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グリーン・タオの定理6 ハイパーグラフ除去補題の証明②~理解~

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こんにちは,itouです.今回は以下の定理,強化版ハイパーグラフ除去補題を理解していきましょう.強化版ハイパーグラフ除去補題はハイパーグラフ除去補題を前回用意した道具を使って書き直したものです.

まずは定理のステートメントを見てみます.

記法

(H;(Vj)jJ)rグラフ型とする.Jの部分集合eJに対して,以下の記法を用いる.Ve=jeVjと略記し,とくにVJ=jJVjとする.πe:VJVeを標準射影とする.また,Ae={πe1(Ee)(VJ):Ee(Ve)}とする.

強化版ハイパーグラフ除去補題

正整数kと正の実数ε>0に対して,δ=δSHRL(k,ε)およびC=CSHRL(k,ε)>0が存在して,以下が成立する.((J,E);(Vj)jJ)J=kであるようなrグラフ型(r[k])とし,各eEごとにEeAeを考える.
E(eE1Ee|VJ)δ
が満たされるならば,ある(Ee)eEeEAeが存在して
eEEe=
かつ任意のεEに対して
E(1EeEe|VJ)ε
が成立.さらに以下の複雑度条件を満たすように(Ee)eEをとることができる.各fR={fB(J):f[0,r1]}に対してBfAfの部分加法族であるような族(Bf)fRが存在して,任意のfRに対して
cpx(Bf)C
が成り立ち,任意のeEに対して
EefeBf
が成り立つ.

????

情報量が濃すぎて何を言っているのかよくわかりません.少しずつ解剖していきます.まずは記号を確認しておきます.かなり丁寧にやるので,わかってる方は飛ばしてください.

記号

定理中のJJ=kなので,[k]と考えてもよいです.

集合族(Vj)j[k]

(Vj)j[k]={V1,,Vk}である.各頂点小集合Vjは頂点の有限個の集合.

頂点小集合Vjたちのうち,r個を指定するのがeJです.e=r個の頂点小集合Vjに対し,その直積を考えます.

直積Ve=jeVj

Ve=jeVj={(vj)je:(vjVj),je}
である.Vjは頂点小集合で,Veは指定したe個の頂点小集合から1つずつ元(頂点)をとってきた組のこと.

直積Ve頂点小集合Vjは全然違うので混同しないよう注意してください.なお,Ve=ΠjeVjです.(このΠは総積記号)

標準射影の話をします.(本書では説明がない)

標準射影

eJとし,全射写像πe
πe:jJVjjeVj(vj)jJ(vj)je
と定義する.

Veの元のうち,eで指定した頂点小集合からとった頂点だけを取り出すのがπeです.裏を返せば,その逆像がπe1(X)=X×VJe,(XVe)と表現できます.逆像πe1(X)VJの部分集合です.

さて,加法族Aeを構成します.

加法族Ae

Ae={πe1(Ee)P(VJ):EeP(Ve)}と定義する.

Veから任意に部分集合Eeをとってきてπe1(Ee)を考え,すべて集めて集合にしたのがAeです.これが実際に加法族であることを確認します.まず,Veを取ってくるとπe1()=です.(空集合と有限集合の直積は空集合なので)

Aeの元とはVeの部分集合Xを選んだ直積X×VJeです.あるいはVJ=Ve×VJeからVeの一部の元と

また,任意のEe,Eeを取ってきて,πe1(Ee)πe1(Ee)を考えると,πe1(Ee)πe1(Ee)=(Ee×VJe)(Ee×VJe)=(EeEe)×VJeとなり,これは確かにAeに含まれています.

最後にEeに対してπe1(VeEe)を考えると,VeEeVeより,確かにAeに含まれています.

よってAeが加法族であることが分かりました.また,作り方よりVeAeは1対1で対応していることも分かりました.

定理の主張

主張を追っていきます.前前回のk部ハイパーグラフ版ハイパーグラフ除去補題(以下k部版という)の主張と照らし合わせて見ていきます.

k部ハイパーグラフ版ハイパーグラフ除去補題

正整数kと正の実数ε>0に対して,δ=δPHRL(k,ε)が存在して,以下が成立する.(H;(Vj)jJ)J=kであるようなrグラフ型(r[k]),EHの辺集合とする.各eEごとに集合EeΠiJVj
を考える.もし
H((Vj)jJ;(Ee)eE)δΠjJVj
が満たされるならば,各eEに対してEejJVjであるような族(Ee)eEが存在して

H((Vj)jJ;(Ee)eE)=
かつ任意のeEに対して
(EeEe)εΠjJVj
が成り立つ.

