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大学数学基礎解説
文献あり

多項式の根が連続に動くこと

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$$\newcommand{c}[2]{\begin {pmatrix} #1 \\ #2 \\\end{pmatrix}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{e}[2]{\displaystyle\bigg\langle{#1 \atop #2}\bigg\rangle} $$

はじめに

$f\in \mathbb{C} [x]$の根は係数を連続に動かしたときに連続に動くということをちゃんと言いたくなったので, (勝手に)定式化して述べた上で証明します.

主張と証明

方針

$(a_{1}, \dots, a_{n-1}, a_{n})\in \mathbb{C}^n $について$f(x)=x^n+a_{1}x^{n-1}+\cdots+a_{n-1}x+a_{n}$の根$\lambda_1, \dots, \lambda_n$を対応させる写像$\psi$を考えたい. しかし根の並べ替えの任意性があるので, $\psi$の終域を$ \mathbb{C}^n/S_n $ ($S_n$$n$次対称群)とすることでこれを解決する. $\psi$の逆写像の方が考えやすい(基本対称式を対応させる写像になっている)ので, そちらを考える.

準備

$S_n$$\mathbb{C}^n$への作用を$\sigma\cdot(a_1, \dots, a_n)=(a_{\sigma^{-1}(1)}, \dots, a_{\sigma^{-1}(n)})$で定め, 商空間$\C^n/S_n$を考える.

$\lambda=(\lambda_1, \dots, \lambda_n)$について, $I_k(\lambda)$$\lambda$$k$次の基本対称式とする. $\varphi:\mathbb{C}^n\to\C^n$$\varphi(\lambda)=(-I_1(\lambda), I_2(\lambda), \dots, (-1)^nI_n(\lambda))$ で定める. これは多項式の根を係数に送る写像である. $\varphi$$\lambda$の並び替えによらず等しいので, 商空間の普遍性より連続写像$\widetilde{\varphi}:\C^n/S_n\to\C^n$が誘導される. 任意の$n$次の$f\in\C[x]$は重複を含めて$n$個の根を持ち, それらは並び替えを除いて一意であることから, $\widetilde{\varphi}$が全単射であることが従う.

以上を踏まえ, 多項式の根が連続に動くということを以下の命題として定式化する:

$\widetilde{\varphi}$の逆写像は連続である.

以下これを示す. 証明に用いる命題をひとつ用意する.

(貼り合わせの補題)

$X, Y$を位相空間とし, $f:X\to Y$を写像とする. $X$の局所有限な閉被覆$\{A_{\alpha}\}_{\alpha}$について, 任意の$\alpha$$f$$A_{\alpha}$への制限が連続なとき, $f$は連続である.

閉集合$C\subset Y$をとる. 各$\alpha$$A_{\alpha}\cap f^{-1}(C)=(f|_{A_{\alpha}})^{-1}(C)$$A_{\alpha}$の閉集合で, $A_{\alpha}$$X$の閉集合なので, $A_{\alpha}\cap f^{-1}(C)$$X$の閉集合. よって$\left\{A_{\alpha}\cap f^{-1}(C)\right\}_{\alpha}$$X$の局所有限な閉集合族. 一般に$X$の局所有限な閉集合族$\{B_{\beta}\}_{\beta}$について$\bigcup_{\beta}B_{\beta}$$X$の閉集合なので, $f^{-1}(C)=\bigcup_{\alpha}\left(A_{\alpha}\cap f^{-1}(C)\right)$$X$の閉集合.

以上のことを用いて, 命題1を証明する.

命題1の証明

$n$ごとに十分大きい$r>0$をとる(具体的には$r=\sqrt{2n}$など). $\C^n$の各格子点$\alpha$を中心とする半径$r$の(中身の詰まった)閉球の族$\{A_{\alpha}\}_{\alpha}$を考える. これは$\C^n$の局所有限な閉被覆を与える.

$\varphi^{-1}(A_{\alpha})$は有界である.

$a=(a_1, \dots, a_n)\in A_{\alpha}$とし, $f_a(z)=z^n+a_1z^{n-1}+\cdots+a_{n-1}z+a_n$とする. ある$M>0$が存在して, 任意の$a, i$$|a_i|\leq M$が成り立つ. また, ある$R>0$が存在して,
$$ \frac{M}{R}+\frac{M}{R^2}+\cdots+\frac{M}{R^n}<\frac{1}{2} $$
が成り立つ. よって, 任意の$a\in A_{\alpha}, |z|>R$について
\begin{align} \frac{1}{2} &<1-\left(\frac{M}{R}+\frac{M}{R^2}+\cdots+\frac{M}{R^n}\right) \\ &\leq 1-\left(\frac{|a_1|}{|z|}+\frac{|a_2|}{|z^2|}+\cdots+\frac{|a_n|}{|z^n|}\right) \\ &\leq 1-\left|\frac{a_1}{z}+\frac{a_2}{z^2}+\cdots+\frac{a_n}{z^n}\right| \\ &\leq \left|1+\frac{a_1}{z}+\frac{a_2}{z^2}+\cdots+\frac{a_n}{z^n}\right| \\ &=\left| \frac{f_a(z)}{z^n} \right| \end{align}
が成り立つので, $|z|>R$$f_a(z)=0$は解を持たない. いま, $\varphi$の定め方より任意の$(\lambda_1, \dots, \lambda_n)\in \varphi^{-1}(A_{\alpha})$について各$\lambda_i$はある$f_a$の根なので, 各$i$$|\lambda_i|\leq R$が成立し, $\varphi^{-1}(A_{\alpha})$が有界であることが従う.

$A_{\alpha}$は閉集合なので$\varphi^{-1}(A_{\alpha}) $も閉集合であり, かつ有界なのでハイネ・ボレルの定理よりコンパクトである. 商写像$p:\mathbb{C}^n\to\mathbb{C}^n/S_n$ による$\varphi^{-1}(A_{\alpha}) $の像はコンパクト集合の連続写像による像なのでコンパクトで, $\widetilde{\varphi}$$p\left(\varphi^{-1}(A_{\alpha})\right)$への制限はコンパクト集合から像(これは$A_\alpha$と一致し, ハウスドルフである)への連続全単射であるから, 像への同相写像を与える. したがって, $\widetilde{\varphi}^{-1}$$A_{\alpha}$への制限は連続である. ここで命題2を用いることで, $\widetilde{\varphi}^{-1}$の連続性が従う.

おわりに

ほぼ解析的な議論をせずに示せてしまいました. $\C^n$$\C^n/S_n$が同相であることがわかってしまいましたが, 自分は全然イメージできないです. 間違っているところがあったら教えてくださると助かります.

参考文献

投稿日:15時間前
更新日:14時間前
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翁
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