この記事において$\R$の部分集合には$\R$の通常の位相による誘導位相を与えるとします.このとき$\Q$と$\Q\setminus\{0\}$が位相同型(同相)であることを証明したいと思います.
核心となるのは次の補題です.
$A,B$を$\R$の稠密部分集合とする.$A,B$が順序同型ならば位相同型である.
$A,B$を$\R$の稠密部分集合とし,$f\colon A\to B$を順序同型写像とする.$f$が位相同型写像でもあることを示す.$a\in A$と$\varepsilon>0$を任意にとる.$B$は稠密であるから,
$$\ex b\in B,\;0< f(a)-b<\varepsilon$$
$f$は全単射であるから,
$$\ex a'\in A,\;f(a')=b$$
このとき$0< f(a)-f(a')$であり$f$は順序同型なので$a'< a$である.$a'< x< a$について,
$$0< f(a)-f(x)< f(a)-f(a')<\varepsilon$$
が成り立つ.よって$f$は連続である.$A$と$B$を入れ替えれば$f^{-1}$も連続である.
したがって$f$は位相同型写像である.
この補題によって順序同型の問題に帰着することができそうです.
$a,b\in\R,a< b$に対し,
$$(a,b]_\Q:=\Q\cap(a,b]$$
$$\Q_{>a}:=\Q\cap(a,\infty)$$
などのように表すことにする.
一般的な記法ではない(と思う).
一般に$a,b,c,d\in\Q,a< b,c< d$に対し,
$$h_{a,b}^{c,d}\colon (a,b]_\Q\to(c,d]_\Q,\; x\mapsto c+\frac{d-c}{b-a}(x-a)$$
は順序同型である.
$h_{a,b}^{c,d}$は全単射であり,正数倍拡大と平行移動の組合せなので順序を保つ.
$X=A\sqcup B$を集合の非交和,$f\colon A\to Y,g\colon B\to Y$を写像とするとき,
$$f\sqcup g\colon X\to Y,\ x\mapsto\begin{dcases}f(x) &x\in A\\ g(x) &x\in B
\end{dcases}
$$
が定義される.無限個の非交和でも同様に定義する.
$\Q$と$\Q\setminus\{0\}$は位相同型
$\Q$と$\Q\setminus\{0\}$は共に$\R$の稠密部分集合であるから,補題1より順序同型$f\colon\Q\setminus\{0\}\to\Q$を構成すればよい.そのために順序同型$f_+\colon\Q_{>0}\to\Q_{>\sqrt2}$を構成する.
$$\Q_{>0}=(0,1]_\Q\sqcup \Q_{>1}$$
$$\Q_{>\sqrt{2}}=(\sqrt{2},2]_\Q\sqcup\Q_{>2} $$
と非交和分解できることに注意する.
まず順序同型$f_0\colon(0,1]_\Q\to(\sqrt2,2]_\Q$を構成する.
\begin{align} (0,1]_\Q &=\bigsqcup_{j=0}^\infty(\fr{1}{j+2},\fr{1}{j+1}]_\Q\\ &=\cdots\sqcup(\fr{1}{3},\fr{1}{2}]_\Q\sqcup(\fr{1}{2},1]_\Q \end{align}
\begin{align}
(\sqrt{2},2]_\Q
&=\bigsqcup_{j=0}^\infty(\fr{\lceil 10^{j+1}\sqrt{2}\rceil}{10^{j+1}},\fr{\lceil 10^j\sqrt{2}\rceil}{10^j}]_\Q\\
&=\cdots\sqcup(1.415,1.42]_\Q\sqcup(1.42,1.5]_\Q\sqcup(1.5,2]_\Q
\end{align}
と非交和分解する.補題2によって各区間ごとに順序同型$g_j$を
$$g_j:=h_{\fr{1}{j+2},\fr{1}{j+1}}^{\fr{\lceil 10^{j+1}\sqrt{2}\rceil}{10^{j+1}},\fr{\lceil 10^j\sqrt{2}\rceil}{10^j}}\colon(\fr{1}{j+2},\fr{1}{j+1}]_\Q\to (\fr{\lceil 10^{j+1}\sqrt{2}\rceil}{10^{j+1}},\fr{\lceil 10^j\sqrt{2}\rceil}{10^j}]_\Q$$
で定めることができ,順序同型
$$f_0:=\bigsqcup_{j=0}^\infty{g_j}\colon(0,1]_\Q\to(\sqrt2,2]_\Q$$
が得られる.
また,
$$f_1\colon\Q_{>1}\to\Q_{>2},\ x\mapsto2x$$
と定めるとこれは順序同型である.よって順序同型
$$f_+:=f_0\sqcup f_1\colon\Q_{>0}\to\Q_{>\sqrt2}$$
が得られる.さらに
$$f_{-}\colon\Q_{<0}\to\Q_{<-\sqrt2},\ x\mapsto -f_+(-x)$$
で定めるとこれも順序同型である.そこで
$$\Q\setminus\{0\}=\Q_{<0}\sqcup\Q_{>0}$$
$$\Q=\Q_{<\sqrt{2}}\sqcup\Q_{>\sqrt{2}}$$
という非交和分解に注意して,
$$f:=f_{-}\sqcup f_{+}\colon \Q\setminus\{0\}\to\Q$$
とおけば,これは求める順序同型である.
位相同型の問題を順序同型の問題に帰着することができました.もし議論に誤りや不足があった場合は教えて頂けると助かります.