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写像 ⑥

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はじめに

逆像についても、像の場合と同様に多くの性質が成り立つ。
ただし、像では等号が成立しなかった命題の一部が、逆像では等号を保つ点には注意して読み進めるとよい(´・ω・`)

Prop&Proof.

$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ Y\subseteq Z \Longrightarrow f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。

任意に $Y,Z\subseteq B$ をとり、
$$ Y\subseteq Z $$
と仮定する。
$f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z)$ を示す。
任意に $a\in f^{-1}(Y)$ をとる。逆像の定義より、
$$ a\in A \land f(a)\in Y $$
である。
仮定 $Y\subseteq Z$ より、
$$ f(a)\in Z $$
である。
したがって、逆像の定義より、
$$ a\in f^{-1}(Z) $$
である。
$a\in f^{-1}(Y)$ は任意であったから、
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) $$
である。
以上より、任意の $Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ Y\subseteq Z \Longrightarrow f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。
$$ \Box$$

像の場合との対応

部分集合の像についても、$S,T\subseteq A$ に対して、
$$ S\subseteq T \Longrightarrow f(S)\subseteq f(T) $$
が成り立つ。
逆像についても同様に、$Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ Y\subseteq Z \Longrightarrow f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。
したがって、像も逆像も包含関係を保つ。

逆向きは一般には成り立たない

上の命題の逆向き
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) \Longrightarrow Y\subseteq Z $$
は、一般には成り立たない。
$ $
逆像 $f^{-1}(Y)$ は、$Y$ そのものをそのまま反映するのではなく、
$Y$ のうち $\operatorname{Im}(f)$ と交わる部分にだけ反応する(すぐ下の命題)。
$ $
すなわち、$\operatorname{Im}(f)$ に属さない $B$ の元は、どの $a\in A$ に対しても $f(a)$ として現れない。
したがって、$\operatorname{Im}(f)$ に属さない元を $Y$$Z$ に加えても、逆像は変化しないことがある。
たとえば、
$$ A=\{0\}, \quad B=\{0,1\} $$
とし、写像 $f:A\to B$
$$ f(0)=0 $$
で定める。
また、
$$ Y=\{1\}, \quad Z=\varnothing $$
とする。
このとき、
$$ Y\not\subseteq Z $$
である。
一方、$1\notin\operatorname{Im}(f)$ であるから、
$$ f^{-1}(Y) = f^{-1}(\{1\}) = \varnothing $$
である。
また、
$$ f^{-1}(Z) = f^{-1}(\varnothing) = \varnothing $$
である。
したがって、
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) $$
は成り立つ。
しかし、
$$ Y\subseteq Z $$
は成り立たない。
ゆえに、一般には
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) \Longrightarrow Y\subseteq Z $$
は成り立たない。

全射の場合

$f:A\to B$ が全射である場合には、任意の $Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) \Longrightarrow Y\subseteq Z $$
が成り立つ。
実際、全射であれば、任意の $y\in B$ はある $a\in A$ によって
$$ y=f(a) $$
と表される。
したがって、終域 $B$ の元はすべて実際に $f$ の値として現れる。
このため、逆像を取る操作は、終域側の包含関係を見失わない。

$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) \Longleftrightarrow Y\cap\operatorname{Im}(f)\subseteq Z\cap\operatorname{Im}(f) $$
が成り立つ。

