こんにちは.Melidです.
2025年12月23日から同月26日にかけて純粋幾何のコンテスト(Melid Geometry Contest - 2nd)を開催させていただきました.
本記事ではその問題の公式解説を掲載します.
以下,特に記載が無い限り,「$XY$」で「直線$XY$」,「円$XYZ$」で「三角形$XYZ$の外接円」を表す.
三角形$ABC$において,$D$を$BC$上の$B,C$と異なる点とし,三角形$ABC,ABD,ACD$の外心をそれぞれ$O,O_{1},O_{2}$とする.$O_{1}O_{2}$と$AB,AC$の交点をそれぞれ$P,Q$とし,円$OO_{1}O_{2}$と円$OBC$の交点を$R(\ne O)$とするとき,$∠PRO_{1}=∠QRO_{2}$を示せ.
$∠A>90^{\circ}$を満たす不等辺三角形$ABC$において,その内心を$I$とし,円$ABI,ACI$と$BC$の交点をそれぞれ$D(\ne B),E(\ne C)$とする.$AD$と$BI$の交点を$P$,$AE$と$CI$の交点を$Q$とし,$PQ$と円$ABC$の2つの交点を$X,Y$とする.このとき,$∠XDA=∠YEA$を示せ.
円に内接する四角形$ABCD$において,$AC$と$BD$の交点を$P$,$AB$と$CD$の交点を$Q$とする.円$QBC$と$AC$の交点を$X(\ne C)$とし,線分$AQ$の中点を$M$とする.$AD=BD,PA=PC$であるとき,$DM$と円$ABX$は接することを示せ.
直角三角形でない不等辺三角形$ABC$において,$B,C$から$AC,AB$に下ろした垂線の足をそれぞれ$E,F$とし,円$AEF$の中心を$M$,円$ABC$と円$AEF$が再び交わる点を$P$とする.線分$EF$の中点を$N$とし,$B,C$から$MC,MB$に下ろした垂線の足をそれぞれ$X,Y$とするとき,$AM,EY,FX,PN$は一点で交わることを示せ.
直角三角形でない不等辺三角形$ABC$において,その内接円と$BC,CA,AB$の接点をそれぞれ$D,E,F$とし,$A$から$BC$に下ろした垂線の足を$H$とする.$BC$と$EF$の交点を$P$とし,$AD$上に$BM=CM$を満たすように点$M$をとる.円$BCM$と円$DHM$の交点を$Q(\ne M)$とするとき,$MQ$は線分$AP$の中点を通ることを示せ.
難易度はJMO本戦1~3番級を想定しています.
$\measuredangle ADB=\measuredangle ADC$より$\measuredangle AO_{1}B=\measuredangle AO_{2}C$であるため,$\triangle AO_{1}B\sim\triangle AO_{2}C$である.回転相似を考えて,$\triangle ABC\sim\triangle AO_{1}O_{2}$であるから,$\measuredangle O_{1}AO_{2}=\measuredangle BAC$.また,$OO_{1}\perp AB,OO_{2}\perp AC$より,$\measuredangle O_{1}OO_{2}=\measuredangle BAC$であるので,前の議論と併せて$A,O_{1},O,O_{2}$は共円である.
$O_{1}O_{2}$は$AD$の垂直二等分線であるため,$\measuredangle O_{1}PA=90^{\circ}-\measuredangle PAD=\measuredangle BDO_{1}$より,$O_{1},P,B,D$は共円.さらに,$2\measuredangle ABC=\measuredangle AO_{1}D=\measuredangle AOC$であるから,$\triangle AO_{1}D\sim\triangle AOC$.回転相似を考えて,$\triangle AO_{1}O\sim\triangle ADC$であるから,$\measuredangle O_{1}RB=\measuredangle O_{1}RO+\measuredangle ORB=\measuredangle O_{1}AO+\measuredangle OCB=\measuredangle DAC+(90^{\circ}-\measuredangle BAC)=90^{\circ}+\measuredangle DAB=\measuredangle O_{1}PB$より,$O_{1},P,B,R$は共円.すなわち,$O_{1},P,B,D,R$は共円である.同様に$O_{2},Q,C,D,R$も共円であり,Miquel点の性質から$A,P,R,Q$の共円も従う.
