こんにちは、ヴァルです。
前回は分解型複素数について書いたので、今回は二重数(双対数)について書いていきます。
$a$,$b$を実数、$ε$を$ε^{2}=0$を満たす非実数とし、
$a+bε$と表される数。
英名はdual number。
二重数と呼ぶ派閥と、双対数と呼ぶ派閥がある。
二重数という呼び方と、双対数という呼び方の両方がメジャーなのですが、今回は二重数呼びで統一します。
$$ (a+bε)+(c+dε)=(a+c)+(b+d)ε $$
$$ (a+bε)-(c+dε)=(a-c)+(b-d)ε $$
$$ (a+bε)(c+dε)=ac+(ad+bc)ε $$
$$ \frac{a+bε}{c+dε}=\frac{a}{c}+\frac{bc-ad}{c^{2}}ε $$
$$ \left|a+bε\right|=\left|a\right| $$
$a+bε$の共軛は$a-bε$。
二重数を用いると、自動微分というものが出来ます。
任意の実係数多項式$P(x)$に対して、以下が成り立つ。
$$
P(a+bε)=P(a)+b P'(a)ε
$$
ここで$P'(x)$は$P(x)$の導関数。
二重数を用いて、積の微分法や商の微分法の公式を導出することが出来ます。
$$ (f+f'ε)(g+g'ε)=fg+(fg'+f'g)ε $$
$$ \frac{f+f'ε}{g+g'ε}=\frac{f}{g}+\frac{f'g-fg'}{g^{2}}ε $$
(先程の演算規則を見た時、勘のいい方は気付いていたかもしれません)
二重数上には零因子が存在します。
$α\neq0$,$β\neq0$であって、$αβ=0$となるような$α$,$β$のことを零因子という。
例えば$ε$は零因子です。
$ε\cdotε=0$ですからね。
より一般に、$ε$の定数倍は全て零因子です。
逆に、二重数上の零因子は全てこの形です。
(簡単な計算で確かめられます)
また、零因子では割り算をすることが出来ません。
零因子$α$、$β$に対して$αβ=0$が成り立つことを念頭において、適当な数xに対して$\frac{x}{β}$を考えます。
$$
\frac{x}{β}=\frac{α}{α}\cdot\frac{x}{β}=\frac{αx}{αβ}=\frac{αx}{0}
$$
となってしまい、ゼロ除算になってしまいます。
また、
$$
\frac{x}{β}\cdotαβ=xα
$$
と
$$
\frac{x}{β}\cdotαβ=\frac{x}{β}\cdot0=0
$$
となり、$x\neq0,β$では等号が成り立ちません。
いずれにせよよくないので、零因子除算は定義されません。
二重数上で考えると、
$$
\frac{1}{ε}
$$
とかは定義出来ないんですね。
今回は二重数について言及しました。
次回から4次元の数について言及する予定です。