有限集合 $B\subset\mathbb Z_{>0}$ で $S=\sum b$ が $C=\sum b^3$ を割るものを状態と呼ぶ.
「くどー問題」とは
ku_do_
氏が提唱し,
bisaitama
氏によって名付けられた問であり,状態$N_n=\{1,2,\dots,n\}$から状態だけを通って1つずつ数を除去し,$\{1,n\}$ に至れるかを問う問題である.
第1部の J-λ 理論は,1つの状態についての理論であった.第2部では,$N_n$ のように状態がパラメータ $t$ に多項式で依存する族(多項式族)を考え,どの $t$ でも同じ形で現れる手(多項式の手)がどのように決まるかを調べる.多項式の手は,$E=S^3-C$ の $\mathbb Q[t]$ における約数から有限個に列挙でき,族が基点をもつときは $E$ の3つの因子の「混ぜ合わせ」から生じる.また,族の手の全体は1つの曲面の整数点としてまとまり,その上で無限個の手を含む曲線は,多項式で表されるものと Pell 方程式で表されるものの2種類に限られる.これにより,族の手は「多項式型」「Pell 型」「散発的」の3つの層に分けられる.
なお,本記事の作成の過程で,証明方針の探索および途中段階の議論の補助としてGemini 3.1 Pro(Google)および Claude Opus 5.5(Anthropic)を利用した.また,本記事に記載したすべての証明と計算は著者自身が独立に検証した.
くどー問題を形式化しますが,記号の定義はまた載せますので, ku_do_ 氏の記事「 そろそろ誰かに解いてほしい自作問題(未解決) 」「 そろそろ誰かに解いてほしい自作問題【続】(未解決)(5年振り) 」を見てもらえれば,この節は飛ばしても良いです.
$n$ を $3$ 以上の整数とし,$N_n=\{1,2,\dots,n\}$ とする.空でない有限な整数集合 $X$ に対して $$S(X)=\sum_{x\in X}x,\qquad C(X)=\sum_{x\in X}x^3$$ と定義する. $N_n$ の部分集合の列 $B_0,B_1,\dots,B_{n-2}$ であって,次の2条件 (i), (ii) を満たすものを除去列と呼ぶ.
このとき,除去列が存在するような整数 $n\geq3$ は $n=3,6$ のみである.
(i) より $\{1,n\}=B_{n-2}\subset B_j$ がすべての $j$ で成り立つので,$1$ と $n$ は除去されない.したがって除去列は,$\{2,\dots,n-1\}$ の並べ替え $(y_0,\dots,y_{n-3})$ と1対1に対応する.また,$j=0$ と $j=n-2$ では (ii) が常に成り立つ($C(N_n)=S(N_n)^2$,$C(\{1,n\})=(n+1)(n^2-n+1)$).よって (ii) で実際に条件となるのは $1\le j\le n-3$ の場合だけである.
$n=6$ では,$3,4,5,2$ の順に除去する列 $$\{1,\dots,6\}\supset\{1,2,4,5,6\}\supset\{1,2,5,6\}\supset\{1,2,6\}\supset\{1,6\}$$ が除去列であり,$C/S$ の値は順に $21,23,25,25,31$ となる.
$I\subset\mathbb Z$ を無限集合とし,各 $t\in I$ に状態 $B(t)$ が与えられているとする.$\mathcal B=\{B(t)\}_{t\in I}$ が多項式族であるとは,$\hat S,\hat C\in\mathbb Q[t]$ が存在して,すべての $t\in I$ について $\hat S(t)=S(B(t))$,$\hat C(t)=C(B(t))$ が成り立つことをいう.$I$ は無限集合なので $\hat S,\hat C$ は一意に定まる.以下,これらを $S(t),C(t)$ と書く.
$\varphi\in\mathbb Q(t)$ が無限個の整数 $t$ で整数値をとるならば,$\varphi\in\mathbb Q[t]$ である.
多項式族では,$k(t)=C(t)/S(t)$,$F(t)=S(t)^2-k(t)$,$E(t)=S(t)^3-C(t)=S(t)F(t)$ はすべて $\mathbb Q[t]$ の元である.
多項式族で $S(t),k(t)$ の次数がともに $\ell$ 以下のものを $\ell$ 次の多項式族と呼び,$\mathcal B^{(\ell)}$と書く.$I$ が等差数列のとき等差型と呼ぶ.
多項式族 $\mathcal B=\{B(t)\}_{t\in I}$ と定数でない $\tau\in\mathbb Q[u]$ について,$I_\tau=\{u\in\mathbb Z:\tau(u)\in I\}$ が無限集合であるとする.このとき $\{B(\tau(u))\}_{u\in I_\tau}$ は,$S(\tau(u))$,$C(\tau(u))$ を与える多項式族である.これを $\mathcal B$ の $\tau$ による引き戻しと呼び,$\tau^*\mathcal B$ と書く.
$f,g\in\mathbb Z[t]$ をともに $0$ でない多項式とし,$\mathbb Q[t]$ での最大公約元を原始的な $d\in\mathbb Z[t]$ で表す.Gauss の補題より $f=df_1$,$g=dg_1$($f_1,g_1\in\mathbb Z[t]$)と書け,$f_1,g_1$ は $\mathbb Q[t]$ で互いに素である.このとき,ある $0$ でない整数 $r$ と $U,V\in\mathbb Z[t]$ で $Uf_1+Vg_1=r$ となるものがあり($f_1,g_1$ がともに定数でなければ $r$ は終結式 $\mathrm{Res}(f_1,g_1)$ にとれる),すべての整数 $t$ について
$$\gcd\bigl(f(t),g(t)\bigr)=\lvert d(t)\rvert\cdot h(t),\qquad h(t)=\gcd\bigl(f_1(t),g_1(t)\bigr)\ \Big|\ r$$
が成り立つ.さらに $h(t)$ は $t\bmod\lvert r\rvert$ だけで決まる.
$r$ と $U,V$ の存在は,互いに素な整数係数多項式の終結式が $(f_1,g_1)\cap\mathbb Z$ に属することによる(一方が $0$ でない定数なら,$r$ としてその定数がとれる).整数 $t$ で $\gcd(d(t)x,d(t)y)=\lvert d(t)\rvert\gcd(x,y)$ なので等式が成り立つ.$U(t)f_1(t)+V(t)g_1(t)=r$ より $h(t)\mid r$.したがって $h(t)=\gcd\bigl(f_1(t),g_1(t),r\bigr)$ であり,$f_1(t),g_1(t)$ の $r$ を法とする剰余は $t\bmod\lvert r\rvert$ だけで決まる.