任意に $Y,Z\subseteq B$ をとる。

  1. $f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z)$ を仮定する。
    $Y\cap\operatorname{Im}(f)\subseteq Z\cap\operatorname{Im}(f)$ を示す。任意に $y\in Y\cap\operatorname{Im}(f)$ をとる。
    このとき、
    $$ y\in Y \quad\text{かつ}\quad y\in\operatorname{Im}(f) $$
    である。
    $y\in\operatorname{Im}(f)$ より、ある $a\in A$ が存在して、
    $$ y=f(a) $$
    である。
    また $y\in Y$ であるから、
    $$ f(a)\in Y $$
    である。
    したがって、逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Y) $$
    である。仮定より、
    $$ a\in f^{-1}(Z) $$
    である。
    したがって、逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Z $$
    である。
    $y=f(a)$ であるから、
    $$ y\in Z $$
    である。
    また、$y\in\operatorname{Im}(f)$ であるから、
    $$ y\in Z\cap\operatorname{Im}(f) $$
    である。ゆえに、
    $$ Y\cap\operatorname{Im}(f)\subseteq Z\cap\operatorname{Im}(f) $$
    である。
    $ $
  2. $Y\cap\operatorname{Im}(f)\subseteq Z\cap\operatorname{Im}(f)$ を仮定する。
    $f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z)$ を示す。任意に $a\in f^{-1}(Y)$ をとる。
    逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Y $$
    である。
    また、$a\in A$ であるから、
    $$ f(a)\in\operatorname{Im}(f) $$
    である。したがって、
    $$ f(a)\in Y\cap\operatorname{Im}(f) $$
    である。
    仮定より、
    $$ f(a)\in Z\cap\operatorname{Im}(f) $$
    である。
    特に、
    $$ f(a)\in Z $$
    である。
    したがって、逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Z) $$
    である。
    $a\in f^{-1}(Y)$ は任意であったから、
    $$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) $$
    である。

-以上より、
$$ f^{-1}(Y)\subseteq f^{-1}(Z) \Longleftrightarrow Y\cap\operatorname{Im}(f)\subseteq Z\cap\operatorname{Im}(f) $$
が成り立つ。
$$ \Box$$

$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ f^{-1}(Y\cup Z)=f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。

任意に $Y,Z\subseteq B$ をとる。
集合の相等を示すために、両包含を示す。

  1. $f^{-1}(Y\cup Z)\subseteq f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z)$ を示す。
    任意に $a\in f^{-1}(Y\cup Z)$ をとる。
    逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Y\cup Z $$
    である。したがって、
    $$ f(a)\in Y\lor f(a)\in Z $$
    である。
    i) $f(a)\in Y$ の場合。
      逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Y) $$
      である。したがって、
    $$ a\in f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z) $$
      である。
    ii) $f(a)\in Z$ の場合。
      逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Z) $$
      である。したがって、
    $$ a\in f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z) $$
      である。
    以上より、いずれの場合も
    $$ a\in f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z) $$
    である。ゆえに、
    $$ f^{-1}(Y\cup Z)\subseteq f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z) $$
    である。
    $ $
  2. $f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z)\subseteq f^{-1}(Y\cup Z)$ を示す。
    任意に $a\in f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z)$ をとる。
    このとき、
    $$ a\in f^{-1}(Y)\lor a\in f^{-1}(Z) $$
    である。
    i) $a\in f^{-1}(Y)$ の場合。
      逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Y $$
      である。したがって、
    $$ f(a)\in Y\cup Z $$
      である。
      ゆえに、逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Y\cup Z) $$
      である。
    ii) $a\in f^{-1}(Z)$ の場合。
      逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Z $$
      である。したがって、
    $$ f(a)\in Y\cup Z $$
      である。
      ゆえに、逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Y\cup Z) $$
      である。
    以上より、いずれの場合も
    $$ a\in f^{-1}(Y\cup Z) $$
    である。ゆえに、
    $$ f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z)\subseteq f^{-1}(Y\cup Z) $$
    である。

-以上より、
$$ f^{-1}(Y\cup Z)=f^{-1}(Y)\cup f^{-1}(Z) $$
である。
$$ \Box$$

像の場合との対応

部分集合の像についても、$S,T\subseteq A$ に対して、
$$ f(S\cup T)=f(S)\cup f(T) $$
が成り立つ。
一方、逆像は和集合だけでなく、共通部分や差集合についても等号を保つ。
例えば、$Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ f^{-1}(Y\cap Z)=f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$

$$ f^{-1}(Y\setminus Z)=f^{-1}(Y)\setminus f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。
特に、$Y\subseteq B$ に対して、
$$ f^{-1}(B\setminus Y)=A\setminus f^{-1}(Y) $$
が成り立つ。
この意味で、逆像は集合演算と特によく整合する。

$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y,Z\subseteq B$ に対して、
$$ f^{-1}(Y\cap Z)=f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。

