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現代数学解説
文献あり

Liuによる展開公式2

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q微分を
Dq,xf(x):=f(x)f(xq)x
によって定義する.

Jackson(1908)

Dq,xnf(x)=xnk=0n(qn;q)k(q;q)kqkf(xqk)

nに関する帰納法によって示される.

前回の記事 で示した定理を補題として用いる.

Liu(2002)

f(x)x=0の近傍で正則関数であるとするとき,
f(a)=0n(1λq2n)(λq/a;q)nan(q,a;q)nDq,xn(f(x)(x;q)n1))x=λq
が成り立つ.

以下が主要な定理である.

Liu(2013)

f(x)x=0の近傍で正則関数であるとするとき,
(λ,λab/q;q)(λa,λb;q)f(λa)=0n(1λq2n)(λ,q/a;q)n(q,λa;q)n(aq)nk=0n(qn,λqn;q)kqk(q,λb;q)kf(λqk+1)
が成り立つ.

まず,
(bx/q;q)(x;q)
x=0の周りで正則である. よって, それをf(x)に掛けた
(bx/q;q)(x;q)f(x)
も正則である. これに補題2を適用すると,
(ab/q;q)(a;q)f(a)=0n(1λq2n)(λq/a;q)nan(q,a;q)nDq,xn(f(x)(bx/q;q)(x;q)(x;q)n1)x=λq=0n(1λq2n)(λq/a;q)nan(q,a;q)nDq,xn(f(x)(bx/q;q)(xqn1;q))x=λq
を得る. 補題1より,
Dq,xn(f(x)(bx/q;q)(xqn1;q))x=λq=(λq)nk=0n(qn;q)k(q;q)kqkf(λqk+1)(λbqk;q)(λqn+k;q)=(λb;q)(λ;q)(λ;q)n(λq)nk=0n(qn,λqn;q)k(q,λb;q)kqkf(λqk+1)
を得る. よって,
(ab/q;q)(a;q)f(a)=(λb;q)(λ;q)0n(1λq2n)(λ,λq/a;q)n(q,a;q)n(aλq)nk=0n(qn,λqn;q)k(q,λb;q)kqkf(λqk+1)
が得られる. ここで, aλaに置き換えて定理を得る.

応用として, 以下の公式を示す.

Rogersの6ϕ5和公式

0n(1λq2n)(λ,q/a,q/b,q/c;q)n(λa,λb,λc,q;q)n(λabcq2)n=(λ,λab/q,λac/q,λbc/q;q)(λa,λb,λc,λabc/q2;q)

定理3において,
f(x)=(cx/q;q)(bcx/q2;q)
とすると
(λ,λab/q,λac/q;q)(λa,λb,λabc/q2;q)=0n(1λq2n)(λ,q/a;q)n(q,λa;q)n(aq)nk=0n(qn,λqn;q)kqk(q,λb;q)k(λcqk;q)(λbcqk1;q)=(λc;q)(λbc/q;q)0n(1λq2n)(λ,q/a;q)n(q,λa;q)n(aq)nk=0n(qn,λqn,λbc/q;q)kqk(q,λb,λc;q)k
ここで, q-Saalschützの和公式より,
k=0n(qn,λqn,λbc/q;q)kqk(q,λb,λc;q)k=(q/b,q/c;q)n(λb,λc;q)n(λbcq)n
であるから, これを代入して定理を得る.

参考文献

[1]
Zhi-Guo Liu, A q-series expansion formula and the Askey-Wilson polynomials, Ramanujan J, 2013, 193-210
投稿日:30日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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