有理係数で,等差数列 $\{t\equiv t_0\pmod m\}$ の上で整数値をとる多項式 $f,g$ には,$t=t_0+mu$ と置き換え,分母を払う正の整数 $M$ をかけて $Mf,Mg\in\mathbb Z[u]$ としてから「補題3:多項式の値の gcd」を用いる($\gcd(f,g)=\gcd(Mf,Mg)/M$).こうして,$\gcd\bigl(f(t),g(t)\bigr)$ は「多項式の gcd の値」×「$t$ の剰余類だけで決まる有界な正の有理数」と書ける.
多項式族 $\{B(t)\}_{t\in I}$ と $b\in\mathbb Q[t]$ について,無限集合 $I'\subset I$ の各点で $b(t)\in B(t)$ かつ $\lvert B(t)\rvert\ge2$ であるとき,$b$ を $B$ の多項式の除去候補と呼ぶ.$b(t)$ を $B(t)$ から除去できる $t\in I'$ が無限個あるとき,$b$ を $B$ の多項式の手と呼ぶ.同様に,$a\in\mathbb Q[t]$ で $I'$ の各点で $a(t)\ge1$,$a(t)\notin B(t)$ を満たすものを多項式の追加候補と呼ぶ.
多項式族 $\{B(t)\}_{t\in I}$ と多項式の除去候補 $b$($t\in I'$)について,$D=S-b$ とおく.
追加候補 $a$ についても,$S+a$ を $D$ の代わりにして (1)〜(3) が成り立つ(「除去できる」を「$B(t)\cup\{a(t)\}$ が状態」に置き換える).
「J-λ理論:定理6:除去判定」(d) より,$b(t)$ を除去できることは $D(t)\mid E(t)$ と同値である.$\lvert B(t)\rvert\ge2$ より $D(t)=S(t)-b(t)>0$ である.
(1) $E=DW+R_0$($R_0\neq0$,$\deg R_0<\deg D$)と割り算し,正の整数 $N$ を $NW\in\mathbb Z[t]$ となるようにとる.$D(t)\mid E(t)$ なら $N\frac{R_0(t)}{D(t)}=N\frac{E(t)}{D(t)}-NW(t)\in\mathbb Z$ なので,$R_0(t)=0$ であるか $\lvert NR_0(t)\rvert\ge D(t)$ である.前者は高々 $\deg R_0$ 個の $t$ でしか起こらず,後者は $\deg R_0<\deg D$ より $\lvert t\rvert$ が十分大きいと起こらない.
(2) (1) の対偶.同値性は,$D$ を法として $S\equiv b$ なので $E=S(S^2-k)\equiv b\,(b^2-k)$ となることによる.
(3) $E(t)/D(t)=W(t)$ による.$W$ の係数の分母を $N'$ とすると,$t=t_0+mu$ のとき $W(t)\bmod1$ は $u\bmod N'$ だけで決まる.
追加候補については,$B(t)\cup\{a(t)\}$ が状態であることが $(S(t)+a(t))\mid E(t)$ と同値であること($S+a$ を法として $a\equiv-S$ なので $C+a^3\equiv-E$;「J-λ理論:命題15:3つの連続する和」の証明)を用いて,同じ議論をすればよい.
多項式族と整数 $e<\deg S$ を固定する.$\deg b\le e$ を満たす多項式の手 $b$ は,
「$E$ の $\mathbb Q[t]$ における約数 $D$ で,$\deg D=\deg S$ かつ $t^j$($j>e$)の係数が $S$ と一致するもの」
に対して $b=S-D$ とおいたものに限る.このような $D$ は有限個であり,$E$ の既約分解から列挙できる.
「定理4:多項式の約数定理」(2) より $D=S-b$ は $E$ の約数で,$\deg b\le e<\deg S$ より $D$ の次数と上位の係数は $S$ と一致する.$E$ の約数は既約因子のべきの積と定数倍で尽くされ,最高次の係数を $S$ に合わせると定数倍も決まるので有限個.
定理4 の系はパラメータ $t$ を固定したときの列挙である.$t=\tau(u)$($\deg\tau\ge2$)と取り替えると,$E(\tau(u))$ の既約分解が細かくなり,新しい約数(新しい族)が現れうる.これは引き戻し $\tau^*\mathcal B$ に定理4 の系を適用することにあたる.次の多項式の部分族の定義は,この取り替えを含めたものである.
多項式族 $\mathcal B$ について,定数でない $\tau\in\mathbb Q[u]$ と,引き戻し $\tau^*\mathcal B$ の多項式の手 $\zeta\in\mathbb Q[u]$ の組 $(\tau,\zeta)$ を,$B$ の次の手の多項式の部分族と呼ぶ.$\tau(u)=u$ のときは,$\zeta$ は $\mathcal B$ 自身の多項式の手である.
このとき $S(\tau)-\zeta$ は無限個の $u$ で正なので,$0$ でない多項式である.
$$c(u)=\frac{k(\tau(u))-\zeta(u)^2}{S(\tau(u))-\zeta(u)}\in\mathbb Q(u)$$
を部分族の公差関数と呼ぶ.$\zeta(u)$ を $B(\tau(u))$ から除去できる $u$ では $c(u)=c_{B(\tau(u))}(\zeta(u))$ である.
多項式の部分族 $(\tau,\zeta)$ について,
$$\mu(u)=\zeta(u)\,c(u),\qquad \kappa(u)=\zeta(u)-\mu(u)$$
はともに $\mathbb Q[u]$ の元であり,$S(\tau)-\zeta$ は $\mathbb Q[u]$ で $E(\tau(u))$ を割る.特に,公差関数は $c=\mu/\zeta$ の形をしており,その分母は $\zeta$ を割る.
$\zeta(u)$ を $B(\tau(u))$ から除去できる $u$ では,「J-λ理論:定理6:除去判定」(b) より $\mu(u)=\mu_{B(\tau(u))}(\zeta(u))\in\mathbb Z$ である.$\mu\in\mathbb Q(u)$ が無限個の整数で整数値をとるので,「補題1:整数値有理関数」より $\mu\in\mathbb Q[u]$.$\kappa=\zeta-\mu$ も多項式である.後半は,「定理4:多項式の約数定理」(2) を $\tau^*B$ と $\zeta$ に適用すればよい.
