小ネタ。Mathlogに同内容の記事があったらすみません。
次の定理が成立します:
ここで右辺のは行列に関する対数であり、テイラー展開により
で定義されます。定理1の関係式は物理学ではよく用いられます。以下定理1を証明します。
が対角化可能な場合
定理1はが対角化可能な場合にはすぐに証明できます。
を対角行列、を正則行列としてと書けるとします。またの固有値、すなわちの対角成分をとします。このとき
なので
です。一方定理1の右辺に関し、であり(よりのテイラー展開の各項では左に、は右に括り出せる)、またが対角行列であることからなので、内の行列の巡回置換による不変性より
となり、定理1が成立します。
一般のの場合
一般のではどうでしょうか。この場合、任意の正方行列が三角行列に相似であることを用います:
任意の正方行列に関し
となるおよびが存在する。ここではユニタリ行列:、は上半三角行列。
以下Ref.Fuukeiに基づく。
帰納法で示す。の"正方行列"に関しては題意が成立する。の正方行列に関して題意が成立することを仮定する。このときの正方行列を考える。の固有値の1つを、その固有ベクトルをとする(ノルムは1とする)。正規直交系を用意し、とする。はユニタリ行列であり、このとき
となる。ここではの正方行列。仮定よりはあるユニタリ行列により上半三角行列に三角化することができる。とすれば、がユニタリであるからもユニタリである。そして
はが上半三角行列なのでの上半三角行列である。よってとすれば任意の行列はで三角化できる。またももユニタリなのでもユニタリである。以上より任意の正方行列はユニタリ行列と相似である。
定理2ではを上半三角行列としましたが、特定の形をした上半三角行列であるジョルダン標準形にすることが一般に可能ですJordan。しかし以下の証明ではは上半三角行列で十分です。定理1の証明はが対角化可能である場合とそれほど変わりません。以下の定理を用います:
定理2のにおいて、の成分をとする。このとき
である。
証明
をコの要素を並べ替える置換群、をその要素、をの符号関数とすると
と書ける。は上半三角行列なのでである。を恒等置換とすると、の場合、必ずとなる整数が存在する。このときなので
が成立する。
上記に対して
である。
下の式の証明
を上半三角行列とし、それぞれ成分をと書く。このときも上半三角行列になる。なぜならに関してとすると
・ならばなので
・ならば
だからである。また。なぜならにおいてはでもでも明らかにゼロだからである。以上より、を上半三角行列として、が上半三角行列かつその対角成分がならば
・は上半三角行列
・
である。は上半三角行列かつその対角成分はなので、数学的帰納法より
となる。
いま上半三角行列の関数がで定義されているとする。このとき
である。をにすれば
が成立する。
これらを用いれば定理1の証明はが対角化可能な場合と同じです:
これで一般の正方行列に関して定理1が成立することが証明できました。
おしまい。