仮定の記述の対応

まず

強化版

正整数kと正の実数ε>0に対して,δ=δSHRL(k,ε)およびC=CSHRL(k,ε)>0が存在して,以下が成立する.((J,E);(Vj)jJ)J=kであるようなrグラフ型(r[k])とし,各eEごとにEeAeを考える.

rグラフ型を用意し,eE(Jr)をとり,加法族Aeを考えます.注意すべきはEeAeの元として取っていることです.つまりEeVJです.先ほどはVeの部分集合として取っていました.(Eeの取り方は与えられる必要がある)

Eeについて

強化版に出てくるEer個の各頂点小集合に頂点をもち,kr個の残りの頂点小集合については頂点の選び方が自由であるようなグラフたちの頂点集合(VJの部分集合)です.

k部版に出てくるEeVeの部分集合です.kr個の残りの頂点小集合について考えているか否かの違いがあります.

k部版のEeは強化版のEeを用いてπe(Ee)と表されます.

強化版

eEごとにEeAeを考える.
E(eE1Ee|VJ)δ
が満たされるならば

これはk部版では

k部版

もし
H((Vj)jJ;(Ee)eE)δΠjJVj
が満たされるならば

に対応します.

H=(J,E),DH=((Vj)jJ;(Ee)eE)として
H(DH)={(vj)jJiJVj:eE,(vj)jeEeVe}
でした.H(DH)
「グラフDH中に含まれる,各頂点小集合に頂点を1つずつもつようなHと同型な部分グラフの個数」
を表していました.

定義より,
E(eE1Ee|VJ)=1VJvVJeE1Ee(v)
VJ=ΠjJVjです.
vVJeE1Ee(v)=H(DH)であることを確認します.

eE1Ee(v)vVJが各Eeすべてに含まれている場合のみ1,そうでないなら0を返す関数です.
つまり,vk個の各頂点小集合に頂点を1つずつもつHと同型な部分グラフの頂点集合である場合,1を返す(カウントする)ということです.

そして,すべてのvVJについて数え上げるので,結局
vVJeE1Ee(v)

「各頂点小集合に頂点を1つずつもつHと同型な部分グラフの個数」
であるので
vVJeE1Ee(v)=H(DH)が確かめられました.

Hの除去の記述の対応

強化版

ある(Ee)eEeEAeが存在して
eEEe=
かつ任意のεEに対して
E(1EeEe|VJ)ε
が成立.

k部版

eEに対してEejJVjであるような族(Ee)eEが存在して

H((Vj)jJ;(Ee)eE)=
かつ任意のeEに対して
(EeEe)εΠjJVj
が成り立つ.

この対応を見ていきます.

eEEe=

H((Vj)jJ;(Ee)eE)=

の対応はわかりやすいですね.Hを除去した後,もうHが含まれていないことを表しています.Eeの取り方が違うので,強化版の方がすっきりと記述できています.

強化版

かつ任意のεEに対して
E(1EeEe|VJ)ε
が成立.

k部版

かつ任意のeEに対して
(EeEe)εΠjJVj
が成り立つ.

これも大丈夫でしょう.
E(1EeEe|VJ)=E(1πe(Ee)πe(Ee)|Ve)より分かります.

複雑度条件

最後に複雑度条件について考えます.

複雑度条件

fR={fB(J):f[0,r1]}に対してBfAfの部分加法族であるような族(Bf)fRが存在して,任意のfRに対して
cpx(Bf)C
が成り立ち,任意のeEに対して
EefeBf
が成り立つ.

fe同様にJの中からいくつか指定する働きを持っています.fごとに加法族Afをとると,その「あまり複雑でない」部分加法族の集合(Bf)fRについて
EefeBf
であるということです.イメージが付きづらいですが,多次元セメレディの定理の証明には不要だそうなので,とりあえず流しておきます.

証明の流れ

正則化補題,数え上げ補題を先に示し,それらを用いてハイパーグラフ除去補題を証明します.

正則化補題+数え上げ補題
ハイパーグラフ除去補題

次回

定理を理解するのにかなり時間がかかりましたが,次こそは証明に入ります.正則化補題をやります.

感想

主張理解するだけでこんなにかかるとは...

謝辞

ここまで読んで下さりありがとうございました.誤植等指摘よろしくお願いいたします.

投稿日:2024425
更新日:2024426
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itou
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