多項式族 $\mathcal B$ に対して,$(t,z,m)$ 空間の曲面
$$\mathcal M:\ m\,\bigl(S(t)-z\bigr)=z\,\bigl(k(t)-z^2\bigr)$$
を考える.
命題6 により,族の除去できる手の全体は曲面 $\mathcal M$ の整数点として1つにまとまり,公差 $\rho$ ごとのファイバー曲線に分かれる.
2次の多項式族について $S(t)=S_2t^2+S_1t+S_0$,$k(t)=k_2t^2+k_1t+k_0$ と書き,公差 $\rho\in\mathbb Q$ に対して
$$q_i(\rho)=k_i-\rho S_i\quad(i=0,1,2),\qquad \delta(\rho)=q_1(\rho)^2-q_2(\rho)\bigl(4q_0(\rho)+\rho^2\bigr)$$
とおく.$k(t)-\rho S(t)=q_2(\rho)t^2+q_1(\rho)t+q_0(\rho)$ であり,$q_0,q_1,q_2$ は $\rho$ の高々1次式である.
2次の多項式族と公差 $\rho$ について,$z$ が $B(t)$ の公差 $\rho$ の候補点である条件は
$$(2z-\rho)^2=4\bigl(q_2t^2+q_1t+q_0\bigr)+\rho^2\qquad(q_i=q_i(\rho))$$
であり,これは $(t,z)$ 平面の2次曲線を定める.
(1) $q_2=0$,$q_1\neq0$ のとき,曲線は放物線である.
(2) $q_2\neq0$ のとき,
$$(2q_2t+q_1)^2-q_2\,(2z-\rho)^2=\delta(\rho).$$
$\delta(\rho)=0$ のとき(退化),曲線は2直線 $2q_2t+q_1=\pm\sqrt{q_2}\,(2z-\rho)$ に分かれる.
(3) $\delta(\rho)$ は $\rho$ の高々3次式である.したがって,$\delta$ が恒等的に $0$ でなければ,退化する公差は高々3個である.
候補点の条件 $z^2-\rho z=k(t)-\rho S(t)$(「J-λ理論:命題2:候補点の構造」(2))を平方完成すると主張の式になる.(2) は両辺に $q_2$ を掛けて,$t$ について平方完成すればよい.(3) は $q_0,q_1,q_2$ が $\rho$ の高々1次式であることから従う.
2次の多項式族と公差 $\rho\in\mathbb Q$ について,$q_2=q_2(\rho)\neq0$,$\delta(\rho)\neq0$ とする.$(t,z)$ には,ある法 $N_1$ の剰余類の和集合で表される合同条件(例えば $s\mid z$)を課す($I$ が等差数列なら,$t\in I$ もこの形の条件である).$q_2=\alpha/\beta$($\alpha,\beta\in\mathbb Z$,$\beta>0$)と書く.
分母を払う正の整数 $\nu$ をとり,$U=\nu\beta\,(2q_2t+q_1)$,$V=\nu\,(2z-\rho)$ とおくと
$$U^2-\alpha\beta\,V^2=\nu^2\beta^2\,\delta(\rho)\neq0$$
となる.$(t,z)\mapsto(U,V)$ は有理係数のアフィン写像なので,$(t,z)$ の整数性と合同条件は,$(U,V)$ についてのある法 $N_2$ の合同条件になる.
実際の族では,$z$ が $B(t)$ の元であるという範囲の条件(例えば $B(t)\subset[1,n(t)]$ のとき $2\le z\le n(t)-1$)が加わる.これは合同条件ではないので,定理8 (2) の軌道で保たれるとは限らない.ただし軌道の上では $\lvert z\rvert/\lvert t\rvert\to\sqrt{q_2(\rho)}$ となる.したがって多くの場合,$\sqrt{q_2(\rho)}$ と範囲の端の傾きを比べることで,「有限個を除いて満たされる」か「有限個しか満たされない」かが決まる.
2次の多項式族で,$\Phi(t)=2k(t)-S(t)$ について $8\Phi(t)+1$ が $t$ の1次式の平方 $(\gamma t+\eta)^2$ であるとする.このとき,公差 $\frac12$ のファイバー曲線は2直線 $4z-1=\pm(\gamma t+\eta)$ に分かれる.特に $\Phi(t)=T_{\sigma(t)}$($\sigma(t)$ は $t$ の1次式)のとき,候補点は $z=\frac{\sigma(t)+1}2$ と $z=-\frac{\sigma(t)}2$ である.
「J-λ理論:命題11」(1) より,公差 $\frac12$ の候補点の条件 $2z^2-z=\Phi$ は $(4z-1)^2=8\Phi+1$ と同値である.また $8T_\sigma+1=(2\sigma+1)^2$.
2次の多項式族 $\mathcal B^{(2)}$ の次の手の多項式の部分族 $(\tau,\zeta)$ は,次のどれか1つに当てはまる.
(a)(放物線型)公差関数が定数 $\rho_0$ で,$q_2(\rho_0)=0$.
(b)(退化型)公差関数が定数 $\rho_0$ で,$q_2(\rho_0)\neq0$ かつ $\delta(\rho_0)=0$.
(c)(動く公差型)公差関数 $c(u)$ が定数でない.
特に,公差を固定した双曲線のファイバー($q_2(\rho_0)\neq0$ かつ $\delta(\rho_0)\neq0$)は,多項式の部分族を含まない.
(a)(b)(c) が互いに排反であることは定義から明らか.残る場合,すなわち公差関数が定数 $\rho_0$ で $q_2=q_2(\rho_0)\neq0$,$\delta=\delta(\rho_0)\neq0$ の場合が起こらないことを示す.
$\zeta(u)$ を $B(\tau(u))$ から除去できる無限個の $u$ では,$\zeta(u)$ は $B(\tau(u))$ の公差 $\rho_0$ の候補点である(「J-λ理論:命題2:候補点の構造」(1)).よって
$$\zeta(u)^2-\rho_0\,\zeta(u)=k(\tau(u))-\rho_0\,S(\tau(u))$$
が成り立つ.両辺は $u$ の多項式で,無限個の $u$ で一致するから,恒等式である.したがって「定理7:ファイバー曲線」(2) の計算により,多項式
$$U(u)=2q_2\,\tau(u)+q_1,\qquad V(u)=2\zeta(u)-\rho_0\qquad(q_1=q_1(\rho_0))$$
は $U^2-q_2V^2=\delta$ を恒等的に満たす.$\sqrt{q_2}\in\overline{\mathbb Q}$ をとると,$\overline{\mathbb Q}[u]$ において
$$(U-\sqrt{q_2}\,V)(U+\sqrt{q_2}\,V)=\delta\neq0$$
である.積が $0$ でない定数となる2つの多項式は,ともに定数である.よって $U=\frac12\bigl((U-\sqrt{q_2}\,V)+(U+\sqrt{q_2}\,V)\bigr)$ は定数であり,$q_2\neq0$ より $\tau$ も定数となって,多項式の部分族の定義に反する.
