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現代数学解説
文献あり

特異点論入門〜これほど簡単な入門記事は多分ない〜part2

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アンドロイドはK-同値の夢を見るか

実は連載でした

はい、実は連載だったんです!!

K-同値

それじゃあパッパとやってきましょうね〜〜(やっつけ仕事)

R-同値

f,gEn,pについてR-同値(right equivalent)とは
fRgdefh:(Kn,0)(Kn,0):微分同相 s.t. f=gh

つまり,定義域を微分同相で変換してあげたときにfgに一致するなら,fgは同じと見なそうね!!ってことです

f=xyg=x2y2R-同値
h(u,v)=(12(u+v),12(uv))とすれば,
 gh(x,y)=(12(x+y))2(12(xy))2=xy=f(x,y)

これと似た要領で以下のような同値もあります

A-同値

f,gEn,pについてA-同値とは
fAgdefφ:(Kn,0)(Kn,0),ϕ:(Kp,0)(Kp,0):微分同相 s.t. f=ϕgφ

今度は値域も微分同相で変換してあげてますね!ここからすぐに(ϕを恒等写像とすれば)R-同値はA-同値であるとわかります.ただ,逆は成り立ちません.

f(x)=(x,x),g(x)=(x,x2)E1,2A-同値であるが,R-同値でない.
φを恒等写像,ϕ(u,v)=(u,v2)とすれば良いが,
 φをどう取っても,fφgとなる.

値域の方だけ変換してあげる同値のことをR-同値に対してL-同値(left equivalent)といいます.これに関してもL-同値はA-同値と言えますね!

学び始めの頃はここらへんの違いがよく分からず大変でしたね...同値の判定にも時間がかかりましたが,毎日感謝の座標変換1万回を繰り返していくと段々慣れていきます.最近になってくると祈る時間が増えてきましたしね!
(ネタが分からない人はすぐにMathlogを閉じてHUNTER×HUNTERを見てください!!少なくとも特異点論よりは大事です)

おいおいK-同値はまだかよ

...と思った方、、、お 待 た せ い た し ま し た !!
K-同値の定義をします!!

K-同値

f,gEn,pについてK-同値(contact equivalent)とは
fKgdefφ:(Kn,0)(Kn,0),AGL(p,En):En成分のp×p行列 s.t. f=A(gφ)

K-同値は"微分同相変換"と"行列変換"両方の性質を持つ
さて,意味を考えていきましょう.まず,行列変換の意味です.

A=(h11h1php1hpp)(ただし,hijEn)とする.
このとき,f=(h11h1php1hpp)(g1φgpφ)=(h11g1φ++h1pgpφhp1g1φ++hppgpφ)となるので,
fの成分f1fpg1φ,,gpφEn:イデアルの元と思える

さてイデアルという言葉が登場しましたね!!さっきまで微分同相という幾何の言葉しか使っていなかったのに,急に代数として考えられてしまうわけです.これこそが特異点系の代数幾何の人がK-同値を使う理由なのです!!

さてでは,K-同値について重要な命題を紹介します.

f=(f1,,fp)En,pについて,

  • If=deff1,,fpEn:イデアル
  • Xf=defV(If)={xKn|FIf,F(x)=0}

f,gEn,pに対して,以下の(i)と(ii)は同値
 (i) fKg
 (ii)h:(Kn,0)(Kn,0):微分同相 s.t. Ig=Ifh
またXf,Xgが被約(i.e.En/If,En/Igの冪零元は0のみ)のときに(iii)も加えて同値
 (iii) h:(Kn,0)(Kn,0):微分同相 s.t. Xg=h(Xf)

K-同値というのは「微分同相写像でイデアルが移り合う」という意味があるのが分かります.(iii)は実はHilbertの零点定理から分かるのですが「図形も(被約であれば)イデアルに直に対応するので,微分同相で図形が移る」という意味になります!

定理1の

f,gEn,p
このとき,fAgfKgが成立

mp=x1,,xp:Epの極大イデアル
If:=f1,,fp=mp(f1,,fp)
h:微分同相に対してmph=mp("原点を通る関数"を"原点を通る関数に移す"ので)であることに注意.

f=ϕgφとする.
(ただしφ:(Kn,0)(Kn,0),ϕ:(Kp,0)(Kp,0):微分同相)
定理1よりIg=Ifhを示せば良い.
If=mpf=mp(ϕgφ)=mp(gφ)=Igφ
よってfKg

このことからK-同値は上記の中で最も弱い同値ということになります.

接空間とMilnor数とTjurina数

詳しい議論は次回に回しますが,fK-同値になるようなもの全体を多様体とみて(実はLie群になる)fにおける接空間を求めてあげます.

Dn:(Kn,0)上の微分同相写像全体,Mn,p:=GL(p,En)とする.
K:=Dn Mn,p:半直積群について,
K×En,pEn,p;(h,A)×fA(fh1)という群作用を考える.このとき,fKgf,gが同じK作用の軌道に入る

実はK-同値の定義域側の座標変換はh1と書く慣習があります.上の定義3でhのままで書いたのは後々面倒だからという理由があります.実際hは可逆なので定義3の上では問題はありません.しかし,半直積という言い方をするならh1で書くべきなので(急遽慌てて)直しました.紛らわしくてすみません.

