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競技数学解説
文献あり

一般化simasima special(主張と証明編)

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はじめに

この記事は 重み付き集合の記事 の続きです。先にそちらを見ることをおすすめします(前回の記事の記号を踏襲しているので、そもそも見ないと理解するのがかなり難しいと思います)。

一般化simasima special

まず、simasima specialを適用する規格を定める。

simasima data

以下のデータからなる組(U,X,G,K,P)simasima dataと呼ぶ。

  • 全体集合 U および XSetfinsupp(U,K)
  • アーベル群 G および標数0の体 K
  • 写像 ϕ:UG
  • P={A1,,Ar,B} は以下を満たす。このとき PX の分割と呼ぶ。
  • A1,,Ar,BSetfinsupp(U,K)X=A1++Ar+B を満たす。
  • i=1,,r に対して diK が存在し、ϕAi への制限 ϕ|AiG のある部分群 Hi への di1写像となる。
  • i=1,,r に対して Hi{0G} である。
  • 相異なる i,j=1,,r に対して HiHj={0G} となる。

(標数0の体 K が何かわからない人は有理数全体の集合 Q や実数全体の集合 R、複素数全体の集合 C だと思ってください)

また、特にいい性質を示すsimasima dataも定めておく。

goodなsimasima data

simasima data S=(U,X,G,K,P) に対して、S がgoodであるとは ϕ(B)i=1rHi を満たすことをいう。すなわち任意の bB に対して hi=1rHi が存在して ϕ(b)=h となることである。

S がgoodであるとは r=1 のときは ϕ(B)H1 であり r2 においては、定義1の最後の性質から ϕ(suppB)=,{0G} と同値であることに注意せよ。

それではいよいよ一般化simasima specialの主張を述べよう。

一般化simasima special

以下のように記号を定める。

  • simasima data S=(U,X,G,K,P)
  • P={A1,,Ar,B}
  • n は正の整数
  • 非負整数 a1,,ar,bgG に対して集合 Qa1,,ar,b(g) を次のように定める。
    Qa1,,ar,b(g):={(x1,,xb)Ub;i=1bϕ(xi)g+ai>0Hi}
  • 特に a1==ar=0, b=n のとき
    Qn(g):=Q0,,0,n(g)={(x1,,xn)Un;i=1nϕ(xi)=g}
    このとき
    |XnQn(g)|=a1++ar+b=nn!a1!ar!b!|BbQa1,,ar,b(g)|i;ai>0|Ai|ai|Hi|
    と表せる。ただし ai>0 となる 1ir を全て走る。

この定理では Hi{0G} というsimasima dataの条件はなくても成立する。
また X が通常の集合と同一視できるときは XnQn(g)
{(x1,,xn)Xn;i=1nϕ(xi)=g}
と同一視できる。この集合の濃度はsimasima specialで計算したいものであった。

XnQn(g)=(A1++Ar+B)nQn(g)
であるので (A1++Ar+B)n を展開した各項を E とすると
|XnQn(g)|=E|EQn(g)|
である。E に現れる Ai の個数が aiB の個数が b であるとき、n=a1++ar+b であり、このような E の個数は n!a1!ar!b! 個ある。
σ:XnXn を任意の成分の並び替えとすると、任意の xQn(g) に対して σ(x)Qn(g) である。よって
|EQn(g)|=|(A1a1××Arar×Bb)Qn(g)|
である。よって、E の直積の順番を入れ替えても値が変わらないので
E|EQn(g)|=a1++ar+b=nn!a1!ar!b!|(A1a1××Arar×Bb)Qn(g)|
である。よって
E=A1a1××Arar×Bb
に対して
|EQn(g)|=|BbQa1,,ar,b(g)|i;ai>0|Ai|ai|Hi|
を示せば十分。r=0 のときは自明に成り立つ。
r1 までで成立しているなら r のときも成立することを示す。
a1,,ar のうち0であるものが存在するなら r1 までの場合に帰着されるので成立。よって以下では a1,,ar>0 のときを示す。
|EQn(g)|=fB(y1)fB(yb)i=1rfAi(x1(i))fAi(xai(i))
となる。ただし xj(i)Ai(1ir,1jai), ykB(1kb)
i,jϕ(xj(i))+kϕ(yk)=g
となるものを走る。
この条件式を満たすとき、特に
kϕ(yk)g+i=1rHi
である。また hiHi
|Ai||Hi|=d=|ϕ|Ai1(hi)|=ϕ(x)=hifAi(x)
である。よって hHi に対して
jϕ(xj(i))=hfAi(x1(i))fAi(xai(i))=x2(i),,xai(i)AifAi(x2(i))fAi(xai(i))ϕ(x1(i))=hϕ(x2(i))ϕ(xai(i))fAi(x1(i))=|Ai|ai1|Ai||Hi|=|Ai|ai|Hi|
が成立する。以上から
fB(y1)fB(yb)i=1rfAi(x1(i))fAi(xai(i))=khkHk jϕ(yj)=g+ihifB(y1)fB(yb)i=1rjϕ(xj(i))=hifAi(x1(i))fAi(xai(i))=khkHk jϕ(yj)=g+ihifB(y1)fB(yb)i=1r|Ai|ai|Hi|=jϕ(yj)g+iHifB(y1)fB(yb)i=1r|Ai|ai|Hi|=|BbQa1,,ar,b(g)|i=1r|Ai|ai|Hi|
となり、定理は示される。

