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大学数学基礎解説
文献あり

Beukersによるζ(3)の無理性証明

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1978年,Apéryは
ζ(3)=n=11n3
が無理数であることを証明した(詳細は参考文献1の第5話を参照).
この記事では,その1年後のBeukersによる別証明(参考文献2)を紹介する.

αを実数,(an)n1,(bn)n1を整数列とする.In=an+bnαとおく.
以下の二条件が成り立つときαは無理数である.
(i). 任意のnに対してIn0,
(ii). limnIn=0.

背理法を使う.互いに素な整数p,qによりα=p/qと表せるとする.このとき(i)より|In|1/|q|でなくてはならない.これは(ii)に反する.

n1に対してdn=lcm(1,2,,n)とおく.

十分大きいnに対しdn3n.

任意のn1に対し
dn=pnp[logpn]pnplogpn=nπ(n).
ここで素数定理
π(n)nlogn
より,十分大きいnに対してπ(n)lognnlog3.ゆえに十分大きいnに対し
dnnπ(n)=eπ(n)lognenlog3=3n.

以下の補題で登場する積分はすべて広義Riemann積分として定義できるが,積分の変形にはLebsgue積分の定理も用いる.詳細は参考文献34を参照.

単調収束定理(参考文献3,定理13.2.または参考文献4,定理2.4.1.(a))

(X,A,μ)を測度空間とする.(fn)n1X上の可測関数列とする.X上の各点で0f1f2かつlimnfn=fならば,fも可測であり
Xfdμ=limnXfndμ.

(参考文献3,定理14.2.または参考文献4,定理2.5.1.)

(X,A,μ)を測度空間,I=(a,b)とする.X×I上の関数f(x,t)xの関数としてX上可積分,tの関数として微分可能とする.またX上の可積分関数g(x)が存在して
|ddtf(x,t)|g(x),(x,t)X×I
が成り立つとする.このとき積分Xf(x,t)dμ(x)tの関数として微分可能であって
ddtXf(x,t)dμ(x)=Xddtf(x,t)dμ(x).

r,s0を整数とする.
(a) r>sのとき
dr30101logxy1xyxrysdxdy
は整数である.
(b) r=sのとき
0101logxy1xyxryrdxdy=2(ζ(3)k=1r1k3).

実数σ>1に対し
0101xr+σys+σ1xydxdy
を考える.
定理3より
0101xr+σys+σ1xydxdy=0101(k=0xk+r+σyk+s+σ)dxdy=k=0(0101xk+r+σyk+s+σdxdy)(1)=k=01(k+r+σ+1)(k+s+σ+1).
r>sのとき,(1)より
0101xr+σys+σ1xydxdy=1rsk=0(1k+s+σ+11k+r+σ+1)(2)=1rsk=s+1r1k+σ.
(2)の両辺をσで微分することを考える.
任意にσ0>1σσ0をとる.十分小さいε>0とあるC>0が存在して,0<x,y<1のとき
|ddσxr+σys+σ1xy|=logxy1xyxr+σys+σCxr+σ0εys+σ0ε1xy.
最右辺の関数は(1)の計算と同様に[0,1]2上可積分だから,定理4が適用できる.したがって,(2)の両辺をσで微分して
0101logxy1xyxr+σys+σdxdy=1rsk=s+1r1(k+σ)2.
ここでσ=0とおくと
0101logxy1xyxrysdxdy=1rsk=s+1r1k2.
よって(a)が成り立つことがわかる.(1)r=sとすると
(3)0101xr+σyr+σ1xydxdy=k=01(k+r+σ+1)2.
(3)の両辺をσで微分することを考える.左辺の微分は先程と同様に計算できる.右辺については,任意のσσ0>1k0に対し
|ddσ1(k+r+σ+1)2|=2(k+r+σ+1)32(k+r+σ0+1)3.
また
k=02(k+r+σ0+1)3<
だから,再び定理4が適用できる.したがって,(3)の両辺をσで微分して
0101logxy1xyxr+σyr+σdxdy=k=02(k+r+σ+1)3.
σ=0とおくと
0101logxy1xyxryrdxdy=k=02(k+r+1)3=2(ζ(3)k=1r1k3).
よって(b)が示された.

ζ(3)は無理数である.

整数n0に対し,多項式Pn(x)
Pn(x)=1n!dndxn{xn(1x)n}
で定義する.
In=0101logxy1xyPn(x)Pn(y)dxdy
と定める.補題3よりあるan,bnZが存在してdn3In=an+bnζ(3)
0111(1xy)zdz=logxy1xy
に注意すると
In=010101Pn(x)Pn(y)1(1xy)zdxdydz.
xに関してn回部分積分を行うと
In=0101[1n!dn1dxn1{xn(1x)n}Pn(y)1(1xy)z]x=0x=1dydz010101(1)yz1n!dn1dxn1{xn(1x)n}Pn(y)(1(1xy)z)2dxdydz=0010101(1)yz1n!dn1dxn1{xn(1x)n}Pn(y)(1(1xy)z)2dxdydz=0101[(1)yz1n!dn2dxn2{xn(1x)n}Pn(y)(1(1xy)z)2]x=0x=1dydz+(1)2010101(1)(2)(yz)21n!dn2dxn2{xn(1x)n}Pn(y)(1(1xy)z)3dxdydz=0+(1)2010101(1)(2)(yz)21n!dn2dxn2{xn(1x)n}Pn(y)(1(1xy)z)3dxdydz==(1)n010101(1)(2)(n)(yz)n1n!{xn(1x)n}Pn(y)(1(1xy)z)n+1dxdydz=010101(xyz)n(1x)nPn(y)(1(1xy)z)n+1dxdydz.
ここで
w=1z1(1xy)z
と変数変換する.
1w=xyz1(1xy)z,dzdw=1(1xy)z1(1xy)w
より
In=010101(1x)n(1w)nPn(y)1(1xy)wdxdydw.
yに関してn回部分積分を行うと,先程と同様にして
(4)In=010101xn(1x)nyn(1y)nwn(1w)n(1(1xy)w)n+1dxdydw
を得る.Inを評価するため
f(x,y,w)=x(1x)y(1y)w(1w)1(1xy)w
を考える.min(x,y,w)0またはmax(x,y,w)1のときf(x,y,w)0がわかるので,f(0,1)3内のある臨界点(=すべての偏微分が消える点)で最大値を取る.(0,1)3上でfx=fy=fw=0を解くと,(x,y,w)=(21,21,12)が唯一つの解であることがわかり,f(21,21,12)=(21)4.以上より
x(1x)y(1y)w(1w)1(1xy)w(21)4,0<x,y,w<1.
よって(4)と補題3(b)より
In(21)4n01010111(1xy)wdxdydw=(21)4n0101logxy1xydxdy=2ζ(3)(21)4n.
(4)よりIn>0であることに注意する.よって補題2より,十分大きいnに対して
0<dn3In=an+bnζ(3)2ζ(3)(21)4ndn32ζ(3)(21)4n33n.
ここで(21)433=0.794<1なので,limn(an+bnζ(3))=0.したがって補題1より,ζ(3)は無理数である.

参考文献

[1]
小林 銅蟲, 関 真一朗 , せいすうたん1 整数たちの世界の奇妙な物語, 日本評論社, 2023
[3]
伊藤 清三, ルベーグ積分入門, 数学選書, 裳華房, 1963
[4]
吉田 伸生, ルベーグ積分入門: 使うための理論と演習, 遊星社, 2006
投稿日:2023717
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