ある単純無向グラフ
本記事で用いる定義です.
頂点集合
グラフ理論におけるマッチングの定義は以下の通りです.
グラフ
グラフ
ここで,
先に結論から述べてしまいます.
単純無向グラフ
基本的に,
しかし,この主張を用いることで
いきなり何?となるかもしれないですが,ここで,ライツアウトパズルについて説明します.
見たことある人も多いと思います.正方形の盤面があり,各マスが白黒で着色されています.マスを
ライツアウトの操作の例
このライツアウトですが,常に解くことができるわけではありません.
たとえば,
単純無向グラフに色の情報を足したライツアウトグラフ(本記事独自の呼び方です)を以下のように定義します.
頂点集合を
また,関数
このとき,ライツアウトグラフ
ライツアウトグラフ全体の集合を
ライツアウトグラフの各頂点に対する操作を次で定義します.
また,
長ったらしく書いていますが,要は
この操作は適用させる順番は関係なく,同じ頂点へ
もう一つ,ライツアウトグラフの解も定義しておきます.
ただし,条件を満たすような
すべての頂点の持つ値を
ようやくライツアウトグラフについての定義がおわりました.
ライツアウトグラフの例を
としてみます.
各頂点が持っている
ライツアウトグラフの例
この場合の
正方形の盤面におけるライツアウトの自然な拡張となっていると思います.
グラフ版のライツアウトパズルの簡易的なエディタを作成しましたので載せておきます.興味のある人は触ってみるとちょっと楽しいかもしれないです.
グラフ版ライツアウト
与えられたライツアウトグラフが,頂点の持っている値にかかわらず常に解を持っているための条件を求めてみましょう.
ここからの演算は特に断りのない限り,
また,簡単のため,
また,
すると,
このことから,連立方程式
を,未知数
また,この連立方程式が解を持たなければ,ライツアウトグラフの解は常に存在するとは言えないため,与えられたライツアウトグラフが,頂点の持っている値にかかわらず常に解を持っているための条件は,
となります.ただし,
隣り合う頂点に対応する成分を
先ほど例に挙げたグラフで考えてみます.
であるため,
です.この行列は
また,
ここで,
です.ただし,
行列式は,
さらに,
したがって,対角成分について対称な成分の選び方のみをカウントすればよいです.
マッチングの話に戻ります.先ほど例に挙げたライツアウトグラフと同じ頂点と辺の組を持つ単純無向グラフ
ここで,
とします.この辺を赤く着色して次に示します.
マッチングの一例
この例だと
です.この置換によってえらばれる
であり,対角成分について対称な選び方となっています.
一般に,各
逆に,対角成分について対称な選び方を与える
したがって,
です.
が示せました.
いかがでしたでしょうか.前回の記事で正方形の盤面におけるライツアウトについて書きましたが,より抽象的にして遊んでいた結果,今回の性質を発見するに至りました.これが有名事実だとしても,
(こんな記事書いてないで本当は卒業研究を進めた方が良い)
今日はもう寝ます.おやすみなさい.