0

東大数理院試過去問解答例(2023B08)

341
0

ここでは東大数理の修士課程の院試の2023B08の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2023B08

4次実正方行列全体のなす位相空間M4(R)の部分位相空間Mを、行列A=(aij)i,jで、以下の条件
(a) rankA=1
(b) Aは対称行列
(c) Aの対角成分は全て非負
(d) i,jai,j2=1
を満たすもの全体からなる空間とする。ここで写像
ϕ:R4M4(R)xxxT
を考える(ここでxTxの転置である)。
(1) ϕ|R4{0}:R4{0}M4(R)ははめ込みであることを示しなさい。
(2) MM4(R)C級部分多様体であることを示しなさい。
(3) 比vol(M)vol(S3)を求めなさい。ここでvol(M)及びvol(S3)M4(R)及びR4のEuclid計量から定まるM及びS3の体積を表す。

  1. まずx=(x,y,w,z)Tに対して
    xxT=(x2xyxzxwyxy2yzzwzxzyz2zwwxwywzw2)
    と表される。これをx,y,z,wでそれぞれ微分したものは
    (2xyzwy000z000w000)(0x00x2yzw0z000w00)(00x000y0xy2zw00w0)(000x000y000zxyz2w)
    であり、これらは線型独立であるからϕ|R4{0}ははめ込みである。
  2. ϕ|R4{0}{±1}による作用で割った空間Xを考えると、写像ϕ:XM4(R)が誘導される。これは単射であり、しかも(1)からはめ込みであり、その像はM4(R)のコンパクト空間S15に含まれているから埋め込みである。このときϕS3/{±1}に制限したものも埋め込みであり、Mはこの像であるからM4(R)C部分多様体である。
  3. まずϕR4{0}ははめ込みであったから、誘導計量ϕgを考えることができる。ここでS3の点(x,y,z,w)に於いては
    (ϕg)p=(2x2+22xy2xz2xw2xy2y2+22yz2yw2xz2yz2z2+22zw2xw22zw2w2+2)
    と書き表される。いまTS3は切断
    v1=(yxwz),v2=(zwxy),v3=(wzyx)
    で生成されているが、この切断に関するϕgのGram行列は
    (200020002)
    と表される。以上の議論とϕが埋め込みS3/{±1}を定めていることを考慮すると、vol(M)ϕgの下でのS3の体積の12に等しいから求める比は
    vol(M)vol(S3)=12×23=4
    である。
投稿日:20231030
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中