一般化simasima special(goodである場合 特殊型)

記号を定理1の通りとする。さらに S がgoodであるとする。このとき
|XnQn(0G)|=|BnQn(0G)||B|n+i(11|Hi|){|B|n+i|Ai+B|n|Hi|1+i<j|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}
が成立する。特に ϕ(suppB)={0G} となるときは
|XnQn(0G)|=i(11|Hi|){|B|n+i|Ai+B|n|Hi|1+i<j|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}
と表せる。

S がgoodであるとき (a1,,ar,b)(0,,0,n) ならば
BbQa1,,ar,b(0G)=Bb
であり、さらに ϕ(suppB)={0G} であれば BnQn(0G)=Bn となることに注意すると定理1から
a1++ar+b=nn!a1!ar!b!|B|bi;ai>0|Ai|ai|Hi|=i(11|Hi|){|B|n+i|Ai+B|n|Hi|1+i<j|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}
を示せば十分であることがわかる。
r=0 のとき自明に成立する。r のとき成立すると仮定して r+1 のとき成立することを示す。
a1++ar+1+b=nn!a1!ar+1!b!|B|bi;ai>0|Ai|ai|Hi|=a1++ar+b=nn!a1!ar!b!|B|bi;ai>0|Ai|ai|Hi|+ar+1=1n(nar+1)|Ar+1|ar+1|Hr+1|a1++ar+b=nar+1(nar+1)!a1!ar!b!|B|bi;ai>0|Ai|ai|Hi|=ir(11|Hi|){|B|n+ir|Ai+B|n|Hi|1+i<jr|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}+ar+1=1n(nar+1)|Ar+1|ar+1|Hr+1|ir(11|Hi|){|B|nar+1+ir|Ai+B|nar+1|Hi|1+i<jr|Ai+Aj+B|nar+1(|Hi|1)(|Hj|1)+}=ir(11|Hi|){|B|n+ir|Ai+B|n|Hi|1+i<jr|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}+ir(11|Hi|){|Ar+1+B|n|B|n|Hr+1|+ir|Ai+Ar+1+B|n|Ai+B|n|Hr+1|(|Hi|1)+i<jr|Ai+Aj+Ar+B|n|Ai+Aj+B|n|Hr+1|(|Hi|1)(|Hj|1)+}=ir(11|Hi|){(11|Hr+1|)|B|n+(11|Hr+1|)i|Ai+B|n|Hi|1+(11|Hr+1|)i<jr|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}=i(11|Hi|){|B|n+i|Ai+B|n|Hi|1+i<j|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}
以上から示された。

この定理の一般化を述べるために、まず新たな次の記号を導入する。
simasima data S{1,2,,r} の通常の意味での部分集合 T に対して
N(S,T):=iT(11|Hi|){|B|n+iT|Ai+B|n|Hi|1+i,jTi<j|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}
と定める。

一般化simasima special(goodである場合 一般型)

記号を定理1の通りとする。さらに S がgoodであるとする。
また相異なる i1,,ik{1,,r}hi1Hi1{0G},,hikHik{0G} を用いて g=hi1++hik と表せるとする。このとき S={i1,,ik} とすると
|XnQn(g)|=|BnQn(g)||B|n+TS(1)|T|N(S,T)
が成立する。ただし TS の通常の意味での部分集合全体を走る。

S がgoodであるとき (a1,,ar,b)(0,,0,n) かつ ai1,,aik>0 ならば
|BbQa1,,ar,b(g)|=|B|b
となり, (a1,,ar,b)(0,,0,n) かつ ai1,,aik のうち少なくとも1つが0ならば
|BbQa1,,ar,b(g)|=0
となる。これと定理2の証明の過程で示した
a1++ar+b=nn!a1!ar!b!|B|bi;ai>0|Ai|ai|Hi|=i(11|Hi|){|B|n+i|Ai+B|n|Hi|1+i<j|Ai+Aj+B|n(|Hi|1)(|Hj|1)+}
を用いると包除原理的に定理1から従う。

これ以上の一般化は可能なのか

結論を言うと可能である。そのことを説明するためにsimasima specialによる解法と多項式による解法との比較を行う。

具体例として次の問題を再び考える。

京都大学前期文系問題4(1994年 改題)

