短完全列とはなんぞや....
そこで今回は$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$たちからなる短完全列について調べようと思います.
短完全列について調べる前にまず準同型にはどのようなものがあるか調べます.
$m,n\in \mathbb{Z}_{>0}$とする.$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$から$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$への$\mathbb{Z}-$準同型はいくつあるか.
$m$と$n$の最大公約数を$g$とおく.$f:\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\to \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$を$\mathbb{Z}-$準同型とする.$f([1])=[k]$,$0\leq k\leq n-1$とおく.準同型だから$0=f([m])=m\cdot f([1])=m\cdot [k]$.よって$mk$は$n$の倍数である.$mk=ns$,$s\in\mathbb{Z}$とする.$m=m'g,n=n'g$,$m',n'(\in\mathbb{Z})$は互いに素とおける.すると$m'k=n's$となり$k$は$ n'$の倍数である.よって$k$は$0,n',\dots,(g-1)n'$の$g$通りである.
逆にこのとき,$f([1])=[k]$によって定まる$f$はwell-definedである.実際,$a-a'\equiv 0$($\text{mod}\ m$)のとき$f(a)-f(a')\equiv 0$($\text{mod}\ n$)であればよいが$a-a'=mx$, $x\in\mathbb{Z}$とおくと$f(a)-f(a')=[kmx]=[km'gx]$であり$k$は$n'$で割り切れるから,これは$n$の倍数である.$\Box$
これで準同型の形も$[1]\mapsto [kn']$, $k=0,1,\dots,g-1$だということがわかりました.次に短完全列の形をより詳しくみてみます.
$a,b,c\in \mathbb{Z}_{>0}$とする.
$0\to \mathbb{Z}/a\mathbb{Z}\xrightarrow{\phi} \mathbb{Z}/b\mathbb{Z}\xrightarrow{\psi} \mathbb{Z}/c\mathbb{Z}\to 0$が短完全列であるとき,$a,b,c$の間の関係を求めよ.
準同型定理から$\left(\mathbb{Z}/b\mathbb{Z}\right)/\text{ker}\ \psi \cong \mathbb{Z}/c\mathbb{Z}$なので$\dfrac{b}{|\text{ker}\ \psi|}=c$.
$b=c|\text{ker}\ \psi|=c|\text{Im}\ \phi|=ca$.
こうして全ての短完全列を求める準備が整いました.
短完全列$0\to \mathbb{Z}/a\mathbb{Z}\xrightarrow{\phi} \mathbb{Z}/ab\mathbb{Z}\xrightarrow{\psi} \mathbb{Z}/b\mathbb{Z}\to 0$は何通りあるか.
$\psi$の取り方は$[1]\mapsto 0,[1]$の$2$通り.そのうち全射となるのは後者のみなので$1$通り.
次に単射である$\phi$を全て求める.$k,i\in\mathbb{Z}$,$0\leq k\leq a-1$,$0\leq i\leq a-1$として$[1]\mapsto k[b]$とすると$ [i]\mapsto ik[b]$だから$ik$が$a$の倍数になるとき単射でなくなる.$k$が$a$の$2$以上の約数を因子に持てば$ki$が$a$の倍数となる$i$が存在する.それ以外の時は存在しない.よって互いに素であるときのみ$\phi$の核は自明である.
$k$と$a$が互いに素である時$ik[b]$は$b$の倍数で単射だから像は$\mathbb{Z}/ab\mathbb{Z}$における$b$の倍数全体に等しい.よって完全である.
以上から$\Phi$をオイラーのトーシェント関数として$\Phi(a)$通りある.
コメント:トーシェント関数がでてくること,$b$に依存しないことは意外でした.