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複素関数の復習その2

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今日は、複素関数の積分について復習してみたいと思います。

複素積分の定義

複素関数は、定義域が二次元なので、線積分を行う場合、まず、積分領域の曲線をパラメータ表示しなければいけません。そこで、複素積分の定義は以下のようになります。

複素積分

C:z(t)(t[a,b])  を複素数平面上の滑らかな曲線とする。
C上で定義される連続関数f(z)に対して、
Cdzf(z)abdtdzdtf(z)

区分的に滑らかな曲線に沿って線積分を行う場合は、区分ごとに分割して上の定義を適用します。

円周に沿って積分

それでは、半径r,中心z=z0の円周に沿って反時計回りにf(z)=(zz0)n(nZ)を積分してみましょう。パラメータをθとして、z(θ)=z0+reiθとします。
Cdz(zz0)n=02πdθi(reiθ)n+1
まず、n=1の時、
Cdz(zz0)n=02πdθi=2πi
です。そして、n1の時、
02πdθi(reiθ)n+1=0
これは、f(z)z=z0中心にテイラー展開した時、-1次の項がなければz0中心の円周にそった線積分は半径によらず0になることを意味します。このことから、直感的には、よっぽどのこと(領域内での発散とか)がない限り、閉曲線に沿った線積分は0になるような気がします。次は、それについてもう少し真面目に議論してみましょう。

Cauchyの積分定理

Cauchyの積分定理

Dを複素平面上の単連結領域、CをD内の区分的に滑らかな閉曲線とする。
f(z)がD上で正則な時、
Cdzf(z)=0

を証明します。

閉曲線を一辺がϵの正方形微小ループの和に分割し、微小ループごとに積分を計算することを考える。
|Cdzf(z)|=|lCldzf(z)|<(l1)maxl|Cldzf(z)|
であり、|Cldzf(z)|の最大値を与えるlの領域の中では領域内の点z=z0について
f(z)=f(z0)+(zz0)f(z0)+o(ϵ)
と書くことができる。一次式を正方形の閉曲線線分に沿って積分すると0になるので、
maxl|Cldzf(z)|=Cldzo(ϵ)=4ϵo(ϵ)=o(ϵ2)
になる。ここで、l11ϵ2なので、
|Cdzf(z)|<o(ϵ2)ϵ20(ϵ0)

この定理から、複素関数が正則な領域内では、積分経路をぐにゃぐにゃと変形することができることがわかります。

また、逆に、どれだけ積分経路をぐにゃぐにゃしても閉曲線に沿った線積分の値が0ならその関数は正則です。

Moreraの定理(Cauchyの積分定理の逆)

Dを複素平面上の単連結領域とする。
D内の任意の区分的に滑らかな閉曲線について
Cdzf(z)=0
の時、f(z)は正則である。

Cauchyの積分公式

今度は、円周に沿って積分したときのn=1の結果を眺めてみましょう。(zz0)1というz=z0でのみ発散する複素関数の線積分が2πiになるという結果です。まるで、デルタ関数みたいですね。というわけで、デルタ関数っぽい使い方ができないか考えてみましょう。Cauchyの積分定理で求めたように、積分経路を自由に変形できることを使えば、発散する点を含みさえすれば積分経路は円周である必要もないので、次のような公式が導けます。

Cauchyの積分公式

Dを複素平面上の単連結領域、CをD内の区分的に滑らかな閉曲線、z0をC内の点とする。f(z)がD上で正則な時、
Cdz2πif(z)zz0=f(z0)

この公式は、複素関数f(z)のC内部での値がC上の値だけで定まっていることを意味します。また、線積分を円形にして、z=z0+reiθと置くと、

平均値原理

Cdz2πif(z)zz0=02πdθ2πf(z0+reiθ)=f(z0)

が導けます。円周上の値の平均値が中心の値になるという原理です。この平均値原理より、複素関数の実部と虚部は正則な単連結領域の内部で極値を持たないこと(最大値原理)なども導けます。

複素関数のTaylor展開

また、-1次の値のみが線積分の結果として得られることをさらに用いれば、次のようにTaylor展開の係数を決定することもできます。

複素関数のTaylor展開

Dを複素平面上の単連結領域、CをD内の区分的に滑らかな閉曲線、z0をC内の点とする。f(z)がD上で正則な時、f(z)=n=0Cn(z0)(zz0)nとTaylor展開すれば、
Cn(z)=Cdz2πif(z)(zz0)n+1

ここでは、一様収束な複素関数が項別積分可能であることを使いました。

Goursatの定理

さて、テイラー展開の係数が具体的に書けたので、微分可能性も示せます。

Goursatの定理

Dを複素平面上の単連結領域、CをD内の区分的に滑らかな閉曲線、zをC内の点とする。f(z)がD上で正則な時、f(z)は何回でも微分可能で
f(n)(z)=n!Cdz2πif(z)(zz0)n+1

今回は、複素関数の積分の基本的な定理を概観し、-1次の項の係数が線積分の値に現れることを確認しました。次回も引き続き複素関数の積分についての解説を書きます。ローラン展開とか留数定理とかの話をしたいです。最後までお読みくださりありがとうございました。

投稿日:202438
更新日:202438
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投稿者

工学部の3年生です。

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