こんにちは ごててんです 最近は数学を一切せずにブルーロックを読んでいました.
群論を少し勉強したことがある人向けの記事です. 準同型を知っていると読めると思います.
群論をそれなりに勉強した人がタイトルを見たらまあ何を紹介する記事なのか全部わかると思うので読まなくていいです(???)
この記事では Cayleyの定理(この名前が適切かは分かりません()) を当たり前だと思えることが目標です.
$G$を位数が$n$の有限群, $S_n$を$n$次対称群とする. このとき, $G$から$S_n$への単射準同型が存在する.
いきなり証明に入らずに具体例を見てみましょう. 具体例を説明するうちに上の定理の証明の手法を用いるので, 具体例を読み終わったら一旦自分で証明を考えてみるのもいいかもしれません!
では具体例ですが, 簡単なものから行きます. $\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$から$S_4$への単射準同型を考えてみます.
そこでなのですが, 通常$S_4$の元は$1,2,3,4$を用いて$(12)(34), (123)$などと書かれますが 見やすくするために$S_4$の元を$0,1,2,3$で書くことにします.
さて結果から出してみます. $\phi: \mathbb{Z}/4\mathbb{Z} \rightarrow S_4$を次のようにすればうまくいきます.
$\bar{0}$$ \mapsto \begin{pmatrix} 0 & 1 & 2 & 3\\ 0 & 1 & 2 & 3 \end{pmatrix} = 1 $
$\bar{1}$$ \mapsto \begin{pmatrix} 0 & 1 & 2 & 3\\ 1 & 2 & 3 & 0 \end{pmatrix} = (0123) $
$\bar{2}$$ \mapsto \begin{pmatrix} 0 & 1 & 2 & 3\\ 2 & 3 & 0 & 1 \end{pmatrix} = (0123)^2 $
$\bar{3}$$ \mapsto \begin{pmatrix} 0 & 1 & 2 & 3\\ 3 & 0 & 1 & 2 \end{pmatrix} = (0123)^3 $
結果だけ見ればまあなんとなく「推察」から求めることができそうというのがありますが, これを「機械的に」行うことが証明のカギとなります. 機械的に上の対応を導出してみましょう!
さて, 記号を対応させておきます. $\bar{0}$を$0$, $\bar{1}$を$1$, $\bar{2}$を$2$, $\bar{3}$を$3$と対応させて考えます.
$\bar{2}$で考えてみます.
$\bar{2}$$ \mapsto
\begin{pmatrix}
0 & 1 & 2 & 3\\
&
\end{pmatrix}
$
この空白をどうやって埋めるか? 考えてみます.
$0$の行き先をどう定めるか. これを $\bar{2} + \bar{0} = \bar{2}$だから$2$に対応させる!と考えます.
$1$の行き先をどう定めるか. これを $\bar{2} + \bar{1} = \bar{3}$だから$3$に対応させる!と考えます.
$2$の行き先をどう定めるか. これを $\bar{2} + \bar{2} = \bar{0}$だから$0$に対応させる!と考えます.
$3$の行き先をどう定めるか. これを $\bar{2} + \bar{3} = \bar{1}$だから$1$に対応させる!と考えます.
その結果埋めたのが次, ということになります.
$\bar{2}$$ \mapsto \begin{pmatrix} 0 & 1 & 2 & 3\\ 2 & 3 & 0 & 1 \end{pmatrix} $
この例はわかりやすい例すぎてよくわからないと思うので, 少しだけわかりにくい例をやってみます.
$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$から$S_4$への単射準同型を考えてみます.
$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$の元を$1,2,3,4$と次のように対応させておきます.
$(\bar{0},\bar{0}) \longleftrightarrow 1$
$(\bar{1},\bar{0}) \longleftrightarrow 2$
$(\bar{0},\bar{1}) \longleftrightarrow 3$
$(\bar{1},\bar{1}) \longleftrightarrow 4$
さて, $(\bar{0},\bar{0})$ を機械的に$S_4$で実現しましょう. と言いたいところですがこれは単位元に行くしかないので問答無用で恒等置換$1$に対応します.
$(\bar{1},\bar{0})$ を機械的に$S_4$で実現しましょう.
$1$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{0}) + (\bar{0},\bar{0}) = (\bar{1},\bar{0})$だから$2$に対応させる!と考えます.
$2$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{0}) + (\bar{1},\bar{0}) = (\bar{0},\bar{0})$だから$1$に対応させる!と考えます.
$3$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{0}) + (\bar{0},\bar{1}) = (\bar{1},\bar{1})$だから$4$に対応させる!と考えます.
$4$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{0}) + (\bar{1},\bar{1}) = (\bar{0},\bar{1})$だから$3$に対応させる!と考えます.
よって, 次の対応となります.