多項式族 $\{B(t)\}$,多項式の追加候補 $a$,多項式の除去候補 $b$ について,無限集合 $I'$ の各点で $B(t)\cup\{a(t)\}$ と $B(t)\setminus\{b(t)\}$ がともに状態であるとする.$\mathbb Q[t]$ で
$$g_1^*=\gcd(S,a),\quad g_2^*=\gcd(S,b),\quad g_3^*=\gcd\Bigl(\frac{S+a}{g_1^*},\frac{S-b}{g_2^*}\Bigr),\quad G^*=g_1^*g_2^*g_3^*$$
とおき(それぞれ $0$ でない定数倍を除いて定まる),
$$c_b=\frac{k-b^2}{S-b}\in\mathbb Q(t)$$
とする(各 $t\in I'$ で $c_b(t)=c_{B(t)}(b(t))$).このとき
$$R^*=\frac{F\,G^*}{(S+a)(S-b)}\in\mathbb Q[t],\qquad \frac{R^*}{G^*}=1-\frac{a-b+c_b}{S+a}$$
であり,次のどちらか一方が成り立つ.
「定理4:多項式の約数定理」(2) とその追加版より,$\mathbb Q[t]$ で $(S-b)\mid E$,$(S+a)\mid E$ である.$E=SF$ で,$\gcd(S+a,S)=\gcd(a,S)=g_1^*$ なので $\frac{S+a}{g_1^*}\mid\frac{S}{g_1^*}F$,かつ $\frac{S+a}{g_1^*}$ と $\frac{S}{g_1^*}$ は互いに素だから $\frac{S+a}{g_1^*}\mid F$.同様に $\frac{S-b}{g_2^*}\mid F$.両者の最小公倍元 $L^*=\frac{(S+a)(S-b)}{G^*}$ も $F$ を割るので,$R^*=F/L^*\in\mathbb Q[t]$.「J-λ理論:定理5:基点の公式」(2) の恒等式 $F=(S-b)(S+b-c_b)$(有理関数として)から
$$\frac{R^*}{G^*}=\frac{F}{(S+a)(S-b)}=\frac{S+b-c_b}{S+a}=1-\frac{a-b+c_b}{S+a}.$$
$c_b=b-a$ なら,各 $t\in I'$ で「J-λ理論:定理16:連鎖か gcd か」の (i) の場合になる.そうでなければ $G^*-R^*=\frac{G^*(a-b+c_b)}{S+a}$ は $0$ でない多項式なので,次数は $0$ 以上である.
定理11 の状況で $I'$ が等差数列に含まれるとする.$I'$ を有限個の剰余類に分けると,各剰余類の上では(有限個の $t$ を除いて)
$$G(t)=\theta\cdot\lvert G^*(t)\rvert$$
となる.ここで $G(t)$ は「J-λ理論:命題15:3つの連続する和」の系の $g_1g_2g_3$ を $B(t)$,$a(t)$,$b(t)$ で計算したもの,$\theta$ は剰余類ごとに定まる正の有理数である.
まず $S,a,b$ の係数の分母を法とする剰余類に $I'$ を分け,各類の上で $S,a,b$ が整数値をとるようにしておく.注意「等差数列の上の gcd」を $g_1(t)=\gcd(S(t),a(t))$ に用いると,$g_1(t)=\lvert d_1(t)\rvert h_1(t)$($d_1$ は $g_1^*$ の定数倍,$h_1$ は剰余類で決まる).$h_1$ が一定の剰余類の上では $\frac{S(t)+a(t)}{g_1(t)}$ は $t$ の多項式の値になる.$g_2$ も同様.この2つの多項式に再び同じ注意を用いると,$g_3(t)$ は $g_3^*$ の定数倍の値と剰余類で決まる因子の積になる.剰余類を細かくとり直せば,3つの因子がすべて一定になる.
(ii) の不等式は,族が続くためには多項式として大きな gcd が必要であることを述べている.数値の gcd の偶然(「J-λ理論:定理16:連鎖か gcd か」(R2) が多項式の gcd なしに成り立つこと)は,命題12 により有限個の剰余類の定数倍の範囲でしか起こらないので,族の中では次数の不等式に吸収される.
多項式族 $\mathcal B=\{B(t)\}_{t\in I}$ と $\rho_0,x_0\in\mathbb Q[t]$ について,すべての $t\in I$ で $(\rho_0(t),x_0(t))$ が $B(t)$ の基点であるとき,すなわち
$$x_0^2-\rho_0x_0+\rho_0S-k=0\qquad(\mathbb Q[t]\text{ の等式})$$
が成り立つとき,$(\rho_0,x_0)$ を $\mathcal B$ の多項式の基点と呼び,$(\mathcal B;\rho_0,x_0)$ を基点つき多項式族と呼ぶ.
さらに,$\rho_0$ が $0$ でない整数の定数であり,$a=x_0-\rho_0$ とおくとき,すべての $t\in I$ で
$$x_0(t)\notin B(t),\qquad a(t)\ge1,\qquad a(t)\notin B(t)$$
が成り立つものを穴の族と呼ぶ.$x_0$ を穴,$a$ を直前の手と呼ぶ.
穴の族は,「J-λ理論:定理8:整数公差の連鎖」の系 (1) のように,公差 $\rho_0$ の連鎖が $a\to x_0$ で止まった状態の族である.実際,「J-λ理論:定理14:共役と逆の手」より,$B(t)\cup\{a(t)\}$ は状態であり($a\rho_0\in\mathbb Z$),そこから $a(t)$ を除去すると候補点は穴 $x_0(t)$ に輸送される.
基点つき多項式族 $(\mathcal B;\rho_0,x_0)$ では,$\mathbb Q[t]$ において
$$F=(S-x_0)(S+x_0-\rho_0),\qquad E=S\,(S-x_0)(S+x_0-\rho_0)$$
が成り立つ.
