この記事では級数の収束と発散に関する基本事項についてまとめていきます。
なお本当に基本的なことしか解説しないので、種々の収束判定法などについてはこの記事では特に紹介しません。
級数の収束性を議論するにあたって、まず極限というものの基本性質、特にコーシー列という概念について触れておく必要があります。
任意の
が成り立つ。を満たすような数列
この条件は往々にして
のように表すことがあります。
実数は有理数からなるコーシー列に対しその収束先を適当に構成したものとして定義され(ることがあり)ます(そのことについては特に解説しません)。したがって以下の命題が成り立ちます。
数列
を持つことは同値である。
が成り立つので
またコーシー列が収束列であることは実数の定義に他ならない。
特に以下の系が得られます。
級数
が成り立つことは同値である。
級数の収束性を議論するにあたって十分大きい任意の
を不等式評価していくことが重要となってきます。
級数の収束性について確認するのに一番簡単な方法として絶対収束性を確かめるということがあります。
級数
が収束することを言う。
絶対収束する級数は収束する。
級数
とコーシー性がわかる。
単調増加、つまり
を満たすような数列
が成り立つとき、
いま正項級数の部分列は単調増加なので以下が成り立つことになります。
ある
が成り立つとき、級数
高校数学の範囲では具体的な収束先の分からない級数の収束性を確かめるのは難しいものがあったと思いますが、(大抵の場合)これらの命題を使えば適当な定数で上から抑えるだけでその収束性を示すことができ、その点で非常に便利な事実となっています。
しかし級数の中には絶対収束しないが元の級数は収束するようなものが存在します。そのような級数のことを条件収束級数と言います。例えば
のような級数は
と発散することがわかります。
これらの級数を扱う上で気を付けなければならないのはその変形の仕方によっては収束先が変わってしまうことにあります。
実数列
が成り立つ。
逆に絶対収束級数はどのように並べ替えてもその収束先は変わりません。
数列
が成り立つ。
これらの証明については
INTEGERSの記事
にてよく解説されているのでよければそちらを参照してください。
しかし級数が絶対収束するからと言って好き勝手変形していいわけではなく、例えば
といった級数は絶対収束しますがこれらは
のように変形すると条件収束級数に成り代わってしまいます。逆にこの右辺から左辺に向かって考えると条件収束級数も時に絶対収束級数に書き直すこともできます。
これらの操作は全単射
ちなみに上のような変形は一般に部分和分と言い、級数を扱う上ではそれなりに重要な手法の一つとなっています。
数列
が成り立つ。
とわかる。
いま
という級数変換公式が得られることとなります。
特にある種の級数はこのようにして必ず絶対収束級数に書き換えられることがわかります。
は収束し、特にこの右辺は絶対収束する。
に注意すると
と評価できることからわかる。
例えば
と絶対収束級数に書き直せたというわけでした。