はい、実は連載だったんです!!
それじゃあパッパとやってきましょうね〜〜(やっつけ仕事)
$f,g\in E_{n,p}$について$\mathcal{R}$-同値(right equivalent)とは
$f\sim_{\scriptsize{\mathcal{R}}}g\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}\exists h:(\mathbb{K}^{n},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{n},0)$:微分同相 s.t. $f=g\circ h$
つまり,定義域を微分同相で変換してあげたときに$f$が$g$に一致するなら,$f$と$g$は同じと見なそうね!!ってことです
$f=xy$と$g=x^{2}-y^{2}$は$\mathcal{R}$-同値
$\because h(u,v)=(\frac{1}{2}(u+v),\frac{1}{2}(u-v))$とすれば,
$g\circ h(x,y)=(\frac{1}{2}(x+y))^{2}-(\frac{1}{2}(x-y))^{2}=xy=f(x,y)$
これと似た要領で以下のような同値もあります
$f,g\in E_{n,p}$について$\mathcal{A}$-同値とは
$f\sim_{\scriptsize{\mathcal{A}}}g\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}\exists \varphi:(\mathbb{K}^{n},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{n},0), \phi:(\mathbb{K}^{p},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{p},0)$:微分同相 s.t. $f=\phi\circ g\circ\varphi$
今度は値域も微分同相で変換してあげてますね!ここからすぐに($\phi$を恒等写像とすれば)$\mathcal{R}$-同値は$\mathcal{A}$-同値であるとわかります.ただ,逆は成り立ちません.
$f(x)=(x,x),g(x)=(x,x^{2})\in E_{1,2}$は$\mathcal{A}$-同値であるが,$\mathcal{R}$-同値でない.
$\because \varphi$を恒等写像,$\phi(u,v)=(u,v^{2})$とすれば良いが,
$\varphi$をどう取っても,$f\circ\varphi\neq g$となる.
値域の方だけ変換してあげる同値のことを$\mathcal{R}$-同値に対して$\mathcal{L}$-同値(left equivalent)といいます.これに関しても$\mathcal{L}$-同値は$\mathcal{A}$-同値と言えますね!
学び始めの頃はここらへんの違いがよく分からず大変でしたね...同値の判定にも時間がかかりましたが,毎日感謝の座標変換1万回を繰り返していくと段々慣れていきます.最近になってくると祈る時間が増えてきましたしね!
(ネタが分からない人はすぐにMathlogを閉じてHANTER$\times$HANTERを見てください!!少なくとも特異点論よりは大事です)
...と思った方、、、お 待 た せ い た し ま し た !!
$\mathcal{K}$-同値の定義をします!!
$f,g\in E_{n,p}$について$\mathcal{K}$-同値(contact equivalent)とは
$f\sim_{\scriptsize{\mathcal{K}}}g\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}\exists \varphi:(\mathbb{K}^{n},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{n},0), A\in GL(p,E_{n})$:$E_{n}$成分の$p\times p$行列 s.t. $f=A\cdot(g\circ\varphi)$
『$\mathcal{K}$-同値は"微分同相変換"と"行列変換"両方の性質を持つ$\clubsuit$』
さて,意味を考えていきましょう.まず,行列変換の意味です.
$A=\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
h_{11} & \cdots & h_{1p} \\
\vdots & \ddots & \vdots\\
h_{p1} & \cdots & h_{pp}
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}$(ただし,$h_{ij}\in E_{n}$)とする.
このとき,$f=\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{ccc}
h_{11} & \cdots & h_{1p} \\
\vdots & \ddots & \vdots\\
h_{p1} & \cdots & h_{pp}
\end{array}
\right)
\cdot
\left(
\begin{array}{c}
g_{1}\circ\varphi \\
\vdots \\
g_{p}\circ\varphi
\end{array}
\right)=
\left(
\begin{array}{c}
h_{11}\cdot g_{1}\circ\varphi+\cdots+h_{1p}\cdot g_{p}\circ\varphi \\
\vdots \\
h_{p1}\cdot g_{1}\circ\varphi+\cdots+h_{pp}\cdot g_{p}\circ\varphi
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $となるので,
$f$の成分$f_{1}\cdots f_{p}$は$\langle g_{1}\circ\varphi,\cdots,g_{p}\circ\varphi\rangle_{E_{n}}$:イデアルの元と思える
さてイデアルという言葉が登場しましたね!!さっきまで微分同相という幾何の言葉しか使っていなかったのに,急に代数として考えられてしまうわけです.これこそが特異点系の代数幾何の人が$\mathcal{K}$-同値を使う理由なのです!!
