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大学数学基礎解説
文献あり

非整数階時間微分を含む拡散方程式の最大値原理について

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Maximum Principle for the Time-fractional diffusion equation

Introduction

ここでは, 次の初期値境界値問題
(1){0cDtαu=Lu+fin  Ω×(0,T)=:QT,u=von  Ω×[0,T]=:ΣT,u=u0on  Ω×{t=0}=:Γ0
について考える. ここで, α(0,1),
Lu=(p(x)u)q(x)
であり, 任意のxΩに対して
pC1(Ω), qC(Ω), p(x)>0, q(x)0
かつFC(QT),u0C(Ω),vC(Ω×[0,T])をみたすと仮定する. 次に, 問題(1)の解の定義を述べる.

古典解(Classical solution)

uC(QT)W1(0,T)C2(Ω)が問題(1)をみたすとき, uは問題(1)の古典解という. ここで,
W1(0,T)={fC1((0,T]);fL1(0,T)}
である.

今回は次の最大値原理(Maximum Principle)と呼ばれる通常の拡散方程式でよく知られている定理の証明を行う.

Maximum Principle

uが問題(1)の古典解であり, f0 in QTとする. このとき,
u(x,t)max{0,max(x,t)Γ0ΣTu(x,t)},  (x,t)QT
が成立する.

Extremum Principle

本章では, 定理1の証明の際に必要なCaputo微分に対するExtremum Principleと呼ばれる次の補題の証明をする.

Extremum Principle

fW1(0,T)C([0,T])t=t0, t0(0,T]で最大値をとる関数とする. このとき, 任意のα(0,1)に対して
0cDtαf(t0)0
が成立する.

h(t)=f(t0)f(t),  t[0,T]
とすると,
h(t)0,  t[0,T]
である. 故に, 定数関数のCaputo微分は0になるので,
0cDtαh(t)=0cDtαf(t)
となる. δ(0,t0)を任意に固定し,
0cDtαh(t0)=0t0gα(t0τ)h(τ) dτ  (gα(t)=tαΓ(1α))=(0δ+δt0)(gα(t0τ)h(τ)) dτ=I1+I2
とする. まずI1hL1(0,T)よりδ0とすれば|I1|0を得る. I2は部分積分より
I2=δt0gα(t0τ)h(τ) dτ=[gα(t0τ)h(τ)]τ=δτ=t0δt0gα(t0τ)h(τ) dτ
であり, 第1項はτt0のとき平均値の定理を用いると
|gα(t0τ)h(τ)|=1Γ(1α)(t0τ)a|f(t0)f(τ)|Cαmaxt(τ,t0)|f(s)||t0τ|1α0  as  τt0
と評価できる. したがって続きを計算すると
I2=gα(t0δ)h(δ)δt0gα(t0τ)h(τ) dτ=gα(t0δ)h(δ)αΓ(1α)δt0(t0τ)α1h(τ) dτ
となるので, δ0とすればI20が得られる. 以上の議論より0cDtαh(t0)0すなわち0cDtαf(t0)0が得られ補題が示された.

Proof of Theorem 1

背理法で示す. ある(x0,t0)Ω×(0,T]に対して
u(x0,t0)>max(x,t)ΣTΓ0{0,u(x,t)}=M>0
であると仮定する. ここで, ε=u(x0,t0)M>0とし,
w(x,t)=u(x,t)+ε2TtT,  (x,t)QT
と定義する. まずwの定義より
w(x,t)=u(x,t)+ε2TtTu(x,t)+ε2
であり, (x,t)ΣTΓ0に対して,
w(x0,t0)u(x0,t0)=ε+Mε+u(x,t)ε+w(x,t)ε2=w(x,t)+ε2
と評価できる. これはwΣTΓ0で最大値を取らないことを意味している. もしwΩ×[0,T]上のある点(x1,t1)で最大値を取るとすると, x1Ω, t1(0,T]であり,
w(x1,t1)w(x0,t0)ε+M>ε
をみたす. また, Lemma 1とw(x1,t1)で最大値を取ることより,
{0cDtαw(t1)0,(w)(x1,t1)=0,  (Δw)(x1,t1)0
をみたす. u=wε2TtTのCaputo微分は,
0cDtαu=0cDtαwε20cDtα(TtT)=0cDtαw+ε2T0cDtαt
となり, 冪関数のCaputo微分は
0cDtα(tβ)=Γ(1+β)Γ(1α+β)tβα,  β>0
であることから
0cDtαu=0cDtαw+ε2Tt1αΓ(2α)
が得られる. したがって, u(x1,t1)=w(x1,t1)ε2Tt1Tを問題(1)の方程式に代入すると,
0cDtαu(x1,t1)((pu))(x1,t1)+q(x1)u(x1,t1)f(x1,t1)=0cDtαu(x1,t1)(pu)(x1,t1)p(x1)Δu(x1,t1)+q(x1)u(x1,t1)f(x1,t1)=0cDtαw(x1,t1)+ε2Tt11αΓ(2α)(pw)(x1,t1)        p(x1)Δw(x1,t1)+q(x1)(w(x1,t1)ε2Tt1T)f(x1,t1)ε2Tt11αΓ(2α)+εq(x1)(1Tt12T)=ε2Tt11αΓ(2α)+εq(x1)T+t12T>0
となる. これはuが問題(1)の解であることに矛盾する. 以上より, 定理の証明が完了した.

同様に次の系を得る.

Minimum Principle

uが問題(1)の古典解であり, f0 in QTとする. このとき,
u(x,t)min{0,min(x,t)Γ0ΣTu(x,t)},  (x,t)QT
が成立する.

最大値原理, 最小値原理から古典解の一意性がしたがう.

Uniqueness of Classical solution

問題(1)の古典解は一意である.

u1,u2を問題(1)の古典解とし, u=u1u2とおく. このとき, 初期値境界値問題
{0cDtαu=Luin  QT,u=0on  ΣT,u=0on  Γ0
に対して最大値原理と最小値原理を適用させるとu=0すなわちu1=u2を得る.

参考文献

[1]
Luchko, Yu., Maximum principle for the generalized time-fractional diffusion equation, Journal of Mathematical Analysis and Applications, 2009, 218-223
投稿日:202391
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カメ
カメ
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大学院では非線形拡散方程式(主にFast Diffusion, Porous Medium), 非整数階時間微分を含む拡散方程式を専攻していました. 現在は非整数階時間微分を含む拡散方程式の可解性の研究をしています.

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