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単純な行列の逆行列

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[311131113][I1I2I3]=[422]

[I1I2I3]=14[211121112][422]

三次正方行列の中でも、
1.対角成分が等しい
2.そこ以外の絶対値が同じ
3.対称行列
を満たす奴の逆行列は、簡単に出せるというお話です。

証明

[abcbadcda](b2=c2=d2,()0)の逆行列を求めていきます。

前準備

まずは余因子行列で大雑把な形を把握したいところですが、その前に。
こいつは対称行列なので、逆行列も対称行列です。
((AA1)t=It(A1)tA=I(A1)t=A1)
なので、余因子行列のij成分をΔijとできます。元の行列のij成分と一致して楽。
更に、対称行列なので、対角より上側の三つがそのまま下側の値になります。
なので、上部分だけを扱い、下部分は省略することにします。
[a2d2cdabbdaca2c2bcada2b2]a3+2bcdac2ab2ad2

行列式の簡略化、仲間外れ

まず行列式を整理すると、
a(a2b2c2d2)+2bcd
二乗の部分は、条件からまとめられそうですね。でも、bcdはそれだけじゃダメそう。
ここで、bcdがどういう数かを考えます。これは、絶対値は|b3|などと等しいが、符号が違う数です。
例えば、b=1,c=1,d=1とすると、bcd=1,b3=1,c3=1,d3=1
どれも、符号だけ違います。でも、bcd=d3ですね?
他の例も見てみましょう。
b=1,c=1,d=1であれば、bcd=b3
b=1,c=1,d=1であれば、bcd=c3
ここから分かることは、bcdということでしょう。
(b=c=dだと仲間外れはいませんが、どれを選んでもbcdになるので、便宜的に全部仲間外れとします。)
ここで、仲間外れの数をeとします。bcd=e3を満たすような数です。
またeb,c,dのどれかであることには変わりないので、b2=c2=d2=e2も満たします。
これを使って行列式を整理すると、
a(a2b2c2d2)+2bcd
=a(a23e2)+2e3
=a33ae2+2e3
この式はa=e0(ae)
=(ae)(a2+ae2e2)
=(ae)2(a+2e)
無事因数分解されました。

余因子行列の簡略化

[a2d2cdabbdaca2c2bcada2b2]
次に、これを簡略化できないか考えてみます。
二乗部分は明らかにa2e2となって、(ae)(a+e)と因数分解されるので、他の部分もどっちかを因数に持たせたいですね。
まあ、cdabとか、どれも引き算なので、aeで括るのが自然でしょう。
括れるとしたら、cdab=b(ae)となり、cd=beなんてのが成り立たないといけない様です。なんだこれは。
ああ、両辺にbbcd=b2e=e3e2
式にしてみせれば、bcdfbcd=ef2bcdf=ef
fefe
これを使って整理すると、
[a2d2cdabbdaca2c2bcada2b2]
=[a2e2b(ae)c(ae)a2e2d(ae)a2e2]

=(ae)[a+ebca+eda+e]
単純明快

後始末

余因子行列と行列式をくっつけましょう。
(ae)[a+ebca+eda+e](ae)2(a+2e)

=[a+ebca+eda+e](ae)(a+2e)
これにて、この形の行列の逆行列の公式が導かれました。
a+e(ae)(a+2e)
これだけ覚えておけば、このタイプの逆行列を一発で導けるという訳です。

余談

どこにそんな都合のいい状況があるんだ、と思うかもしれません。
私の場合はキルヒホッフの法則の問題です。解法の都合上、たぶん必ず対称行列が出てきます。もちろん対角成分が同じじゃなかったり、そこ以外の絶対値が異なることもありますが、このタイプの時も割とあります。
そしてなぜかそのときだけ、逆行列を求めるのが必須になってることが多いです。問題製作者側だけの検算公式なのかしら。

投稿日:2023518
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  3. 行列式の簡略化、仲間外れ
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  5. 後始末
  6. 余談