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雑記:級数の収束

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はじめに

 この記事では級数の収束と発散に関する基本事項についてまとめていきます。
 なお本当に基本的なことしか解説しないので、種々の収束判定法などについてはこの記事では特に紹介しません。

コーシー列

 級数の収束性を議論するにあたって、まず極限というものの基本性質、特にコーシー列という概念について触れておく必要があります。

コーシー列

 任意のε>0に対しあるNが存在して、m,n>Nならば
|aman|<ε
が成り立つ。を満たすような数列anコーシー列という。

 この条件は往々にして
|aman|0(m,n)
のように表すことがあります。
 実数は有理数からなるコーシー列に対しその収束先を適当に構成したものとして定義され(ることがあり)ます(そのことについては特に解説しません)。したがって以下の命題が成り立ちます。

 数列anがコーシー列であることと極限
limnan
を持つことは同値である。

 anが収束先αを持つとき
|aman||amα|+|αan|0(m,n)
が成り立つのでanはコーシー列となる。
 またコーシー列が収束列であることは実数の定義に他ならない。

 特に以下の系が得られます。

 級数n=0anが収束することと
|k=mnak|0(m,n)
が成り立つことは同値である。

 級数の収束性を議論するにあたって十分大きい任意のm<nに対して
k=mnak
を不等式評価していくことが重要となってきます。

絶対収束

 級数の収束性について確認するのに一番簡単な方法として絶対収束性を確かめるということがあります。

絶対収束

 級数n=0an絶対収束するとは級数
n=0|an|
が収束することを言う。

 絶対収束する級数は収束する。

 級数n=0anが絶対収束するとき
|k=mnak|k=mn|ak|0(m,n)
とコーシー性がわかる。

 n=0|an|のように各項が正となるような級数のことを正項級数と言います。正項級数を考える利点として実数の持つ以下の性質が利用できることが挙げられます。

単調収束定理

 単調増加、つまり
a0a1an
を満たすような数列anが有界である、つまりあるC>0に対して
|an|C
が成り立つとき、anは収束列となる。

 いま正項級数の部分列は単調増加なので以下が成り立つことになります。

 あるC>0が存在して任意のnに対し
k=0n|ak|<C
が成り立つとき、級数n=0anは(絶対)収束する。

 高校数学の範囲では具体的な収束先の分からない級数の収束性を確かめるのは難しいものがあったと思いますが、(大抵の場合)これらの命題を使えば適当な定数で上から抑えるだけでその収束性を示すことができ、その点で非常に便利な事実となっています。

条件収束と再配列

 しかし級数の中には絶対収束しないが元の級数は収束するようなものが存在します。そのような級数のことを条件収束級数と言います。例えば
n=1(1)n1n,n=0(1)n2n+1
のような級数はlog2π/4という値に収束することが知られていますが、これらは絶対収束しません。実際例えば
n=11n>1dxx=[logx]1=
と発散することがわかります。
 これらの級数を扱う上で気を付けなければならないのはその変形の仕方によっては収束先が変わってしまうことにあります。

リーマンの再配列定理

 実数列anについて級数n=0anが条件収束するとき、任意のrR{±}に対してある全単射σ:Z0Z0が存在して
n=0aσ(n)=r
が成り立つ。

 逆に絶対収束級数はどのように並べ替えてもその収束先は変わりません。

 数列anについて級数n=0anが絶対収束するとき、任意の全単射σ:Z0Z0に対して
n=0aσ(n)=n=0an
が成り立つ。

 これらの証明については INTEGERSの記事 にてよく解説されているのでよければそちらを参照してください。
 しかし級数が絶対収束するからと言って好き勝手変形していいわけではなく、例えば
n=112n(2n1),n=02(4n+1)(4n+3)
といった級数は絶対収束しますがこれらは
n=112n(2n1)=n=1(12n112n)=n=1(1)n1nn=02(4n+1)(4n+3)=n=0(14n+114n+3)=n=0(1)n2n+1
のように変形すると条件収束級数に成り代わってしまいます。逆にこの右辺から左辺に向かって考えると条件収束級数も時に絶対収束級数に書き直すこともできます。
 これらの操作は全単射σ:Z0Z0による並べ替えとは異なるタイプの変形となるのでその時々に応じてその正当性を確認しなければならないことに注意しましょう。

おまけ:部分和分

 ちなみに上のような変形は一般に部分和分と言い、級数を扱う上ではそれなりに重要な手法の一つとなっています。

部分和分

 数列an,bnに対しAn=k=0nakとおくと
k=0nakbk=Anbn+k=0n1Ak(bkbk+1)
が成り立つ。

k=0nakbk=k=0n(AkAk1)bk=k=0nAkbkk=0n1Akbk+1=Anbn+k=0n1Ak(bkbk+1)
とわかる。

 いまAnbn0が成り立つような数列an,bnに対しては
n=0anbn=n=0An(bnbn+1)
という級数変換公式が得られることとなります。
 特にある種の級数はこのようにして必ず絶対収束級数に書き換えられることがわかります。

ディリクレの収束判定法

 0に収束する単調減少な正数列bnと、あるC>0が存在して任意のnに対して|An|<Cが成り立つような複素数列anに対して
n=0anbn=n=0An(bnbn+1)
は収束し、特にこの右辺は絶対収束する。

|Anbn|Cbn0
に注意すると
|n=0anbn|=|n=0An(bnbn+1)|ClimNn=0N(bnbn+1)(bnbn+10)=ClimN(b0bN+1)=Cb0
と評価できることからわかる。

 例えばan=(1)nのときは
n=0(1)nbn=n=0(b2nb2n+1)
と絶対収束級数に書き直せたというわけでした。

投稿日:2024120
更新日:2024120
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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