自己同型と内部自己同型
(自己同型)
を代数とする。
が代数の同型写像のとき、特に自己同型写像とか自己同型という。
の自己同型の全体をとかく。つまり、{は同型}
はを含まないので、線型空間とはならないが、写像の合成を積として群をなすので、代数の自己同型群とよぶ。
今回はの元についての例を見ていく。
を有限次元線型空間とし、を線型代数とする。
が、すべてのに対し、をみたすとき、
に対し、写像と定める。
このとき、である。(である。)
という条件はとなるための条件である。
となる例
とすると、すべてのに対し、をみたすので、に対し、写像は自己同型。
とすると、すべてのに対し、
である。
よって、をみたすので、に対し、
写像は自己同型。
以下、の標数は0とする。(orと思えばいい)
(巾零行列、巾零変換)
が巾零行列であるとは、あるが存在して、となることをいう。
同様に、を線型空間として、が巾零変換であるとは、あるが存在して、となることをいう。
巾零や冪零は画数が多いので、と書いたりする。
を代数とする。について、が巾零で、特にに対して、とするとき、を
と定める。
上記の仮定の下で、は線型変換であり、が逆写像である。と読みかえる。
続いて、が代数の準同型であることを示そう。あえて、より一般的な形で示す。
を代数とする。を上の微分で巾零なものとする。
このとき、である。
まず、は巾零なので、あるが存在して、である。
したがって、と表される。
やはり、は線型同型写像であるので、かっこ積を保つことを確認すれば良い。
を任意にとる。則より、帰納的に次が分かる。と略記すると、
が成り立つ。
このとき、
行目から行目の間には、と、ななめに足すことの合わせ技を使うとわかる。
さて、表記を元に戻すと、
すなわち、がわかる。
が線型同型写像であることについて
線型性は、の合成の線型結合であることからわかる。
の逆写像はであることからわかる。
なお、は上の微分には基本的にならない。
は上の微分であるので、補題により、が巾零ならば、
(内部自己同型)
を代数とする。について、が巾零とする。
このとき、を内部自己同型という。
より一般に、{|は巾零}で生成されるの元全体をと書いて、の元を内部自己同型という。
ようするに、という形の元を内部自己同型というわけである。
もちろん、このように定義するのは、をの部分群にするためである。
を代数とし、とする。
が巾零ならば、も巾零である。
はの正規部分群である。
であるので、が成り立つ。
が巾零より、が存在して、となる。
このとき、
したがって、は巾零である。
は巾零としよう。として、とする。
まず、の元を任意にとる。
の元は、とかける。(は巾零)
任意のに対し、
は巾零なので、
つまり、となり、はの正規部分群である。
での計算例
とおく。(ただし、の標数はとする。)
の基底として次を選ぶ。
と定める。
以下、計算は後で確認することにして、話の流れを説明する。
このとき、と定めると、
は巾零なので、であることがわかる。
特に、の正体は、である。
今度は、に倣って、と定めると、
例1のを考え、基底の行き先を計算すると、
なんと、となることがわかる。
これは偶然ではなく、適切な仮定の下で正しいことを計算の後に定理として述べる。
計算例の確認
は巾零であること
基底の行き先を具体的に書き表してみよう。
であるので、
すなわち、である。同様に、である。
従って、は巾零である。
たちの計算
直前の結果より、
これより、
同様に、
よって、
従って、である。
また、なので、
これより、
さらに、
すなわち、となっている。
を標数がの体上の有限次元線型空間とし、を線型代数とする。
が巾零であるとき、すべてのについて、が成り立つ。
であるので、
と定めると、
より、とかける。
は線型写像で、可換である。つまり、
が巾零より、も巾零である。これらを用いて、計算する。
が巾零より、を満たす自然数が存在するので、がわかる。
したがって、
すなわち、
定理3を用いて、例2のを示そう。
定理3を書き直すと、とかける。
より、