$(\bar{1},\bar{0})$$ \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4\\ 2 & 1 & 4 & 3 \end{pmatrix} = (12)(34)$.
もう一つだけ例を計算してみます.
$(\bar{1},\bar{1})$ を機械的に$S_4$で実現しましょう.
$1$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{1}) + (\bar{0},\bar{0}) = (\bar{1},\bar{1})$だから$4$に対応させる!と考えます.
$2$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{1}) + (\bar{1},\bar{0}) = (\bar{0},\bar{1})$だから$3$に対応させる!と考えます.
$3$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{1}) + (\bar{0},\bar{1}) = (\bar{1},\bar{0})$だから$2$に対応させる!と考えます.
$4$の行き先をどう定めるか. これを $(\bar{1},\bar{1}) + (\bar{1},\bar{1}) = (\bar{0},\bar{0})$だから$1$に対応させる!と考えます.
よって, 次の対応となります.
$(\bar{1},\bar{1})$$ \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4\\ 4 & 3 & 2 & 1 \end{pmatrix} = (14)(23)$.
残りも計算してまとめると, 次のようになります.
$(\bar{0},\bar{0})$$ \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4\\ 1 & 2 & 3 & 4 \end{pmatrix} = 1 $
$(\bar{1},\bar{0})$$ \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4\\ 2 & 1 & 4 & 3 \end{pmatrix} = (12)(34) $
$(\bar{0},\bar{1})$$ \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4\\ 3 & 4 & 1 & 2 \end{pmatrix} = (13)(24) $
$(\bar{1},\bar{1})$$ \mapsto
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4\\
4 & 3 & 2 & 1
\end{pmatrix} = (14)(23)
$
Kleinの4元群だということを思い出せば当たり前な表示になりましたね!
さっきの対応の下の部分だけを見てみましょう.
1 | 2 | 3 | 4 |
2 | 1 | 4 | 3 |
3 | 4 | 1 | 2 |
4 | 3 | 2 | 1 |
これって, 演算の表になっているのでは!?ということになります.
そうです. さきほどまで行っていたのは, 演算の表を置換の下の部分に一行ずつ入れていけば, 対称群の部分群として埋め込むことができるのでは!? ということだったのです. これがこの記事のメインのアイデアです.
もう一度定理の主張を書きます.
$G$を位数が$n$の有限群, $S_n$を$n$次対称群とする. このとき, $G$から$S_n$への単射準同型が存在する.
はい. まずはちょっと見やすく記号を整理します. $G= \{ 1,2,3, ... , n \}$と書いて, 演算を$*$の記号で書き表すことにします.
写像$\phi : G \rightarrow S_n$を次で定めます.
$m$$ \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 & ... & n\\ m*1 & m*2 & ... & m*n \end{pmatrix} $
これが単射準同型であれば証明終了です!
写像, とさきほどは書いてしまいましたが 実は写像かどうかはちゃんとチェックしなければなりません.
なぜなら $ \begin{pmatrix} 1 & 2 & ... & n\\ m*1 & m*2 & ... & m*n \end{pmatrix} $ の下の段が本当に「$1$から$n$を一つずつ」であるかが分からないからです. 置換であるには, このチェックが必要です.
どうチェックするかですが, 左から$m$をかける写像が全単射であれば大丈夫で, その証明も簡単です. なぜなら左から$m^{-1}$をかける写像が逆写像になるからですね. 逆写像を持てば全単射です. よって上の対応は Well-defined です!
これも簡単です. 愚直に考えてみます.
$\phi(x)\phi(y) = \begin{pmatrix} 1 & 2 & ... & n\\ x*1 & x*2 & ... & x*n \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2 & ... & n\\ y*1 & y*2 & ... & y*n \end{pmatrix}$
$= \begin{pmatrix} 1 & 2 & ... & n\\ x*y*1 & x*y*2 & ... & x*y*n \end{pmatrix}$
$= \begin{pmatrix} 1 & 2 & ... & n\\ (x*y)*1 & (x*y)*2 & ... & (x*y)*n \end{pmatrix} $
$=\phi(x*y)$
よって準同型です!
これも落ち着いて考えれば簡単です.
$\phi(x) = \phi(y)$ とします. このとき
$\begin{pmatrix}
1 & 2 & ... & n\\
x*1 & x*2 & ... & x*n
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 & 2 & ... & n\\
y*1 & y*2 & ... & y*n
\end{pmatrix}$
が成立しています. つまり任意の$G$の元$m$に対して$x*m = y*m$です.
ということは! 右から$m$の逆元をかけて$x=y$がわかるので単射です! 証明完了!!!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
定理の主張をみるとなんとなくいい感じですが, 証明してみればなんてことない, 結構当たり前寄りの主張だと思えましたでしょうか. それでは~~~