX+(X^2+1)K(X))(c+dX+(X^2+1)L(X)) $
$=ac+adX+bcX+bdX^2+(X^2+1)M(X) $
$=ac+bd(X^2+1-1)+(ad+bc)X+(X^2+1)M(X)$
$=ac-bd+(ad+bc)X+(X^2+1)N(X) \in [(ac-bd)+(ad+bc)X]$
元の$K(X),L(X)$に依存せずに同じ集合$[(ac-bd)+(ad+bc)X]$に属している。
「かけ算」も定義できる。
$[a+bX] \times [c+dX]=[(ac-bd)+(ad+bc)X]$
$a≠0,b≠0 $とする。
$a^2+b^2$
$=a^2-(bX)^2+(bX)^2+b^2$
$=a^2-(bX)^2+b^2(X^2+1)$
$=(a+bX)(a-bX)+b^2(X^2+1)$
両辺を$a^2+b^2$で割って
$$1=(a+bX) (\frac{a-bX}{a^2+b^2})+\frac{b^2(X^2+1)}{a^2+b^2}$$
$(X^2+1)$が各因子にあった場合も、
$$1=(a+bX+(X^2+1)K(X)) (\frac{a-bX}{a^2+b^2}+(X^2+1)L(X))+(X^2+1)M(X)$$
となるのがわかるので、
$$\frac{1}{a+bX+(X^2+1)K(X)}=\frac{a-bX}{a^2+b^2}+(X^2+1)N(X)$$
変数$a,b$を$c,d$に置き換えて、
$$\frac{1}{c+dX+(X^2+1)K(X)}=\frac{c-dX}{c^2+d^2}+(X^2+1)N(X)$$
両辺に$a+bX+(X^2+1)P(X)$を掛けて
$$\frac{a+bX+(X^2+1)P(X)}{c+dX+(X^2+1)K(X)}=\frac{ac+bd}{c^2+d^2}+\frac{bc-ad}{c^2+d^2}X+(X^2+1)S(X)$$
$$ \in [\frac{ac+bd}{c^2+d^2}+\frac{bc-ad}{c^2+d^2}X]$$
「わり算」を以下のように定義できることが分かる
$$[a+bX]÷[c+dX]=[\frac{ac+bd}{c^2+d^2}+\frac{bc-ad}{c^2+d^2}X]$$
この集合$[a+bX] $の四則演算は複素数$a+bi $の四則演算と全く同じ対応になっていることが確かめられる。
実数係数多項式を$(X^2+1)$で割った余りが一次式$a+bX$となるものをすべて集めた集合$[a+bX] $が一つの数$a+bi$に四則演算を込めて対応していることが分かった。
特に、$ X^2=X^2+1-1 \in [-1]$なので、$X$は虚数単位$i$に対応している。
実係数多項式のような具体的なものを部分集合に分割して、その部分集合を1つ1つに対して、四則演算を定めたものとしてとらえることで、多項式の集合なので存在感がある複素数が構成できた。