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Wolstenholme-Glaisherの合同式のFibonacci類似

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Babbage, Wolstenholme, Glaisherの合同式

$p$を素数,$n$を自然数とする.このとき, 以下のような興味深い合同式が知られている.

・C. Babbage (1819)
$\displaystyle \qquad{2p-1 \choose p-1} \equiv 1$ $(mod\ \ p^2\ )$ for $p \geq3$;

・J. Wolstenholme (1862)
$\displaystyle \qquad{2p-1 \choose p-1} \equiv 1$ $(mod\ \ p^3\ )$ for $p \geq5$;

・J. Glaisher (1900)
$\displaystyle \qquad{np-1 \choose p-1} \equiv 1$ $(mod\ \ p^3\ )$ for $p \geq5$.

あるタイプの合同式が19世紀にゆっくり進化しているのがわかる. それから100年以上たつが, 同タイプの合同式は今でも進化を続けている. [1]で詳しく述べられている.

Fibonomial coefficients

Fibonacci数$F_{n}$に対して, 2項係数のFibonacci類似として次のFibonomial coefficientsが知られている.

Fibonomial coefficients

自然数 $n \geq k>0$ に対して
$ \quad \displaystyle {n \choose k}_{F}:=\frac{F_{n}F_{n-1}F_{n-2}\cdots F_{n-k+2}F_{n-k+1}}{F_{k}F_{k-1}F_{k-2}\cdots F_{2}F_{1}}\quad$ with $\displaystyle \quad {n \choose 0}_{F}:=1$.

なお, Fibonomial coefficientsは整数になることが知られている.
 次に, Fibonomial coefficientsを用いたWolstenholme-Glaisherの合同式の類似を示す.

Wolstenholme-Glaisherの合同式のFibonacci類似

Wolstenholme-Glaisherの合同式のFibonacci類似

奇素数$p$と自然数$n$に対して
$\displaystyle \quad {np-1 \choose p-1}_{F}\equiv(-1)^{\frac{(n-1)(p-1)}{2}}$ (mod $F_{2p}F_{p}$).

$F_{p}^3$を法としては成り立たないが, より大きな$F_{2p}F_{p}$を法として成立する.
これはAdvanced problem H-737として私が提供した問題で, それに対する解答がフランスの数学者Christian Ballot氏により与えられている. また, オリジナルではLucas数$L_{p}$を使った $F_{p}^2L_{p}$を法としているが, もちろん同じものである.
実は, 私が用意していた証明は, Ballot氏の証明とは全く異なるものであるのでここに書いておく.

既知の関係式 $F_{m+a}F_{m+b}=F_{m}F_{m+a+b}+(-1)^mF_{a}F_{b}$ (see [3] (20a))を使って,
           $F_{np-p+k}F_{np-k}=F_{np-p}F_{np}+(-1)^{np-p}F_{k}F_{p-k}$.
すなわち       $F_{np-p+k}F_{np-k}=F_{(n-1)p}F_{np}+(-1)^{n-1}F_{k}F_{p-k}$.          (1)
また, よく知られた性質 $gcd(F_{a},F_{b})=F_{gcd(a,b)}$を使って,
      $gcd(F_{np}F_{(n-1)p},F_{2p}F_{p})=F_{2p}F_{p}, \quad gcd(F_{2p}F_{p},F_{k})=1$ for $1 \leq k \leq p-1$.  (2)
(1),(2)を用いることで次の様に式変形ができる.
           $\displaystyle {np-1 \choose p-1}_{F}=\prod_{k=1}^{p-1}\frac{F_{np-k}}{F_{k}}=\prod_{k=1}^{\frac{p-1}{2}}\frac{F_{np-k}F_{np-p+k}}{F_{k}F_{p-k}}$
          $\displaystyle =\prod_{k=1}^{\frac{p-1}{2}}\frac{F_{(n-1)p}F_{np}+(-1)^{n-1}F_{k}F_{p-k}}{F_{k}F_{p-k}}$ (by (1))
          $\displaystyle =\prod_{k=1}^{\frac{p-1}{2}}\biggl(\frac{F_{np}F_{(n-1)p}}{F_{k}F_{p-k}}+(-1)^{n-1}\biggr)\equiv \prod_{k=1}^{\frac{p-1}{2}}(-1)^{n-1}$ (by (2))
          $\displaystyle =(-1)^{\frac{(n-1)(p-1)}{2}}$ (mod $F_{2p}F_{p}$).  $\blacksquare$

さらなる発展

2015年, 上記の未公表であった私の証明をBallot氏に見ていただき, 彼はそれをとても気に入ってくれた. 2020年, 上記の命題1をより一般的な形にしてBallot氏は論文[4]の中で書いている. その際, 私の証明のアイデアを利用していることがとてもうれしい(もちろん使用を許諾している).

(参考文献)
[1] R. Mestrovic, Wolstenholme's theorem: Its Generalizations and Extensions in the last hundred and fifty years (1862--2012), Arxiv preprint arXiv:1111.3057 (2011)
[2] H.O., Advanced problem H-737, The Fibonacci Quarterly 51.2(2013)
[3] S. Vajda, Fibonacci and Lucas Numbers and the Golden Section, DOVER (2008)
[4] C.Ballot, "Another Lucasnomial Generalization of Wolstenholme’s Congruence." Journal of Integer Sequences Vol.23(2020)

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