さいころをn回続けて投げるとき、出た目の和が7で割り切れる場合の数を求めよ。

これをsimasima specialで解く方法は
X={1,2,3,4,5,6}, A={0,1,2,3,4,5,6}, B={0}
として対称性を生み出す A とそれ以外 B に分けて計算する方法である。

このことを多項式的に解釈する。
まず本問題は (x+x2+x3+x4+x5+x6)nx71 で割った余りの定数項を求めることに帰着できる。そこで
(x+x2+x3+x4+x5+x6)n={(1+x+x2+x3+x4+x5+x6)1}n
を二項展開することを考える。ただし A1+x+x2+x3+x4+x5+x6B1 に対応していることに注意。
各項は (1+x+x2+x3+x4+x5+x6)k の定数倍で表されるが、k>0 ならば
(1+x+x2+x3+x4+x5+x6)k=(1+x+x2+x3+x4+x5+x6)k1(1+x+x2+x3+x4+x5+x6)
と分解できる。
二式目の第一項を展開したときの各項はその次数によらず、二項目との積を考えると x の指数が7の倍数になるものがただ一つだけできる。
よって (1+x+x2+x3+x4+x5+x6)k1 を展開したときの係数の和を求めればよく、これは 7k1 となる。これを足し合わせると答えを得る。

このようにsimasima specialを解釈できる。

次にこの問題を考えよう。

OMC048(C)改題

a1,,an{0,1}であって、総和が4の倍数になるものは何個存在するか求めよ。

この問題は simasimaさんの記事 にも取り上げられている。
まず n が偶数ならば n=2k とすると a1+a2,,a2k1+a2k{0,1,1,2} の総和と考えられる。よって
X={0,1,1,2}, A={0,2}, B=2{1}
とすればsimasima specialから答えを求めることができる。
n が奇数のときは n=2k+1 とすると a1+a2,,a2k1+a2k{0,1,1,2} の総和を4で割った余りが0,3のいずれかになる場合の数と一致するので、偶数の場合と同様simasima specialが適用できる。

では、n の偶奇を分けずにsimasima specialを適用できるような分割を構成できるだろうか。上記で一般化したsimasima specialそのままでは太刀打ちできない。ではどのような一般化すればsimasima specialを使えるようになるだろうか。

まず、この問題を多項式で解釈しよう。
(1+x)nx41 で割った余りの定数項が求める答えである。
次のような変形を考える。
(1+x)n={12(1+x+x2+x3)+1i4(1+(ix)+(ix)2+(ix)3)+1+i4(1+(ix)+(ix)2+(ix)3)}n
ここで
1+x+x2+x3=(x+1)(xi)(x+i)1+(ix)+(ix)2+(ix)3=i3(x1)(x+1)(xi)1+(ix)+(ix)2+(ix)3=(i)3(x1)(x+1)(x+i)
となることに注意すると (1+x)nx41 で割った余りは
(12)n(1+x+x2+x3)n+(1i4)n(1+(ix)+(ix)2+(ix)3)n+(1+i4)n(1+(ix)+(ix)2+(ix)3)n
x41 で割った余りに等しい。よって、この定数項は先ほどと同じ議論をすると
(12)n4n1+(1i4)n4n1+(1+i4)n4n1=2n+(1+i)n+(1i)n4
と求められる。これを群論的な解釈に落とし込めば、おそらく一般化できるだろう(従来の方法では {0,1,2,3} という形のものが対称性を作り出していたが、01個、1i個、21個、3i個持っている重み付き集合なども対称性を生み出すと言うことだ)。

ちなみに
1+x=12(1+x+x2+x3)+1i4(1+(ix)+(ix)2+(ix)3)+1+i4(1+(ix)+(ix)2+(ix)3)
という分割の導出であるが、これは f(x)=1+x+x2+x3 として
1+x=af(x)+bf(ix)+cf(x)+df(ix)
の両辺に x=±1,±i を代入すると a,b,c,d が直ちに求められる。

すなわち、これは実質的に (1+x)nx の指数が4の倍数となる係数の和だから f(x)=(1+x)n として
f(1)+f(i)+f(1)+f(i)4=2n+(1+i)n+(1i)n4
とする解法と同じである。

以上のことから、この方針でさらなる一般化をするならば、多項式による解法とsimasima specialを融合させることになるだろう。

これを思いついたのがこの記事を執筆している途中だったので、また気が向いたらまとめてみたい(いつになるのやら)。

最後に

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
せっかく一般化したので、気が向いたらsimasima specialの問題をたくさん扱う記事を書くのもありですね(やるとは言っていない)。また、面白い一般化ができた方は教えてくださると喜びます。

参考文献

投稿日:19
更新日:110
OptHub AI Competition

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  2. 一般化simasima special
  3. これ以上の一般化は可能なのか
  4. 最後に
  5. 参考文献