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半直積について1 半直積の定義と例

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何回かに分けて半直積の性質を調べていきたいと思います.

$G$を群, $G\geq N$とする. $G$の部分群$H$
$G=N・H,\ N\cap H=\{e\}$
を満たすとき$N$$H$の補群という.

$G$を群, $G\triangleright K$とする. $G$の部分群$H$
$G=K・H,\ K\cap H=\{e\}$
を満たすとき$G$をKと$H$の半直積という.つまり$K$が補群$H$を持つ.

ここで, $G$がいつ$G/K$(と同型な部分群)とKの半直積になるか考えてみます.(直積は二つの正規部分群の元同士が可換でなければならずこの条件は多くに場合に満たしそうにありません.)
この条件は$K$が補群を持つことと同値です.

$G\triangleright K$とする.$G$$K$$H$の半直積なら$H$$G/K$に同型である.

$G$が補群$H$を持つとすると$\pi:H\to G/K$, $h\mapsto hK$は同型である.
単射性を見る. $hK=K$とすると$h\in K\cap H=\{e\}$となり$h=e$.
全射性を見る.任意に$g\in G$を取る. 仮定から$g=hk$, $h\in H$, $k\in K$と表せる. $h^{-1}g=k\in K$から$hK=gK$であり$\pi (h)=gK$である.

逆に$G$$K$$G/K$に同型な部分群の半直積なら$K$が補群を持つことは定義から明らかです.

ところで, 上のように半直積にならないことはあるのでしょうか.

$2\mathbb{Z}\triangleleft \mathbb{Z}$において, $\mathbb{Z}$$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$と同型な部分群を持たないので半直積にならない.

$\mathbb{Z}$の元は$0$以外位数が無限なので割ることで初めて有限群になります.

4元数群$Q_3$に対し$\{1,\ -1\}\triangleleft Q_3$を考えると商はクラインの4群に同型だが, 位数2の元は$-1$のみなので$Q_3$はクラインの4群と同型な部分群を含まない.

では, いつ半直積になるのでしょうか.次の同値な条件が存在します.

$G$を群, $G\triangleright K$とする.次の4条件は同値.
(1)$K$$G$で補群を持つ.
(2)ある$Q\leq G$が存在して任意の$g\in G$$g=ax$, $a\in K$, $x\in Q$と一意に表せる.
(3)ある準同型$s:G/K\to G$が存在して$\pi\circ s=1_{G/K}$を満たす.
(短完全列$1\to K \to G \to G/K \to 1$が分裂する.)
(4)ある準同型$r:G\to G$が存在して$\text{Ker}\ r=K$, $r(g)=g$, $g\in \text{im}\ r$を満たす.

(1)$\Rightarrow$(2)
$Q$を補群として$ax=a^{\prime}x^{\prime}$, $a,\ a^{\prime}\in K$, $x,\ x^{\prime}\in Q$とする. $a^{\prime -1}a=x^{\prime}x^{-1}\in K\cap Q=\{e\}$なので$a=a^{\prime}$, $x=x^{\prime}$.よって一意に表せる.
(2)$\Rightarrow$(3)
仮定を用いて$s:G/K\to G$$Kx$ ($x\in Q$)と表したとき$s(Kx)=x$として定める. $Kx=Kx^{\prime}, x,\ x^{\prime}\in Q$とする.ここから一つ元をとると$kx=k^{\prime}x^{\prime}$ , $k,\ k^{\prime}\in K$と2通りに表せるが, 仮定の一意性から$k=k^{\prime}$, $x=x^{\prime}$なので$s$はwell-defined. $Q$が部分群をなすことと商群の積の定義から準同型であることは明らか. $g\in Q$とすると$\pi\circ s(Kg)=\pi(g)=Kg$なので$\pi\circ s=1_{G/K}$.
(3)$\Rightarrow$(4)
$s\circ \pi$が条件を満たすことを見る. $s(Kg)=s(Kg^{\prime})$ , $g,\ g^{\prime}\in G$とすると仮定から$Kg=\pi\circ s(Kg)=\pi\circ s(Kg^{\prime})=Kg^{\prime}$となり$s$は単射.よって
$g\in\text{Ker}\ s\circ\pi\Leftrightarrow Kg\in\text{Ker}\ s\Leftrightarrow g\in K$となり$\text{Ker}\ s\circ\pi=K$.
また$g\in \text{Im}\ s\circ\pi$とし$g=s\circ\pi(g^{\prime})$, $g^{\prime}\in G$とすると$s\circ\pi(s\circ\pi(g^{\prime}))=s\circ(\pi\circ s)\circ\pi(g^{\prime})=s\circ\pi(g^{\prime})$.
(4)$\Rightarrow$(1)
$g\in G$に対し$r(gr(g)^{-1})=r(g)r(r(g))^{-1}=e$なので$gr(g)^{-1}\in \text{Ker}\ r$. $g=gr(g)^{-1}r(g)$なので$\text{Im}\ r$$K$の補群である.

最後の条件が示すようにべき等な自己準同型が存在して像が核$K$の補群になっているんですね.
次回は十分条件を調べたいと思います.

投稿日:116
更新日:117

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