さてでは,$\mathcal{K}$-同値について重要な命題を紹介します.
$f=(f_{1 },\cdots,f_{p})\in E_{n,p}$について,
$f,g\in E_{n,p}$に対して,以下の(i)と(ii)は同値
(i) $f\sim_{\mathcal{K}}g$
(ii)$\exists h:(\mathbb{K}^{n},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{n},0)$:微分同相 s.t. $I_{g}=I_{f}\circ h$
また$X_{f},X_{g}$が被約(i.e.$E_{n}/I_{f},E_{n}/I_{g}$の冪零元は$0$のみ)のときに(iii)も加えて同値
(iii) $\exists h:(\mathbb{K}^{n},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{n},0)$:微分同相 s.t. $X_{g}=h(X_{f})$
$\mathcal{K}$-同値というのは「微分同相写像でイデアルが移り合う」という意味があるのが分かります.(iii)は実はHilbertの零点定理から分かるのですが「図形も(被約であれば)イデアルに直に対応するので,微分同相で図形が移る」という意味になります!
$f,g\in E_{n,p}$
このとき,$f\sim_{\mathcal{A}}g\Rightarrow f\sim_{\mathcal{K}}g$が成立
$\mathfrak{m}_{p}=\langle x_{1},\cdots,x_{p}\rangle$:$E_{p}$の極大イデアル
$I_{f}:=\langle f_{1},\cdots,f_{p}\rangle=\mathfrak{m}_{p}\circ (f_{1},\cdots,f_{p})$
$h$:微分同相に対して$\mathfrak{m}_{p}\circ h=\mathfrak{m}_{p}$("原点を通る関数"を"原点を通る関数に移す"ので)であることに注意.
$f=\phi\circ g\circ\varphi$とする.
(ただし$\varphi:(\mathbb{K}^{n},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{n},0)$,$\phi:(\mathbb{K}^{p},0)\rightarrow(\mathbb{K}^{p},0)$:微分同相)
定理1より$I_{g}=I_{f}\circ h$を示せば良い.
\begin{align*}
I_{f}=\mathfrak{m}_{p}\circ f&=\mathfrak{m}_{p}\circ(\phi\circ g\circ\varphi)\\
&=\mathfrak{m}_{p}\circ( g\circ\varphi)=I_{g}\circ\varphi
\end{align*}
よって$f\sim_{\mathcal{K}}g$
このことから$\mathcal{K}$-同値は上記の中で最も弱い同値ということになります.
詳しい議論は次回に回しますが,$f$と$\mathcal{K}$-同値になるようなもの全体を多様体とみて(実はLie群になる)$f$における接空間を求めてあげます.
$D_{n}$:$(\mathbb{K}^{n},0)$上の微分同相写像全体,$M_{n,p}:=GL(p,E_{n})$とする.
$K:=D_{n}\ \rtimes M_{n,p}$:半直積群について,
$K\times E_{n,p}\rightarrow E_{n,p};(h,A)\times f\mapsto A\cdot(f\circ h^{-1
})$という群作用を考える.このとき,$f\sim_{\mathcal{K}}g$は$f,g$が同じ$K$作用の軌道に入る
実は$\mathcal{K}$-同値の定義域側の座標変換は$h^{-1}$と書く慣習があります.上の定義3で$h$のままで書いたのは後々面倒だからという理由があります.実際$h$は可逆なので定義3の上では問題はありません.しかし,半直積という言い方をするなら$h^{-1}$で書くべきなので(急遽慌てて)直しました.紛らわしくてすみません.
それでは,接空間を求めていきましょう!
$f_{t}=A_{t}\cdot (f\circ h_{t})$とおき,写像族$f_{t}$を$E_{n,p}$内の弧と見るときの接空間を考えたいです
設定
$f_{t}$の$t$による微分は
$\frac{d}{dt}f_{t}(x)=A_{t}'(x)\cdot (f\circ h_{t}(x))+A_{t}(x)\cdot\left(\sum_{i=1}^{n}\frac{\partial f}{\partial x_{i}}\left(h_{t}(x)\right)\frac{d(x_{i}\circ h_{t})}{dt}(x)\right)$
$t=0$を考えれば,$\frac{d}{dt}f_{t}(x)|_{t=0}=A_{0}'(x)\cdot (f\circ h_{0}(x))+A_{0}(x)\cdot\left(\sum_{i=1}^{n}\frac{\partial f}{\partial x_{i}}\left(h_{0}(x)\right)\cdot\frac{d(x_{i}\circ h_{t})}{dt}(x)|_{t=0}\right)$
左辺は$f$における接ベクトルです.
