乗法付値の定義を思い出しておきます.$K$は体とします.
$K$から$\mathbb{R}_{\geq 0}$への写像$\varphi$が以下の条件を満たすとき$\varphi$を$K$の乗法付値という.
ここで,2つ目の条件を$\varphi(x+y)\leq\max(\varphi(x),\varphi(y))$と強くしたものを非アルキメデス付値といいます.反対に,乗法付値であって非アルキメデス付値でない付値のことをアルキメデス付値と言います.
$\mathbb{Q}$に通常の絶対値を考えたものはアルキメデス付値である.
$x=2,y=1$とすればわかる.
付値体は完備化を考えることができました.労力削減ということで,以下の命題の証明は参考文献[1]の139ページをご覧ください.
$L/K$を(代数的とは限らない)体の拡大,$\varphi_L$を$L$上の乗法付値,$\varphi_K$を$\varphi_L$の$K$への制限とするとき,$\varphi_K$が非アルキメデス付値であることと,$\varphi_L$が非アルキメデス付値であることは同値である.
この命題から,付値体を完備化しても,アルキメデス性は継承されるということが分かります.ということで,次の命題を示します.
非アルキメデス完備付値体において,
$$\lim_{n\to\infty}a_n=0\Rightarrow \sum_{n=0}^{\infty}a_n<\infty$$
が成り立つ.
$s_m = \sum_{n=0}^{m}a_n$がコーシー列であることを示せばよい.|・|で付値のことを表すものとします.$|s_m -s_l|=|a_m + a_{m-1}+\cdots + a_{l+1}|\leq\max(|a_m|,\cdots|a_{l+1}|)$で,$m,l$を無限大に飛ばすと,右辺は$\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=0$になるので,$s_m$はコーシー列.よって今考えている空間の完備性から,命題が成り立つ.
アルキメデス付値だと,例えば$a_n = 1/n$のとき,級数は発散したので非アルキメデス付値っていいんやな~と思っていただければ幸いです.ちなみになんですけど,距離構造の入った位相体で付値体にならないものって存在するのでしょうか?前回,コメントをいただいてから考えてみたのですが,思いつけなかったのでここで愚痴をこぼしておきます.それでは今回も見ていただきありがとうございました.