$k=x_0^2-\rho_0x_0+\rho_0S$ を $F=S^2-k$ に代入すると $F=S^2-\rho_0S-x_0^2+\rho_0x_0=(S-x_0)(S+x_0-\rho_0)$.$E=SF$ は「補題2:多項式族の基本量」による.
基点つき多項式族 $(\mathcal B;\rho_0,x_0)$ で $\deg x_0<\deg S$,$\deg\rho_0<\deg S$ とし,$b$ を $\deg b<\deg S$ を満たす多項式の手とする.
(1) $D=S-b$ は,$S$,$S-x_0$,$S+x_0-\rho_0$ の既約因子(重複を込めて)のいくつかの積の定数倍であり,$\deg D=\deg S$,かつ最高次の係数は $S$ と一致する.
(2) $S-x_0$ と $S+x_0-\rho_0$ がともに $\mathbb Q[t]$ で既約ならば,$b\in\{x_0,\ \rho_0-x_0\}$ である.
したがって,$b\notin\{x_0,\rho_0-x_0\}$ となる多項式の手は,$S-x_0$ または $S+x_0-\rho_0$ が可約であり,$D$ が3つの多項式の因子を混ぜ合わせた積になっている場合にしか現れない.
穴の族で $\deg x_0<\deg S$ とし,$S-x_0$ と $S+x_0-\rho_0$ がともに $\mathbb Q[t]$ で既約であるとする.このとき,$\deg b<\deg S$ を満たす多項式の手 $b$ は存在しない.
命題14 (2) より $b\in\{x_0,\rho_0-x_0\}$ である.しかし $x_0(t)\notin B(t)$ であり,$\rho_0-x_0=-a$ は $I$ 上で負なので,どちらも $B(t)$ の元にならない.
$I=\{t\in\mathbb Z:t\ge3\}$,$B(t)=N_t$ とすると $S=k=\frac{t(t+1)}2$ であり,$(\rho_0,x_0)=\bigl(\frac12,\frac{t+1}2\bigr)$ は多項式の基点である.補題13 より
$$S-x_0=\frac{(t-1)(t+1)}2,\qquad S+x_0-\rho_0=\frac{t(t+2)}2,\qquad E=\frac{t^2(t-1)(t+1)^2(t+2)}8$$
となり,3つとも可約である.$E$ の約数 $D$ で $D$ の次数が $2$,最高次の係数が $\frac12$ のものを調べると,$\deg b\le1$ かつ $b>0$ となる $b=S-D$ は次の4つである.
| $D$ | $b$ | 由来 |
|---|---|---|
| $\frac{(t-1)(t+1)}2$ | $\frac{t+1}2$ | $S-x_0$ そのもの(輸送) |
| $\frac{t^2}2$ | $\frac t2$ | $S$ の因子 $t$ と $S+x_0-\rho_0$ の因子 $t$ の混ぜ合わせ |
| $\frac{t(t-1)}2$ | $t$ | $S$ の因子 $t$ と $S-x_0$ の因子 $t-1$ の混ぜ合わせ |
| $\frac{(t-1)(t+2)}2$ | $1$ | $S-x_0$ の因子 $t-1$ と $S+x_0-\rho_0$ の因子 $t+2$ の混ぜ合わせ |
「定理4:多項式の約数定理」(3) により,例えば $b=\frac{t+1}2$ は $t\equiv3\pmod4$ で,$b=\frac t2$ は $t\equiv2\pmod4$ で除去できる.
多項式族 $\mathcal B$ の多項式の手 $y$ で,公差 $c_{B(t)}(y(t))$ が $t$ によらない定数 $\rho$ であるものを除去すると,「J-λ理論:定理7:輸送と前進」より,$y+\rho$ は除去後の状態の公差 $\rho$ の候補点である.したがって,除去後の族は多項式の基点 $(\rho,\,y+\rho)$ をもち,「補題13:$F$ の分解」により $F$ は多項式として分解する.
族の手を1手ずつ進めると,このようにして基点が次々に供給される.さらに基点が2つになると,次の命題のように $F$ はより細かく分解する.
多項式族 $\mathcal B$ が2つの多項式の基点 $(\rho_1,x_1)$,$(\rho_2,x_2)$ をもつとする.$\deg x_i<\deg S$,$\deg\rho_i<\deg S$($i=1,2$)とし,$(\rho_2,x_2)$ は $(\rho_1,x_1)$ とも,その共役 $(\rho_1,\rho_1-x_1)$ とも異なるとする.
$$f_1=S-x_1,\qquad f_1'=S+x_1-\rho_1,\qquad f_2=S-x_2,\qquad f_2'=S+x_2-\rho_2$$
とおく.このとき次が成り立つ.
$(\mathcal B;\rho_0,x_0)$ を穴の族とし,$a=x_0-\rho_0$ を直前の手とする.
命題16 は,穴の族では連鎖が続かず,次の手 $b$ に必要な gcd を直前の手 $a$ の側から供給できないことを述べている.族が穴を越えて続くには,$\gcd(S,b)$ と $g_3$,すなわち次の手 $b$ の側の gcd が,多項式として(命題16 (3))あるいは数値の偶然として(命題16 (2))大きくなる必要がある.さらに命題14 の系により,$S-x_0$ と $S+x_0-\rho_0$ が既約なら,$\deg b<\deg S$ の多項式の手はそもそも存在しない.
状態 $B$ が基点 $(\rho_0,x_0)$ をもつとき,$z\neq S$ に対して
$$\sigma_B(z)=\frac{\rho_0S-z(z+x_0)}{S-z}$$
とおき,基点 $(\rho_0,x_0)$ からの傾きと呼ぶ.基点つき多項式族 $(\mathcal B;\rho_0,x_0)$ では,各 $t$ で $B=B(t)$ に対して考える.
状態 $B$ が基点 $(\rho_0,x_0)$ をもつとし,$z\neq S$ とする.
$(\rho_0,x_0)$ が基点なので $k=x_0^2-\rho_0x_0+\rho_0S$ である.これを代入して展開すると,任意の $\sigma$ について次の恒等式を得る.
$$z(k-z^2)-\bigl(\rho_0x_0+\sigma(z-x_0)\bigr)(S-z)=-(z-x_0)\bigl(z^2+(x_0-\sigma)z+(\sigma-\rho_0)S\bigr).$$
(2) 右辺の第2因子は $z^2+x_0z-\rho_0S+\sigma(S-z)$ であり,$z\ne S$ では,これが $0$ であることは $\sigma=\sigma_B(z)$ と同値である.根と係数の関係は明らか.