任意に $Y,Z\subseteq B$ をとる。
集合の相等を示すために、両包含を示す。

  1. $f^{-1}(Y\cap Z)\subseteq f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z)$ を示す。
    任意に $a\in f^{-1}(Y\cap Z)$ をとる。
    逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Y\cap Z $$
    である。したがって、
    $$ f(a)\in Y \quad\text{かつ}\quad f(a)\in Z $$
    である。
    逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Y) \quad\text{かつ}\quad a\in f^{-1}(Z) $$
    である。
    したがって、
    $$ a\in f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
    である。
    $a\in f^{-1}(Y\cap Z)$ は任意であったから、
    $$ f^{-1}(Y\cap Z)\subseteq f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
    である。
    $ $
  2. $f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z)\subseteq f^{-1}(Y\cap Z)$ を示す。
    任意に $a\in f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z)$ をとる。
    このとき、
    $$ a\in f^{-1}(Y) \quad\text{かつ}\quad a\in f^{-1}(Z) $$
    である。
    逆像の定義より、
    $$ f(a)\in Y \quad\text{かつ}\quad f(a)\in Z $$
    である。したがって、
    $$ f(a)\in Y\cap Z $$
    である。
    逆像の定義より、
    $$ a\in f^{-1}(Y\cap Z) $$
    である。
    $a\in f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z)$ は任意であったから、
    $$ f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z)\subseteq f^{-1}(Y\cap Z) $$
    である。

-以上より、
$$ f^{-1}(Y\cap Z)=f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
である。
$$ \Box$$

逆像は共通部分を保つ

$f(a)$$Y\cap Z$ に属することは、$f(a)$$Y$$Z$ の両方に属することである。
この条件を入力側に引き戻すと、$a$$f^{-1}(Y)$$f^{-1}(Z)$ の両方に属することになる。
したがって、共通部分の逆像は逆像の共通部分になる。

像の場合との違い

像では一般に
$$ f(S\cap T)=f(S)\cap f(T) $$
は成り立たず、通常は包含
$$ f(S\cap T)\subseteq f(S)\cap f(T) $$
だけが成り立つ。
一方、逆像では共通部分について等号
$$ f^{-1}(Y\cap Z)=f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。

同値変形による証明の見方

集合の相等を示すには、両包含を示す方法のほかに、任意の元について所属条件が同値であることを示す方法がある。
今回の場合、$f^{-1}(Y\cap Z)$$f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z)$ はどちらも $A$ の部分集合である。
したがって、任意の $a\in A$ に対して、
$$ a\in f^{-1}(Y\cap Z) \Longleftrightarrow a\in f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
を示せば、外延性により
$$ f^{-1}(Y\cap Z)=f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
が従う。
実際、任意の $a\in A$ に対して、逆像の定義より、
$$ a\in f^{-1}(Y\cap Z) \Longleftrightarrow f(a)\in Y\cap Z $$
である。
また、共通部分の定義より、
$$ f(a)\in Y\cap Z \Longleftrightarrow f(a)\in Y\land f(a)\in Z $$
である。
さらに、逆像の定義より、
$$ f(a)\in Y\land f(a)\in Z \Longleftrightarrow a\in f^{-1}(Y)\land a\in f^{-1}(Z) $$
である。
最後に、共通部分の定義より、
$$ a\in f^{-1}(Y)\land a\in f^{-1}(Z) \Longleftrightarrow a\in f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
である。
したがって、
$$ a\in f^{-1}(Y\cap Z) \Longleftrightarrow a\in f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
が成り立つ。
ゆえに、外延性より、
$$ f^{-1}(Y\cap Z)=f^{-1}(Y)\cap f^{-1}(Z) $$
である。

投稿日:15日前
更新日:15日前
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Kagura
Kagura
11
7346
■ 分野を問わず数学の証明が好きです。あとで自分が読み返したときに、きちんと理解できるノートを作ることを心がけています。不定期に過去のノートを確認し、修正&更新 (追加&削除) しています。定義、命題、証明などに誤りや不正確な点がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです(2025年12月28日)。

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