ここでは東大数理の修士課程の院試の2021B07の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2021B07
連結かつ向き付け可能なコンパクト次元多様体及びその上のRiemann計量を定める。ここで級写像に対して
とおく。
(1) の面積要素に対して
が成り立つことを示せ。
(2) を自然数とする。ならばであることを示せ。
(3) かつであるようなの例を挙げなさい。
- まず各点の近傍の座標系をが体積形式を定めるようにとる。そしてこのようにとったときのの近傍の座標系をとおく。このとき
である。ここでは常に
を満たしているから、辺々積分をとることによって結果が従う。 - まず写像度
は必ず整数であるから、これと(1)より、のときが従う。 - とし、を及びについてのGram行列
によって定める。ここで
とおく。このときに対して
であるから、これは例になっている。