それでは,接空間を求めていきましょう!
ft=At(fht)とおき,写像族ftEn,p内の弧と見るときの接空間を考えたいです

設定

  • A0は単位行列,h0は恒等写像.すなわちf0=0とする
  • この変換は原点を動かさないとするので,ht(0)=0つまり,xについての定数項はない
  • ftt=0で微分したものが(写像族の弧の)接ベクトルになる
  • 接ベクトルの集まりが接空間

fttによる微分は
ddtft(x)=At(x)(fht(x))+At(x)(i=1nfxi(ht(x))d(xiht)dt(x))
t=0を考えれば,ddtft(x)|t=0=A0(x)(fh0(x))+A0(x)(i=1nfxi(h0(x))d(xiht)dt(x)|t=0)
左辺はfにおける接ベクトルです.
右辺はAf+ξ1fx1++ξnfxnとなります!
ただしA=A0(x)Mn,pで,ξi=d(xiht)dt(x)|t=0m(xについての定数項はないので)とします.
Aξは任意係数です.接ベクトルの各成分はfの成分を生成元とするイデアル極大イデアル×ヤコビイデアルの元の和で表されるわけです.つまり接空間はf1,,fpEn,p+mJfになりますね!これをTKfと表します.

上の方法と同様にして,R-同値の接空間TRfmJfと分かります.確認してみましょう.

ここまではかなり雑にやってしまったと反省があります.別の回にしっかりやろうと思います(覚えてれば)

Milnor数(ミルナー数)とTjurina数(チュリナ数)について

fEnが原点Oで孤立特異点を持つならば,dimEn/Jfが有限

ざっくり証明(間違ってたら言ってください)

fが原点Oで孤立特異点を持つ
UKn:0の近傍 s.t.V(Jf)U=0
Hilbertの零点定理より,Jfmkが成立.(Uの外側での特異点に由来する)
dimEn/Jf<dimEn/mk=#{1,x1,,xn,,x1k,,xnk}<

fが原点Oで孤立特異点を持つとする.
Milnor代数M(f)=En/Jf
Tjurina代数T(f)=En/(Jf+f)
また
Milnor数μ(f)=dimKM(f)
Tjurina数τ(f)=dimKT(f)
と定める.

ここでは定義と軽く性質を紹介するだけにしますが,これら2つが不変量として重要な働きをします!

  • fRgM(f)M(g)即ちμ(f)=μ(g)
  • fKgT(f)T(g)即ちτ(f)=τ(g)

また次のことが成り立ちます.

上の設定のもとで,

  • K=Cならば,fKgT(f)T(g)
  • fKgμ(f)=μ(g)

思い出してくださいK-同値はR-同値より弱かったはずです.なのに!なのに!K-同値だけでもMilnor数が一致するんです!

最後にガチ強定理をやります
その前の準備

  • fEnd次の同次多項式(homogeneous polynomial)deffに含まれる単項式が全てd次である.
  • fEnが重みw=(w1,,wn)Z>n,次数dの重み付き同次多項式(weighted homogeneous polynomial)deffに含まれる単項式x1a1xnanについて,w1a1++wnan=d.

(分かりやすさと扱いやすさのために重みは正整数値にしました)
同次多項式はまぁわかると思います.x2+yz+w2とか.
問題は重み付き同次多項式です.これに関しては具体例を見た方がいいかもしれません!

  • x2+yz+w2E4は重みw=(1,1,1,1)で次数2の重み付き同次多項式ですね
  • x3+y2+xzE3は重みw=(2,3,4)で次数6の重み付き同次多項式です.実際,x33×2=6で,y22×3=6で,xz2+4=6となり,全て重みをつけると同次式になりますね!
齋藤恭司

原点Oで孤立特異点を持つfmOn(複素)について以下は同値

  • f0:重み付き同次多項式 s.t. fRf0
  • f0:重み付き同次多項式 s.t. fKf0
  • TRf=TKf
  • fJf
  • fmJf
  • μ(f)=τ(f)

これ使い方の例としてはMilnor数とTjurina数を調べて(計算自体は数式計算ソフトSingularで簡単にできる)同じだったら,重み付き同次多項式と同値になるとかです!
(それもR,K問わずに!!)
冪級数は項が無限個並んで,しかも斉次とは限らない訳ですが,Milnor数とTjurina数を調べるだけで,簡単にできるかを考えることができる訳です!!割とすごくないですか!!
恐ろしく素晴らしい定理だ...俺じゃなきゃ見逃しちゃうね

さらに少し別話題にはなりますが,semi weighted homogeneousというものがあります.gを重み付き同次多項式として,
f=g+(高次の項)
というものをsemi wighted homogeneousと言います(日本語だと何て呼ぶのか知りません...重み付き半同次式とか...?)
素朴な疑問として,fKgになるかどうかの疑問も出てきます.ただ必ずしもそうとは限らないことも分かります.
実はμ(f)=μ(g)は正しいのですが,定理5を用いれば,τ(g)=μ(g)が分かるので,以下のことが分かります.
fKgτ(f)=μ(f)
よって常にfKgとは限りません

まとめ

  • R-同値,A-同値,K-同値をやりましたね
  • R>A>Kの順に強い同値ですね
  • 特にK-同値はイデアルに密接に関係しています
  • それぞれの同値の軌道の接空間を調べました
  • Milnor数とTjurina数について触れました
  • 齋藤の定理の凄さに圧倒されましたね

今回はちょっと山盛りになってしまいました...ごめんなさい...

思った以上に連載きつい気がしてきました...ちょっと休...

次回「キュウサイ×ホダイ」

次を読む

参考文献

[1]
Alexandru Dimca, Topics on Real and Complex Singularities, Advanced Lectures in Mathematics, Springer Nature, 1981
投稿日:2024年12月10日
更新日:31日前
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