よって,$\measuredangle PRQ=\measuredangle PAQ=\measuredangle O_{1}AO_{2}=\measuredangle O_{1}RO_{2}$より示された.$\square$
$PQ$と$BC$の交点を$R$とする.$I$は弧$AID$及び弧$AIE$の中点であるため,shooting lemmaより$IP\times IB=IA^{2}=IQ\times IC$となり,$P,B,C,Q$の共円が従う.また,$\angle IQP=\angle IBC=\angle IDP$より,$I,P,D,Q$は共円.同様にして$I,P,E,Q$の共円を得られるため,$I,P,D,E,Q$は共円である.よって,$RX\times RY=RB\times RC=RP\times RQ=RD\times RE$より$X,D,E,Y$も共円である.従って,$\measuredangle XDA=\measuredangle BDA-\measuredangle BDX=\measuredangle EQP-\measuredangle EYX=\measuredangle AEY$より示された.$\square$
$AD$と$QX$の交点を$E$とし,円$ABX$と$BD$の交点を$F(\ne B)$とする.$\angle BAE=\angle BCQ=\angle BXQ$より,$A,B,X,F,E$は共円である.shooting lemmaより$BD$と円$BQC$は接するため,$BP\times PF=AP\times PX=PC\times PX=BP^{2}$より,$BP=PF$である.すなわち,四角形$ABCF$は平行四辺形であり,これと四角形$ABFE$が等脚台形であることを併せて,$C,F,E$の共線が従う.また,$\angle AMP=\angle AQC=\angle BXP$より,$B,M,X,P$は共円である.さらに,Miquel点の性質より$X,C,D,E$も共円であるので,$\angle MXP=\angle ABP=\angle DAB=\angle DEC=\angle DXC$より,$M,X,D$は共線である.よって,$\angle BXM=\angle BPM=\angle BDC=\angle BAX$より示された.$\square$
$A$から$BC$に下ろした垂線の足を$D$,線分$BC$の中点を$L$とし,$\triangle ABC$の垂心を$H$とする.$B,F,Y,X,E,C$は共円である.$E,H,D,C$及び$M,Y,D,C$はそれぞれ共円なので,$BY\times BM=BD\times BC=BH\times BE$より,$M,Y,H,E$は共円である.同様に,$M,X,H,F$は共円であるので,円$MYHE,MXHF,XYFE$に根軸定理を適用して,$MH,FX,EY$は共点である.
また,Newton–Gauss線を考えて,$M,N,L$は共線である.有名事実から$P,H,L$は共線であり,$LE,LF$は円$AEF$と接する.従って,円$XYFE$で円$MYHE,MXHF$を反転して,$N,Y,P,E$及び$N,X,P,F$は共円であることが得られる.円$NYPE,NXPF,XYFE$に根軸定理を適用して,$PN,FX,EY$は共点であるので,前の議論と併せて示された.$\square$
線分$AP$の中点を$L$,円$BCM$における$M$の対蹠点を$N$とし,$AM$と円$BCM$の交点を$R(\ne M)$とする.$AD,BE,CF$は一点($\triangle ABC$のGergonne点)で交わるため,$(B,C;D,P)=-1$である.$RD$は$\angle BRC$を二等分するので,Apollonius円を考えて,$\angle PRD=90^{\circ}$である.すなわち,$A,P,H,R$は$AP$を直径とする円上にある.$\measuredangle RQH=\measuredangle RQM-\measuredangle HQM=\measuredangle RNM-\measuredangle HDR=2\measuredangle RDH=2\measuredangle RAH=\measuredangle RLH$より,$L,Q,H,R$は共円である.従って,$\measuredangle LQR=\measuredangle LHR=90^{\circ}-\measuredangle RAH=\measuredangle HDR=\measuredangle MNR=\measuredangle MQR$より示された.$\square$
問題2と順番を入れ替えるか迷いましたが,構図としてある程度の性質が知られていると思ったため,このまま出題しました.シンプルな角度追跡で解けますが,意外と沼に嵌まりやすい気がします.
2023 British Mathematical Olympiad Round 2 P1 を基に作った問題です.$BC$と$XY$の交点を取れるかが鍵.
たくさんの相似な図形が現れます.$PA=PC$の条件を上手く使えるように補助点を取ろう.
様々な解法があると思われますが,反転を用いるものが綺麗です.ちなみに,求める交点は円$AXY$上にあります.
一見するとあまり関係が無さそうな線分$AP$の中点が突然現れるのは興味深いと思います.今回の証明では用いませんでしたが,$P,Q,H,N$の共円や,$NH$,円$BCM$,円$APH$,円$PQL$の共点なども成り立ちます.時間がある方は示してみてください.
ご参加いただいた皆様及び本コンテストの開催にあたりTesterを務めていただいた
匿(Tock)
氏には心より感謝申し上げます.
ここまで読んでいただきありがとうございました.それでは.