こんにちは,itouです.今回は以下の定理,強化版ハイパーグラフ除去補題を理解していきましょう.強化版ハイパーグラフ除去補題はハイパーグラフ除去補題を前回用意した道具を使って書き直したものです.
まずは定理のステートメントを見てみます.
記法
をグラフ型とする.の部分集合に対して,以下の記法を用いる.と略記し,とくにとする.を標準射影とする.また,とする.
強化版ハイパーグラフ除去補題
正整数と正の実数に対して,およびが存在して,以下が成立する.をであるようなグラフ型とし,各ごとにを考える.
が満たされるならば,あるが存在して
かつ任意のに対して
が成立.さらに以下の複雑度条件を満たすようにをとることができる.各に対してがの部分加法族であるような族が存在して,任意のに対して
が成り立ち,任意のに対して
が成り立つ.
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情報量が濃すぎて何を言っているのかよくわかりません.少しずつ解剖していきます.まずは記号を確認しておきます.かなり丁寧にやるので,わかってる方は飛ばしてください.
記号
定理中のはなので,と考えてもよいです.
頂点小集合たちのうち,個を指定するのがです.個の頂点小集合に対し,その直積を考えます.
直積
である.は頂点小集合で,は指定した個の頂点小集合から1つずつ元(頂点)をとってきた組のこと.
直積頂点小集合は全然違うので混同しないよう注意してください.なお,です.(このは総積記号)
標準射影の話をします.(本書では説明がない)
の元のうち,で指定した頂点小集合からとった頂点だけを取り出すのがです.裏を返せば,その逆像がと表現できます.逆像はの部分集合です.
さて,加法族を構成します.
から任意に部分集合をとってきてを考え,すべて集めて集合にしたのがです.これが実際に加法族であることを確認します.まず,を取ってくるとです.(空集合と有限集合の直積は空集合なので)
の元とはの部分集合を選んだ直積です.あるいはからの一部の元と
また,任意のを取ってきて,を考えると,となり,これは確かにに含まれています.
最後にに対してを考えると,より,確かにに含まれています.
よってが加法族であることが分かりました.また,作り方よりとは1対1で対応していることも分かりました.
定理の主張
主張を追っていきます.前前回の部ハイパーグラフ版ハイパーグラフ除去補題(以下部版という)の主張と照らし合わせて見ていきます.
部ハイパーグラフ版ハイパーグラフ除去補題
正整数と正の実数に対して,が存在して,以下が成立する.をであるようなグラフ型,をの辺集合とする.各ごとに集合
を考える.もし
が満たされるならば,各に対してであるような族が存在して
かつ任意のに対して
が成り立つ.
仮定の記述の対応
まず
強化版
正整数と正の実数に対して,およびが存在して,以下が成立する.をであるようなグラフ型とし,各ごとにを考える.
グラフ型を用意し,をとり,加法族を考えます.注意すべきはをの元として取っていることです.つまりです.先ほどはの部分集合として取っていました.(の取り方は与えられる必要がある)
について
強化版に出てくるは個の各頂点小集合に頂点をもち,個の残りの頂点小集合については頂点の選び方が自由であるようなグラフたちの頂点集合(の部分集合)です.
部版に出てくるはの部分集合です.個の残りの頂点小集合について考えているか否かの違いがあります.
部版のは強化版のを用いてと表されます.
これは部版では
に対応します.
として
でした.は
「グラフ中に含まれる,各頂点小集合に頂点を1つずつもつようなと同型な部分グラフの個数」
を表していました.
定義より,
です.
であることを確認します.
はが各すべてに含まれている場合のみ,そうでないならを返す関数です.
つまり,が個の各頂点小集合に頂点を1つずつもつと同型な部分グラフの頂点集合である場合,を返す(カウントする)ということです.
そして,すべてのについて数え上げるので,結局
は
「各頂点小集合に頂点を1つずつもつと同型な部分グラフの個数」
であるので
が確かめられました.
の除去の記述の対応
部版
各に対してであるような族が存在して
かつ任意のに対して
が成り立つ.
この対応を見ていきます.
と
の対応はわかりやすいですね.を除去した後,もうが含まれていないことを表しています.の取り方が違うので,強化版の方がすっきりと記述できています.
これも大丈夫でしょう.
より分かります.
複雑度条件
最後に複雑度条件について考えます.
複雑度条件
各に対してがの部分加法族であるような族が存在して,任意のに対して
が成り立ち,任意のに対して
が成り立つ.
は同様にの中からいくつか指定する働きを持っています.ごとに加法族をとると,その「あまり複雑でない」部分加法族の集合について
であるということです.イメージが付きづらいですが,多次元セメレディの定理の証明には不要だそうなので,とりあえず流しておきます.
証明の流れ
正則化補題,数え上げ補題を先に示し,それらを用いてハイパーグラフ除去補題を証明します.
次回
定理を理解するのにかなり時間がかかりましたが,次こそは証明に入ります.正則化補題をやります.
感想
主張理解するだけでこんなにかかるとは...
謝辞
ここまで読んで下さりありがとうございました.誤植等指摘よろしくお願いいたします.