(1) $\sigma=\sigma_B(z)$ とすると (2) より右辺は $0$ なので,$z(k-z^2)=\bigl(\rho_0x_0+\sigma_B(z)(z-x_0)\bigr)(S-z)$.両辺を $S-z$ で割ると,左辺は $\mu_B(z)$ である.$\mu_B(x_0)=x_0c_B(x_0)=\rho_0x_0$(「J-λ理論:命題2:候補点の構造」(1)).除去の判定は「J-λ理論:定理6:除去判定」(b) による.
(3) $x_0=0$ なら基点の条件は $\rho_0S=k$ で,$\sigma_B(z)=\frac{k-z^2}{S-z}=c_B(z)$.
(4) 恒等式で $(t,z,m)\in\mathcal M$ とすると,左辺は $m=\rho_0x_0+\sigma(z-x_0)$ の上で $0$ になる.よって交わりは $z=x_0$(このとき $m=\rho_0x_0$)か第2因子が $0$ の部分である.$z\ne x_0$ の点は,$\sigma=\frac{m-\rho_0x_0}{z-x_0}$ のときに限り $\sigma$ の曲面に乗る.2次の多項式族で $\deg x_0\le1$,$\rho_0$ が定数なら,第2因子は $t,z$ について2次である.
命題6 の公差 $\rho$ による分解は,各 $t$ で3次曲線 $m(S-z)=z(k-z^2)$ を原点 $(z,m)=(0,0)$ から射影したものであり,命題17 の傾き $\sigma$ による分解は,同じ3次曲線を基点 $(x_0,\rho_0x_0)$ から射影したものである.どちらの中心も3次曲線の上にあるので,中心を通る直線は残り2点で3次曲線と交わり,各ファイバーは2点(族では2次曲線)になる.命題17 (2) の2根は,公差の場合の共役(「J-λ理論:命題2:候補点の構造」(2))にあたる.
穴の族($\rho_0=1$,$x_0=h$)では,(1) から $\kappa_B(b)=(1-\sigma_B(b))(b-h)$ である.添字集合が等差型でない族(例えば1次式の値が平方数となる $t$ の全体を添字集合とする族)では,各 $\sigma$ の曲線にその平方の条件を課すと,一般に種数1の曲線になる.
多項式族 $\mathcal B=\{B(t)\}_{t\in I}$ は等差型とし,
$$\mathfrak M(\mathcal B)=\bigl\{(t,z,m)\in\mathbb Z^3:\ t\in I,\ z\in B(t),\ \lvert B(t)\rvert\ge2,\ (t,z,m)\in\mathcal M\bigr\}$$
とおく.「命題6:手の曲面」(1) により,$\mathfrak M(\mathcal B)$ は除去できる組 $(t,z)$ の全体と1対1に対応する.手の曲面 $\mathcal M$ に含まれる $\mathbb Q$ 上既約な曲線 $\Gamma$ で,$\Gamma\cap\mathfrak M(\mathcal B)$ が無限集合となるものを,$\mathcal B$ の特殊曲線と呼ぶ.
また,$\Gamma$ の非特異射影モデル $\tilde\Gamma$ の $\overline{\mathbb Q}$ 上の点で,座標 $t,z,m$ のどれかが極をもつものを,$\Gamma$ の無限遠点と呼ぶ.
$\Gamma\subset\mathbb A^3$ を $\mathbb Q$ 上の既約なアフィン曲線,$A=\mathbb Q[\Gamma]$ をその座標環($t,z,m$ で生成される),$\nu:\Gamma^\nu\to\Gamma$ を正規化とする.$\Gamma^\nu$ 上の正則関数 $f$ に対して,正の整数 $N_f$ が存在して,$\nu(P)$ が $\Gamma$ の整数点であるようなすべての $P\in\Gamma^\nu(\mathbb Q)$ について $N_f\,f(P)\in\mathbb Z$ が成り立つ.
数体 $K$ 上で定義された $f\in\mathcal O(\Gamma^\nu_K)$ についても,$N_f\in\mathbb Z_{>0}$ があって,$\nu(P)$ が整数点であるようなすべての $P\in\Gamma^\nu(K)$ について $N_f\,f(P)$ は $K$ の整数環 $\mathcal O_K$ に属する.
$\Gamma^\nu$ の座標環は $A$ の(関数体の中での)整閉包なので,$f$ は $A$ 上整であり,
$$f^e+a_1f^{e-1}+\dots+a_e=0\qquad(a_i\in A)$$
を満たす.各 $a_i$ は $t,z,m$ の有理係数($K$ 上なら $K$ 係数)の多項式で表せるので,それらの係数の分母を払う正の整数 $N$ をとる.$\nu(P)$ が整数点なら $N a_i(P)\in\mathbb Z$($K$ 上なら $\mathcal O_K$)であり,$g=Nf(P)$ は
$$g^e+\bigl(Na_1(P)\bigr)g^{e-1}+\bigl(N^2a_2(P)\bigr)g^{e-2}+\dots+N^ea_e(P)=0$$
を満たす.係数はすべて代数的整数なので $g$ は代数的整数である.$\mathbb Q$ 上なら $g\in\mathbb Q$ なので $g\in\mathbb Z$.$N_f=N$ とすればよい.
$\Gamma$ を等差型の多項式族 $\mathcal B$ の特殊曲線とする.
(1) $\Gamma\cap\mathfrak M$ は $\Gamma$ の整数点の無限集合である.
(2) $t$ は $\Gamma$ 上で定数でない.
$\Gamma$ を等差型の多項式族 $\mathcal B$ の特殊曲線とする.$\tilde\Gamma$ を非特異射影モデルとし,$\Sigma\subset\tilde\Gamma(\overline{\mathbb Q})$ を無限遠点($t,z,m$ のどれかが極をもつ点)の集合とし,$\Gamma^\circ=\tilde\Gamma\setminus\Sigma$ とおく.すると,$\Sigma$ は有限集合で,Galois 群の作用で保たれる.さらに,
$\Gamma$ を等差型の多項式族 $\mathcal B$ の特殊曲線とし,記号は補題18のものを使う.このとき次が成り立つ.
(1) $\tilde\Gamma$ の種数は $0$ で,$\#\Sigma\in\{1,2\}$ である.
(2) $\tilde\Gamma\cong\mathbb P^1_{\mathbb Q}$ である.
(3) $t$ は $\Sigma$ のある点で極をもつ.
