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東大数理院試過去問解答例(2008B05)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2008B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2008B05

$2$次元トーラス$T^2=\mathbb{R}^2/\mathbb{Z}^2$をとり、$\pi:\mathbb{R}^2\to T^2$を自然な射影とする。$X\in M_2(\mathbb{Z})$に対して$L_X:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2$$X$の定める線型写像とし、$\ell_X:T^2\to T^2$$\pi$によって誘導される$T^2$の間の連続写像とする。

  1. 行列$A,B$
    $$ A=\begin{pmatrix} 2&1\\ 1&1 \end{pmatrix} $$
    $$ B=A^2=\begin{pmatrix} 5&3\\ 3&2 \end{pmatrix} $$
    とおく。$L_BH=HL_A$を満たす同相写像$H:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2$を一つ求めなさい。
  2. 等式$\ell_Bh=h\ell_A$を満たす同相写像$h:T^2\to T^2$は存在しないことを示しなさい。
  1. 初めに
    $$ C=PAP^{-1} $$
    $A$の対角化とする。ここで$f:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2$$f(x,y)=(|x|x,|y|y)$で定義し、合成$h=L_{P^{-1}}fL_{P}$をとる。このとき
    $$ \begin{split} hL_A&=L_{P^{-1}}L_PhL_{P^{-1}}L_PL_AL_{P^{-1}}L_P\\ &=L_{P^{-1}}fL_CL_P\\ &=L_{P^{-1}}L_{C^2}fL_P&=L_Bh \end{split} $$
    であるから、$h$は所望の同相である。
  2. このような$h$が存在したとして矛盾を導く。まず$h$は線型写像$h:H_2(T^2,\mathbb{Z})\to H_2(T^2,\mathbb{Z})$を誘導する。この表現行列を
    $$ \begin{pmatrix} x&y\\ z&w \end{pmatrix} $$
    と置いたとき、$h$の条件から$2$つの行列
    $$ \begin{pmatrix} x&y\\ z&w \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2&1\\ 1&1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2x+y&x+y\\ 2z+w&z+w \end{pmatrix} $$
    $$ \begin{pmatrix} 5&3\\ 3&2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x&y\\ z&w \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 5x+3z&5y+3w\\ 3x+2z&3y+2w \end{pmatrix} $$
    は等しい。しかしこのような行列は$0$しかなく、$h$が同相であることに矛盾する。よって$h$は存在しない。
投稿日:330
更新日:331
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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