ここでは京大数学教室・RIMSの修士課程の院試の2025専門03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
$\mathbb{Q}$係数多項式$f_n$を
$$
f_1=X^2-2
$$
$$
f_{n+1}=f_n(X^2-2)
$$
と定義し、$f_n$の$\mathbb{Q}$上の最小分解体を$K_n$とおく。ガロア群$G_n:=\mathrm{Gal}(K_n/\mathbb{Q})$を求めなさい。
初めに$X=2\cos\theta$を代入すると、
$$
\begin{split}
f_{n}(X)&=f_n(2\cos\theta)\\
&=f_{n-1}(4\cos^2\theta-2)&=f_{n-1}(2\cos2\theta)\\
&=f_{n-2}(4\cos^22\theta-2)&=f_{n-2}(2\cos4\theta)\\
&=\cdots&\\
&=f_1(4\cos2^{n-2}\theta-2)&=f_1(2\cos2^{n-1}\theta)\\
&=4\cos2^{n-1}\theta-2&=2\cos2^{n}\theta\\
\end{split}
$$
であるから、$f_n$の根は
$$
\alpha_{n,k}:=2\cos\frac{(1+2k)\pi}{2^{n+1}}
$$
で尽くされている(但し$k=0,\cdots,2^n-1$)。$\cos((2k+1)\theta)$は$\cos\theta$の多項式$F_{2k+1}(\cos\theta)$として表せることを考慮すれば、
$$
K_n=\mathbb{Q}(\alpha_{n0})= \mathbb{Q}\left(\zeta+\zeta^{-1}\right)
$$
である(但し$\zeta$は$1$の原始$2^{n+2}$乗根)。ここで$-1$及び$5$は
$$
5^{2^n}=(1+4)^{2^n}\equiv1(\mathrm{mod}2^{n+2})
$$
$$
5^{2^k}\not\equiv\pm1(\mathrm{mod}2^{n+2})
$$
$$
\varphi(2^{n+2})=2^{n+1}
$$
である(但し$0< k< n$)ことを考慮すれば、
$$
\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta)/\mathbb{Q})\simeq(\mathbb{Z}/2^{n+2}\mathbb{Z})^\times\simeq \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2^{n}\mathbb{Z}
$$
であり、右辺の直積群の第一成分は共役写像$\zeta\mapsto\zeta^{-1}$によって、第二成分は$\zeta\mapsto\zeta^5$によって生成される。$K_n$は共役写像によって固定される元全体であるから
$$
\mathrm{Gal}(K_n/\mathbb{Q})\simeq{\color{red}\mathbb{Z}/2^n\mathbb{Z}}
$$
がわかる。