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双曲線関数の逆数を含む積分を用いたディリクレベータ関数、ゼータ関数の特殊値の導出

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ディリクレベータ関数の特殊値

β(s)=k=0(1)k(2k+1)s
とします。sが奇数の時に
β(2n+1)=(1)nE2nπ2n+122n+2Γ(2n+1)E2n
であるという事実の証明を思いついたので備忘録的に残しておきます。
まず、 この記事 と同様の手法を用いて、
1coshx=0cos(xt)cosh(π2t)dt
を作ります。が、導出方法を忘れてしまったので他のやり方で示します。

0cos(xt)cosh(π2t)dt=02eπ2tcos(xt)1+eπ2tdt=2n=0(1)n0cos(xt)e(n+12)πdt=2n=0(1)n(n+12)πx2+((n+12)π)2
最後の変形はラプラス変換でおなじみのやつですね。Wikipediaの三角関数の部分分数展開のページを参照すれば、
最後の式が1coshxに一致していることが分かるので、認めます。
ここで、
1coshx=n=0Enn!xn
であることも用います。つまり、1coshx2n次の導関数のx=0での値はE2nに等しいです。
一方で、上で得られた式をxで 両辺2n回微分すると(ルベーグの収束定理から積分と微分の順序交換は可能)、
d2ndx2n(1coshx)=0(1)nt2ncos(xt)cosh(π2t)dt
ここで、x=0を代入すると、左辺は前述の通りオイラー数となり、右辺については
0(1)nt2ncosh(π2t)dt=2(1)nk=0(1)k0t2ne(k+12)πtdt
ここで、
(k+12)πt=uと置換することで、
2(1)nk=0(1)k0t2ne(k+12)πtdt=2(1)nk=0(1)kΓ(2n+1)(k+12)2n+1π2n+1=(1)n22n+2Γ(2n+1)π2n+1β(2n+1)
と、ディリクレベータ関数が出てきます。よって、
E2n=(1)n22n+2Γ(2n+1)π2n+1β(2n+1)
ディリクレベータ関数だけになるよう整理して、
β(2n+1)=(1)nE2nπ2n+122n+2Γ(2n+1)
となります。

ゼータ関数の特殊値

この記事 で導出したように、
0sin(xt)sinh(π2t)eπ2tdt=1x+coth(x)
です。
このとき、ベルヌーイ数Bnを用いて、
cothx=1x+k=122kB2k(2k)!z2k1
であるので、
cothx1x=k=122kB2k(2k)!z2k1
より、
0sin(xt)sinh(π2t)eπ2tdt=k=122kB2k(2k)!z2k1
です。この両辺を2n1回微分し、x=0を代入すると、右辺は22nB2n2nとなり、左辺は
0(1)n1t2n1sinh(π2t)eπ2tdt=2(1)n1k=10t2n1ekπtdt=2(1)n1π2nΓ(2n)k=11k2n=2(1)n1Γ(2n)π2nζ(2n)
両辺は等しいので、
2(1)n1Γ(2n)π2nζ(2n)=22nB2n2n
ガンマ関数の性質から、2nΓ(2n)=Γ(2n+1)=(2n)!なので、
ζ(2n)=(1)n1(2π)2nB2n2(2n)!
となります。

完走した感想

微分しやすい形に持っていくのが強力に効きました。個人的にはこの形の積分(途中に出てきた双曲線関数を分母に持つ積分)はかなり使いやすいのではないかと思います。2次試験が迫ってきているのであまりこういうことにうつつを抜かすわけにもいかないのですが、書き留めておかないと忘れそうなので書きました。以上です。

おまけ

双曲線関数の逆数の絡む積分のうち、見つけたものを残しておきます。xixなどとすることで、分子は三角関数にも双曲線関数にもできるので、三角関数の場合のみ記します。分子が三角関数(または双曲線関数)であることにより、半角・倍角、和積・積和、xでの微分積分、部分積分、置換積分を用いることで多様に派生させることができます。定義域は省略します。
0sin(xt)sinh(π2t)dt=tanh(x)
0cos(xt)cosh(π2t)dt=1coshx
0sin(xt)cos(yt)sinh(π2t)dt=sinh(2x)cosh(2x)+cosh(2y)
0cos(xt)cos(yt)cosh(π2t)dt=2cosh(x)cosh(y)cosh(2x)+cosh(2y)
0sin(xt)tcosh(π2t)dt=arctan(sinhx)
0sin(xt)cos(yt)tcosh(π2t)dt=arctan(sinh(x+y))+arctan(sinh(xy))
0sin(xt)sin(yt)tsinh(π2t)dt=12ln(cosh(x+y)cosh(xy))
0sin(xt)sin(yt)cosh(π2t)dt=12(1cosh(xy)1cosh(x+y))
0sin(xt)sinh(yt)dt=π2|y|tanh(πx2y)
0tsin(xt)cosh(π2t)sinh2(π2t)dt=2π(tanh(x)+xcosh2(x))
0sin2(qt)tsinh(π2t)eπ2tdt=12ln(sinh2x2x)
0sin(xt)sinh(π2t)eπ2tdt=1x+coth(x)
0cos(xt)cosh(π2t)eπtdt=4ππ2+4x21cosh(x)
0sin(xt)sinh(π2t)eπtdt=8xπ2+4x2+tanhx
0cos(xt)cosh(π2t)e2πtdt=3π322πx2(3π24+x2)2+(πx)2+1coshx
0sin(xt)sinh(π2t)e2πtdt=4x3+5π2x(3π24+x2)2+(πx)2+tanh(x)
いつかこれを導出する記事も書きます。

投稿日:21
更新日:23
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