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大学数学基礎解説
文献あり

クリストッフェル記号の簡単な計算方法

3014
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はじめに

 Mn次元Riemann多様体とし、g=gij(x1,xn)dxidxjを計量の局所的な表示とする。また、gijgijの逆行列とし、gij,k=gijxkとする。
 クリストッフェル記号Γjkiは以下で定義される。

クリストッフェル記号(Christoffel symbols)

Γjki=12gil(glj,k+gkl,jgjk,l)

 上記のクリストッフェル記号は接続係数とも呼ばれる。クリストッフェル記号は共変微分の計算に必要となるものであり、上記の定義に従って計量の1階微分を計算すれば得られるが、計算を少しだけ楽にする方法があるので紹介する。

変分原理によるクリストッフェル記号の計算

2次形式のLagrangianは測地線方程式を導く

ある局所座標上の曲線γ:[t0,t1]M;t(γ1(t),,γn(t))に対して,γ˙i=dγidt,γ¨i=d2γidt2とする。また,汎関数S:γRを以下で定義する.

S[γ]=t0t1dt12gij(γ(t))γ˙iγ˙j

このとき,S[γ]の「端点を固定したの停留解」は、以下の測地線方程式を満たす.

γ¨i+Γjkiγ˙jγ˙k=0

「端点を固定したときの停留解」は、L(γ,γ˙)=12gij(γ)γ˙iγ˙iをLagrangianとしたときのEuler-Lagrange方程式の解である。

ddtLγ˙iLγi=0

ここで、

ddtLγ˙i=gijγ¨j+gij,kγ˙jγ˙k

Lγi=12gjk,iγ˙jγ˙k

となるので、これを整理すると、測地線方程式γ¨i+Γjkiγ˙jγ˙k=0を得る。

この命題から、以下に述べる手順がクリストッフェル記号の正しい計算方法を与えることがわかる。

クリストッフェル記号の計算方法

(1)LagrangianL=12gijx˙ix˙jを書き下す。
(2)Euler-Lagnrange方程式ddtLx˙iLxi=0を書き下す。
(3)測地線方程式x¨i+Γjkix˙jx˙k=0を見比べてΓjkiを読み取る。

弧長との比較

 測地線方程式の導出では、汎関数として弧長を考えるのが普通である。

S[γ]=01dtgij(γ)γ˙iγ˙j

ここで、弧長パラメタs(t)=0tdtgij(γ)γ˙iγ˙jを導入すると、汎関数Sの停留解は測地線方程式を満たす。

δS=0d2ds2γi+Γjkidγjdsdγkds=0

 この議論は、最短経路が測地線方程式を満たすことを理解するのに必要であるが、Lagrangianに平方根が含まれていたり、弧長パラメタへの変換が必要なので、クリストッフェル記号の計算に対しては実用的ではない。

計算例

3次元球座標

 3次元球座標の計量テンソルはds2=dr2+r2dθ2+r2sin2θdϕ2で与えられるので、Lagrangianは、

L(r,θ,ϕ,r˙,θ˙,ϕ˙)=12r˙2+12r2θ˙2+12r2sin2θϕ˙2

となる。また、

ddtLr˙Lr=r¨rθ˙2rsin2θϕ˙2

ddtLθ˙Lθ=r2θ¨+2rr˙θ˙r2sinθcosθϕ˙2

ddtLϕ˙Lϕ=r2sin2θϕ¨+2rsin2θr˙ϕ˙+2r2sinθcosθθ˙ϕ˙

となるので、Euler-Lagrange方程式として、

{r¨rθ˙2rsin2θϕ˙2=0θ¨+21rr˙θ˙sinθcosθϕ˙2=0ϕ¨+21rr˙ϕ˙+2cotθθ˙ϕ˙=0

を得る。これと、x¨i+Γjkix˙jx˙k=0を見比べて、以下を得る。

Γθθr=rΓϕϕr=rsin2θΓrθθ=Γθrθ=1rΓϕϕθ=sinθcosθΓrϕϕ=Γϕrϕ=1rΓθϕϕ=Γϕθϕ=cotθ

上記以外のΓjkiはゼロ。

静的な球対称時空(一般相対性理論)

 一般相対性理論から例を取り上げよう。ν(r)λ(r)を適当な関数として、計量がds2=eν(r)dw2+eλ(r)dr2+r2dθ2+r2sin2θdϕ2で与えられる時空を考える。特に、eν=eλ=1ar1としたのが、シュバルツシルト半径aのシュバルツシルト時空である。

 この計量は符号がひとつマイナスとなっているが、同じ手順でクリストッフェル記号を求められる。まず、Lagrangianは、

L(w,r,θ,ϕ,w˙,r˙,θ˙,ϕ˙)=12eνw˙2+12eλr˙2+12r2θ˙2+12r2sin2θϕ˙2

となる。また、

ddtLw˙Lw=eνw¨eννr˙w˙

ddtLr˙Lr=eλr¨+eλλr˙2+12eννw˙212eλλr˙2rθ˙2rsin2θϕ˙2

となる。なお、θϕについては、(例1)3次元球座標と全く同じ式になるので省略する。以上より、

{w¨+νw˙r˙=0r¨+12eνλνw˙2+12λr˙2reλθ˙2reλsin2θϕ˙2θ¨+21rr˙θ˙sinθcosθϕ˙2=0ϕ¨+21rr˙ϕ˙+2cotθθ˙ϕ˙=0

を得る。これと、x¨i+Γjkix˙jx˙k=0を見比べて、以下を得る。

Γwrw=Γrww=12νΓwwr=12eνλν,Γrrr=12λ,Γθθr=reλ,Γϕϕr=reλsin2θΓrθθ=Γθrθ=1r,Γϕϕθ=sinθcosθΓrϕϕ=Γϕrϕ=1r,Γθϕϕ=Γϕθϕ=cotθ

上記以外のΓjkiはゼロ。

参考文献

[1]
佐々木節, 一般相対論, 物理学教科書シリーズ, 産業図書, 1996
投稿日:2023423
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  2. 変分原理によるクリストッフェル記号の計算
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