右辺は$A\cdot f+\xi_{1}\frac{\partial f}{\partial x_{1}}+\cdots+\xi_{n}\frac{\partial f}{\partial x_{n}}$となります!
ただし$A=A_{0}'(x)\in M_{n,p}$で,$\xi_{i}=\frac{d(x_{i}\circ h_{t})}{dt}(x)|_{t=0}\in\mathfrak{m}$($x$についての定数項はないので)とします.
$A$と$\xi$は任意係数です.接ベクトルの各成分は$f$の成分を生成元とするイデアルと極大イデアル$\times$ヤコビイデアルの元の和で表されるわけです.つまり接空間は$\langle f_{1},\cdots,f_{p}\rangle_{E_{n,p}}+\mathfrak{m}Jf$になりますね!これを$T\mathcal{K}f$と表します.
上の方法と同様にして,$\mathcal{R}$-同値の接空間$T\mathcal{R}f$が$\mathfrak{m}Jf$と分かります.確認してみましょう.
ここまではかなり雑にやってしまったと反省があります.別の回にしっかりやろうと思います(覚えてれば)
$f\in E_{n}$が原点$O$で孤立特異点を持つならば,$\dim E_{n}/Jf$が有限
$f$が原点$O$で孤立特異点を持つ
$\Leftrightarrow \exists U\subset \mathbb{K}^{n}$:$0$の近傍 s.t.$V(Jf)\cap U=0$
Hilbertの零点定理より,$Jf\supset\mathfrak{m}^{\small{\exists}k}$が成立.($\supset$は$U$の外側での特異点に由来する)
$\dim E_{n}/Jf<\dim E_{n}/\mathfrak{m}^{k}=\#\{1,x_{1},\cdots,x_{n},\cdots,x_{1}^{k},\cdots,x_{n}^{k}\}<\infty$
$f$が原点$O$で孤立特異点を持つとする.
Milnor代数$M(f)=E_{n}/Jf$
Tjurina代数$T(f)=E_{n}/(Jf+\langle f\rangle)$
また
Milnor数$\mu(f)=\dim_{\mathbb{K}}M(f)$
Tjurina数$\tau(f)=\dim_{\mathbb{K}}T(f)$
と定める.
ここでは定義と軽く性質を紹介するだけにしますが,これら2つが不変量として重要な働きをします!
また次のことが成り立ちます.
上の設定のもとで,
思い出してください$\mathcal{K}$-同値は$\mathcal{R}$-同値より弱かったはずです.なのに!なのに!$\mathcal{K}$-同値だけでもMilnor数が一致するんです!
最後にガチ強定理をやります
$\downarrow$その前の準備
(分かりやすさと扱いやすさのために重みは正整数値にしました)
同次多項式はまぁわかると思います.$x^{2}+yz+w^{2}$とか.
問題は重み付き同次多項式です.これに関しては具体例を見た方がいいかもしれません!
原点$O$で孤立特異点を持つ$f\in\mathfrak{m}\subset\mathcal{O}_{n}$(複素)について以下は同値
これ使い方の例としてはMilnor数とTjurina数を調べて(計算自体は数式計算ソフトSingularで簡単にできる)同じだったら,重み付き同次多項式と同値になるとかです!
(それも$\mathcal{R}$,$\mathcal{K}$問わずに!!)
冪級数は項が無限個並んで,しかも斉次とは限らない訳ですが,Milnor数とTjurina数を調べるだけで,簡単にできるかを考えることができる訳です!!割とすごくないですか!!
恐ろしく素晴らしい定理だ...俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
さらに少し別話題にはなりますが,semi weighted homogeneousというものがあります.$g$を重み付き同次多項式として,
$f=g$+(高次の項)
というものをsemi wighted homogeneousと言います(日本語だと何て呼ぶのか知りません...重み付き半同次式とか...?)
素朴な疑問として,$f\sim_{\mathcal{K}}g$になるかどうかの疑問も出てきます.ただ必ずしもそうとは限らないことも分かります.
実は$\mu(f)=\mu(g)$は正しいのですが,定理5を用いれば,$\tau(g)=\mu(g)$が分かるので,以下のことが分かります.
$f\sim_{\mathcal{K}}g\Leftrightarrow\tau(f)=\mu(f)$
よって常に$f\sim_{\mathcal{K}}g$とは限りません
今回はちょっと山盛りになってしまいました...ごめんなさい...
思った以上に連載きつい気がしてきました...ちょっと休...
次回「キュウサイ$\times$ホダイ」