$\Gamma$ を等差型の多項式族 $\mathcal B$ の特殊曲線とする.このとき $\Gamma$ は幾何的に既約で,種数は $0$,無限遠点は $1$ 個または $2$ 個であり,次のどちらかが成り立つ.
(1)(多項式型)無限遠点が $1$ 個のとき,$\mathbb Z$ 上で整数値をとる多項式の組 $(\tau_j,\zeta_j,\mu_j)\in\mathbb Q[v]^3$($j=1,\dots,r$)があって,次が成り立つ.
(2)(Pell 型)無限遠点が $2$ 個のとき,2点は実2次体 $K$ 上で定義されて互いに共役である.さらに,整数係数で既約な不定値の2元2次形式 $Q$ と,$Q$ の判別式で決まる $K$ の整環 $\mathcal O$ のノルム $1$ の単数群 $U$(無限群)の有限指数の部分群 $U'$ があって,次が成り立つ.
前半は,「補題20:特殊曲線の正規化」(1) と「補題21:特殊曲線の種数と無限遠点」(1) による.以下,同じ補題 (2) により $\tilde\Gamma\cong\mathbb P^1_{\mathbb Q}$ とし,「補題20:特殊曲線の正規化」(2) により $\Gamma^\circ=\Gamma^\nu$ とする.
(1) 無限遠点が1個の場合
$\Sigma=\{P_\infty\}$ は Galois 群で保たれるので $P_\infty\in\tilde\Gamma(\mathbb Q)$ である.同型 $\tilde\Gamma\cong\mathbb P^1_{\mathbb Q}$ を $P_\infty\mapsto\infty$ となるようにとると,$\Gamma^\circ\cong\mathbb A^1_{\mathbb Q}$ である.その座標を $u$ とすると,$\Gamma^\circ$ 上の関数としての $t,z,m$(正確には $\nu^*t,\nu^*z,\nu^*m$)は $u$ の多項式 $T,Z,M\in\mathbb Q[u]$ であり,「補題19:特殊曲線上の $t$」(2) より $T$ は定数でない.
分母の評価:$D\,T(u)=a_du^d+\dots+a_0$($D,a_i\in\mathbb Z$,$D>0$,$a_d\neq0$)と書く.$\nu(P)$ が整数点となる $P\in\Gamma^\circ(\mathbb Q)$ について $u(P)=p/q$(既約分数,$q>0$)とすると,$T(p/q)\in\mathbb Z$ より
$$a_dp^d+a_{d-1}p^{d-1}q+\dots+a_0q^d=D\,T(p/q)\,q^d\equiv0\pmod q$$
なので $q\mid a_dp^d$,したがって $q\mid a_d$ である.よって $u(P)\in\frac1{a_d}\mathbb Z$ であり,$u(P)=\frac{u'}{a_d}$($u'\in\mathbb Z$)と書ける.
剰余類への分割:$\tilde T(u')=T(u'/a_d)$,$\tilde Z(u')=Z(u'/a_d)$,$\tilde M(u')=M(u'/a_d)$ は有理係数多項式である.有理係数多項式 $F$ について,係数の分母を払う正の整数を $L_F$ とすると,「$F(u')\in\mathbb Z$」は $L_FF(u')\equiv0\pmod{L_F}$ と同値なので,$u'\bmod L_F$ だけで決まる.また $I$ は等差数列なので,「$\tilde T(u')$ が $I$ の剰余条件を満たす」ことも $u'$ のある法での剰余類だけで決まる.したがって正の整数 $L$ があって,
$$\tilde T(u'),\ \tilde Z(u'),\ \tilde M(u')\in\mathbb Z\ \text{かつ}\ \tilde T(u')\ \text{が}\ I\ \text{の剰余条件を満たす}$$
ような $u'$ の全体は,法 $L$ の剰余類 $\rho_1,\dots,\rho_r$ の和である.$\tau_j(v)=\tilde T(\rho_j+Lv)$,$\zeta_j(v)=\tilde Z(\rho_j+Lv)$,$\mu_j(v)=\tilde M(\rho_j+Lv)$ とおけば,これらは $\mathbb Z$ 上で整数値をとる.
$\Gamma\cap\mathfrak M$ が乗ること:$R\in\Gamma\cap\mathfrak M$ が $\Gamma$ の特異点でなければ,「補題20:特殊曲線の正規化」(3) より $R=\nu(P)$ となる $P\in\Gamma^\circ(\mathbb Q)$ があり,$R=\bigl(T(u(P)),Z(u(P)),M(u(P))\bigr)$ である.$R$ の座標は整数で,$R\in\mathfrak M$ より $T(u(P))\in I$ なので,上の議論から $u(P)=(\rho_j+Lv)/a_d$($v\in\mathbb Z$)と書け,$R=(\tau_j(v),\zeta_j(v),\mu_j(v))$ である.$\Gamma$ の特異点は有限個なので,有限個の点を除いて $\Gamma\cap\mathfrak M$ の点はこれらの曲線の上にある.
$\mathfrak M$ に属する条件:各 $j$ と $v$ について,点 $(\tau_j(v),\zeta_j(v),\mu_j(v))$ は $\mathcal M$ の整数点である.「命題6:手の曲面」(1) より,これが $\mathfrak M$ に属することは,$\tau_j(v)\in I$,$\zeta_j(v)\in B(\tau_j(v))$,$\lvert B(\tau_j(v))\rvert\ge2$ と同値である.
部分族であること:$\mathfrak M$ の点を無限個含む $j$ について,$I'=\{v:\text{点が}\ \mathfrak M\ \text{に属する}\}$ は無限集合で,その各点で $\zeta_j(v)$ は $B(\tau_j(v))$ から除去できる.よって $\zeta_j$ は引き戻し $\tau_j^*\mathcal B$ の多項式の手であり,$(\tau_j,\zeta_j)$ は多項式の部分族である($\tau_j$ は定数でない).$\mu_j$ が部分族の $\mu$ と一致することは,無限個の $v$ で値が一致することから従う.
(2) 無限遠点が2個の場合
$\tilde\Gamma\cong\mathbb P^1_{\mathbb Q}$ の斉次座標 $[X:Y]$ を,$\infty=[1:0]$ が $\Sigma$ に属さないようにとる.$\Sigma$ は Galois 群で保たれる2点なので,整数係数の2元2次形式 $Q(X,Y)$ の零点集合として $\Sigma=\{Q=0\}$ と書ける.$Q$ は,$\Sigma$ の2点が $\mathbb Q$ 有理点なら有理係数の1次形式2つの積であり,そうでなければ $\mathbb Q$ 上既約である.
