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東大数理院試過去問解答例(2012B01)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2012B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2012B01

有理関数体$L=\mathbb{C}(X_1,X_2,X_3,X_4)$をとり、$L$の体同型$\sigma$及び$\tau$
$$ \sigma(X_i)=\begin{cases} -X_1&(i=1)\\ X_i&(i=2,3,4) \end{cases} $$
$$ \tau(X_i)=\begin{cases} X_{i+1}&(i=1,2,3)\\ X_1&(i=4) \end{cases} $$
によって定まっていたとする。$L$の部分体$K$
$$ K:=\{a\in L|\sigma(a)=\tau(a)=a\} $$
によって定義する。
(1) 拡大次数$[L:K]$を計算しなさい。
(2) $L/K$の最大アーベル拡大($L/K$の中間体のうち$K$上のアーベル拡大であるような最大のもの)を求めなさい。
(3) $L/K$の中間体のうち、$K$$2$次拡大であるようなものを全て求めなさい。但し列挙するに当たっては、適切な$L$の元$\alpha$を用いて$K(\alpha)$のように書き表すこと。

  1. 初めに拡大$L/K$$K$係数多項式
    $$ (T^2-X_1^2)(T^2-X_2^2)(T^2-X_3^2)(T^2-X_4^2) $$
    の最小分解体であるからガロア拡大である。$K'$$X_i^2$たちに関する対称式の為す体、$K''$$\mathbb{C}(X_1^2,X_2^2,X_3^2,X_4^2)$とする。このとき$\sigma,\tau$$\mathrm{Gal}(L/K')$の元であり、$\mathrm{Gal}(L/K'')$の元は$\sigma$$\tau$のいくつかの合成で表せるから、$K$$K''/K'$の中間体である。いま$\sigma$$K''$を固定するから、$\mathrm{Gal}(K''/K')$$\mathrm{Gal}(K''/K)\simeq S_4$$(1,2,3,4)$の生成する位数$4$の部分群に対応している。以上から
    $$ [L:K]=[L:K''][K'':K]=16\cdot 4={\color{red}64} $$
    である。
  2. まず$\sigma_{i,j,k,l}$
    $$ \sigma_{i,j,k,l}(X_1)=(-1)^{i}X_1 $$
    $$ \sigma_{i,j,k,l}(X_2)=(-1)^{j}X_2 $$
    $$ \sigma_{i,j,k,l}(X_3)=(-1)^{k}X_3 $$
    $$ \sigma_{i,j,k,l}(X_4)=(-1)^{l}X_4 $$
    で定義される$G=\mathrm{Gal}(L/K)$の元とする。ここで
    $$ \tau\sigma_{i,j,k,l}\tau^{-1}\sigma_{i,j,k,l}^{-1}=\sigma_{l+i,i+j,j+k,k+l} $$
    であるから、交換子群$[G:G]$は少なくとも$\sigma_{0,0,0,0},\sigma_{1,0,0,1},\sigma_{1,1,0,0},\sigma_{0,1,1,0},\sigma_{0,0,1,1},\sigma_{1,0,1,0},\sigma_{1,1,1,1},\sigma_{0,1,0,1}$$8$つの元を持つ。また交換子群[G:G]は集合
    $$ \{\sigma_{i,j,k,l}|i+j+k+l=0\} $$
    に含まれるから、その位数は$8$以下である。以上から$L/K$の最大アーベル拡大は$8$次拡大である。ここで
    $$ M={\color{red}K(X_1^2,X_2^2,X_3^2,X_4^2,X_1X_2X_3X_4)} $$
    とおくと、これは$L=M(X_1,X_2,X_3)$であると同時に交換子群の元で固定されるから$[M:K]=8$である。よって上記で定義した$M$が所望の最大アーベル拡大である。
  3. まず$2$次拡大は全てアーベル拡大なので、これらは$M/K$の部分拡大である。まず
    $$ \mathrm{Gal}(M/K)=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/4\mathbb{Z} $$
    であるから、この位数$4$の部分群は$3$つである。よって所望の$2$次拡大は$3$つあるが、これらは
    $$ {\color{red}K(X_1X_2X_3X_4)} $$
    $$ {\color{red}K(X_1^2+X_3^2)} $$
    $$ {\color{red}K\left(\frac{X_1^2-X_2^2+X_3^2-X_4^2}{X_1X_2X_3X_4}\right)} $$
    $3$つである。
投稿日:202488
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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