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大学数学基礎解説
文献あり

アティマク第5章演習問題30番

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アティマク第5章30

$A$を体$K$の付値環とする. $A$のすべての単元のつくる群$U$$K$の乗法群$K^{\ast }$の部分群である.
$\varGamma=K^{\ast }/U$とおく. $\xi,\eta\in\varGamma$の代表元をそれぞれ$x,y\in K$とする.$xy^{-1}\in A$のとき、$\xi\geq\eta$として$\varGamma$に順序を定義する.これは$\varGamma$上に群構造と適合している全順序を定義することを示せ(すなわち、すべての$\omega\in\varGamma$に対して、$\xi\geq\eta\Longrightarrow\xi\omega\geq\eta\omega$).言い換えると,$\varGamma$は全順序である可換群となる.これを$A$値群(value group)という.
$v:K^{\ast }\rightarrow\varGamma$を標準的な準同型写像とする.すべての$x,y\in K^{\ast }$に対して、$v(x+y)\geq min(v(x),v(y))$が成り立つことを示せ.

$ $$\varGamma$$A$の値群であること.
まず,定義された順序が全順序であること.
任意に$\xi,\eta\in\varGamma$を取り,それぞれの代表元を$x,y\in K$とする.$A$$K$の付値環であることから,$xy^{-1}\in A$または$yx^{-1}\in A$が成り立つ.つまり,$\xi\geq\eta$または$\eta\geq\xi$が成り立つ。よって示された。
次にこの全順序が群構造と適合していること.
任意に$\omega\in\varGamma$$\xi,\eta\in\varGamma$を取り、$\xi\geq\eta$が成り立っているとする.$\xi,\eta,\omega\in\varGamma$の代表元をそれぞれ$x,y,z\in K$とする.$\xi\geq\eta$より,$xy^{-1}\in A$である.また,$xy^{-1}=xz(yz)^{-1}$と書けるので,$xy^{-1}=xz(yz)^{-1}\in A$となり,$\xi\omega\geq\eta\omega$が示される.
以上により,$ $$\varGammaはA$の値群である.
$ $すべての$x,y\in K^{\ast }$に対して、$v(x+y)\geq min(v(x),v(y))$が成り立つこと.
背理法で示す. ある$x,y\in K^{\ast }$が存在して,$v(x+y) \lt min(v(x),v(y))$が成り立っているとする.$v(x+y) \lt v(x)$かつ$v(x+y) \lt v(y)$なので,全順序より,$(x+y)x^{-1},(x+y)y^{-1} \notin A$が成り立っていることと同値.
$(x+y)x^{-1}=1+yx^{-1}\notin A$
$(x+y)y^{-1}=xy^{-1}+1=(yx^{-1})^{-1}+1\notin A$
なので,
$yx^{-1},(yx^{-1})^{-1}\notin A$となり、$A$が付値環であることに矛盾.よって示された.

参考文献

[1]
M.F.Atiyah, I.G.MacDonald 著, 新妻 弘 訳,, Atiyah-MacDonald可換代数入門, 共立出版, 2006
投稿日:312
更新日:315
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