$Q$ の値の有界性:$\Gamma^\circ=\mathbb P^1\setminus\{Q=0\}$ の座標環は,$X^2/Q,\ XY/Q,\ Y^2/Q$ で生成される.$\nu(P)$ が整数点となる $P\in\Gamma^\circ(\mathbb Q)$ を,互いに素な整数で $P=[X:Y]$ と表す.「補題20:整数点の分母」をこの3つの関数に用いると,ある正の整数 $N$ について
$$\frac{NX^2}{Q(X,Y)},\ \frac{NXY}{Q(X,Y)},\ \frac{NY^2}{Q(X,Y)}\in\mathbb Z$$
となる.$\gcd(X^2,XY,Y^2)=1$ なので $Q(X,Y)\mid N$ である.また $P\notin\Sigma$ より $Q(X,Y)\neq0$.したがって $Q(X,Y)$ は $N$ の約数(有限個)の値しかとらない.「補題20:特殊曲線の正規化」(3) より,特異点を除く $\Gamma\cap\mathfrak M$ の点はこのような $P$ の像である.
(i) $Q=\ell_1\ell_2$(有理係数の1次形式の積)のとき,$\ell_1(X,Y)\ell_2(X,Y)=e$ となる $(X,Y)$ は,$\ell_1,\ell_2$ が1次独立なので,各 $e\neq0$ について有限個である. (ii) $Q$ が既約で定値(判別式が負,$K$ は虚2次体)のとき,$Q(X,Y)=e$ の整数解は有限個である. (i)(ii) では $\Gamma\cap\mathfrak M$ が有限となり,「補題19:特殊曲線上の $t$」(1) に反する.よって $Q$ は既約で不定値,つまり $\Sigma$ の2点は実2次体 $K$ 上で定義されて互いに共役である.
(iii) $Q$ が既約で不定値のとき,$Q$ の判別式(平方数でない正の整数)を $\Delta$ とする.$Q$ の固有自己同型群 $\mathrm{SO}(Q,\mathbb Z)=\{\gamma\in\mathrm{SL}_2(\mathbb Z):Q\circ\gamma=Q\}$ は,$\Delta$ で決まる $K$ の整環 $\mathcal O$ のノルム $1$ の単数群 $U$ と同型な無限群である.また,各 $e\neq0$ について,$Q(X,Y)=e$ の整数解の全体は,この群の有限個の軌道の和である.よって $\Gamma\cap\mathfrak M$ は,有限個の点を除き,$U$ の有限個の軌道の和に含まれる.
合同条件:$t,z,m$ は $\Gamma^\circ$ 上の正則関数なので,$F(X,Y)/Q(X,Y)^s$($F$ は $2s$ 次の整数係数形式)の形の有理係数結合で書ける.軌道の上では $Q(X,Y)=e$ は一定なので,「$t,z,m$ が整数で,$t$ が $I$ の剰余条件を満たす」ことは,$(X,Y)$ のある法 $L$ での剰余だけで決まる.法 $L$ の主合同部分群 $U'=\{\gamma\in\mathrm{SO}(Q,\mathbb Z):\gamma\equiv1\pmod L\}$ は,有限群への準同型 $\mathrm{SO}(Q,\mathbb Z)\to\mathrm{SL}_2(\mathbb Z/L\mathbb Z)$ の核なので有限指数である.$U'$ 軌道の上では $(X,Y)\bmod L$ が一定なので,上の条件は軌道全体で成り立つか,どの点でも成り立たない.$U$ の各軌道は $U'$ の有限個の軌道に分かれる.
指数関数的な増大:$Q=a\,\ell_1\ell_2$($\ell_1,\ell_2$ は $K$ 上の共役な1次形式で,$\Sigma=\{\ell_1=0\}\cup\{\ell_2=0\}$)と分解する.$\mathrm{SO}(Q,\mathbb Z)$ の元 $\gamma$ は $\Sigma$ の2点を固定するので,ある単数 $\eta\in U$ について $\ell_1\circ\gamma=\eta\,\ell_1$,$\ell_2\circ\gamma=\eta^{-1}\ell_2$ である.$\gamma$ が有限位数でないとき $\lvert\eta\rvert\neq1$. $t=F/Q^s$ を $\ell_1,\ell_2$ で展開して $F=\sum_{i+j=2s}f_{ij}\ell_1^i\ell_2^j$ とすると,
$$t(\gamma^kP_0)=\frac1{e^s}\sum_{i+j=2s}f_{ij}\,\eta^{k(i-j)}\,\ell_1(P_0)^i\ell_2(P_0)^j$$
である($Q(P_0)=e\neq0$ より $\ell_1(P_0),\ell_2(P_0)\neq0$).「補題21:特殊曲線の種数と無限遠点」(3) より $t$ は $\Sigma$ のある点で極をもち,$t$ は $\mathbb Q$ 上定義されているので,共役なもう1点でも同じ位数 $p>0$ の極をもつ.これは $f_{ij}\neq0$ となる $j$ の最小値が $s-p$ であること,すなわち $i-j$ の最大値が $2p>0$ であることを意味する($\ell_1$ と $\ell_2$ の役割を入れ替えても同様).よって $k\to\pm\infty$ で $\lvert t(\gamma^kP_0)\rvert\asymp\lvert\eta\rvert^{2p\lvert k\rvert}$ となり,$\rho=\lvert\eta\rvert^{2p}$($\lvert\eta\rvert>1$ となる向きにとる)で主張が成り立つ.
$\mathfrak M(\mathcal B)$ の点のうち,多項式型の特殊曲線に乗るものの全体を $\mathfrak M_{\rm poly}$,Pell 型の特殊曲線に乗るものの全体を $\mathfrak M_{\rm Pell}$,どの特殊曲線にも乗らないものの全体を $\mathfrak M_{\rm sp}$ とおくと
$$\mathfrak M(\mathcal B)=\mathfrak M_{\rm poly}\cup\mathfrak M_{\rm Pell}\cup\mathfrak M_{\rm sp}$$
である.$\mathfrak M_{\rm sp}$ の点を散発的な手と呼ぶ.定義より,どの曲線も $\mathfrak M_{\rm sp}$ の点を有限個しか含まない.しかし,無限個の曲線に有限個ずつ散らばることで $\mathfrak M_{\rm sp}$ が無限集合になる可能性は,定理22 からは排除できない.
第2部では,J-λ 理論を多項式族の上で読み直した.
今後の課題として,次の3つが挙げられる.